Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

2016-01-01から1年間の記事一覧

「商売不繁盛論」と「冒険」①-総論-

常々思っていることではあるけれど、時が経つのが早い。とりわけ、この12月は矢の如き光陰だった。随分前から最も繁忙期であるこの12月に照準を合わせて、諸々進めてきたけれど、終わってみればあっというまだ。そして、今日、一年前の大晦日のブログを読み…

J×Jの冒険-2015年4月⑬「商売ほどほどに繁盛論」vol2-

大切なのは「継続そのもの」よりも「どう継続させるか」。売上や利益は「継続」における必要条件ではあるけれど、同時にその一つに過ぎない。継続していくには他にもいくつかの要件が必要で、自店の場合(おそらくほとんどの個人店が同様であると思うけど)、…

J×Jの冒険-2015年4月⑫「商売ほどほどに繁盛論」vol1-

商売不繁盛論vol2(9月10日の記事)の中で僕は以下のように書いた。____________ ポイントは「売上をどう抑えるか」であり、「どう下げるか」ではない。言い換えれば、「どう最適化するか」。自分の身の程をわきまえた上で、自分の身の丈にあった…

J×Jの冒険-2015年4月⑪「商売不繁盛論」vol11-

ゲストとの「距離」と「距離感の質」を模索し続けてきた結果、2016年11月現在、「あかね覚書」として一つの形になった。あかね覚書とは簡単に言えば、スタッフあかねによるお客様ノートで、店内で得たゲストの情報を記載したものである。好き嫌いなどの単純…

J×Jの冒険-2015年4月⑩「商売不繁盛論」vol10-

然るべき「距離」を保つ、 またその距離を「適切に縮める」、逆に「適切に遠のく」、 そして、その「距離感の質を高める」こと、 それは今の自分が最も大切にしていることであり、その距離を測り、距離感を模索し続けるのが主体者としての自分の仕事だと思っ…

J×Jの冒険-2015年4月⑨「商売不繁盛論」vol9-

神保町に僕が学生の頃によく通っていた大衆居酒屋がある。当時僕は21,22歳で、それから12年近くの歳月が流れているが、還暦近い大将はあの頃と変わらず今でも現場に立っている。創業は1979年。35年の歴史がそのまま店内に滲み出る、いかにもで、いわゆるな大…

J×Jの冒険-2015年4月⑧「商売不繁盛論」vol8-

2016年9月7日の株式市場において、「食べログ」を運営するカカクコム(東証一部)の株価が急落。一時、年初来安値を更新するという事態に陥った。 原因は飲食店経営者のツイートに端を発したネット上での炎上、とされている。そのツイートがどのような内容だ…

J×Jの冒険-2015年4月⑦「商売不繁盛論」vol7-

僕の友人に無類のラーメンフリークがいる。とにもかくにもラーメンが好きで、飲んだ後の〆にラーメン、そこから飲み直し、〆ラーを食べたことを忘れ、朝方2度目の〆ラーを食べてしまう、そんな逸話を持つほどに彼はラーメンをこよなく愛している。 彼曰く、 …

J×Jの冒険-2015年4月⑥「商売不繁盛論」vol6-

前回の投稿ではオープン当初、近隣の住民や会社員に対し、どのような姿勢で臨んだかを記した。一言で言うなれば「静観」。特に何もしなかった。オープンしてから一年と半年が経つが、その間、節々でテーマを持って様々なことに取り組んできた。が、これほど…

J×Jの冒険-2015年4月⑤「商売不繁盛論」vol5-

「ヤマモトさん…、カシスソーダって何でしたっけ…?」と、スタッフはまわりのゲストに聞こえないようにそっと僕に聞いた。レセプション初日、ゲストと注文と料理がごった返している真っ最中、彼はカシスソーダの作り方がわからないと言う。「カシスとソーダ…

J×Jの冒険-2015年4月④「商売不繁盛論」vol4-

個人店の開業を目指す主体者がまず最初にくぐることになる関門は「ハコ(物件)」であり、それと同等に「ヒト」であると思う。いいハコを抑えることができたとしても、ヒトが不足していれば家賃は重くのしかかり、ヒトがいたとしてもハコが不十分であれば人…

J×Jの冒険-2015年4月③「商売不繁盛論」vol3-

【前提2】借入がなかったというのもオープン当初、商売不繁盛論を展開していく上での大きな要因となった。 飲食店を開くにはそれなりの開業資金が要される。 個人事業主が例えば自店の条件(東京都内、14.5坪)でお店を開くのであれば、 ・スケルトンの場合…

J×Jの冒険-2015年4月②「商売不繁盛論」vol2-

2015年4月のオープン当初「売上をどう抑えるか」という商売不繁盛論が自分の中での最重要のテーマだった。 もっとも、オープン当初だけの一過的な見地だったかと言うと、そういうわけでもない。今もなお、この「商売不繁盛論」は継続的に推奨しているし、全…

J×Jの冒険-2015年4月①「商売不繁盛論」vol1-

これまでアメブロのサービスを使用してきたが、ちょうど一区切りついたところで、長い間お世話になったアメブロを離れ、心機一転、この「はてなブログ」にお引越しすることにした。これにも色々と理由はあるのだけど、それはまた別の機会に記していきたい。…

ブログについて

遡ってみると、僕はこのブログを2015年の4月14日、お店のオープンから2週間後にスタートしている。お店を開いたばかりの頃は色々とてんやわんやで息つく暇もないまま、毎日追われに追われていたわけだけど、週に一回のペースを目安に細々と書き進めてきた。 …

<完結編>『J×Jの冒険』への冒険vol42.【沈没と船出】③

「結論から申し上げて、ポンプ室の鍵を開けることはできると思います」。 と鍵屋さんは言った。 「特殊な鍵なので5万弱かかりますが…」 5万弱…。やはりぼちぼちの金額だ。そもそも相場が全くわからない。相見積をとっている余裕もないし、値下げ交渉に踏み切…

<完結編>『J×Jの冒険』への冒険vol41.【沈没と船出】②

配水管から噴き出る水の圧力は未だかつて僕が経験したのことない未曽有のエネルギーだった。ゲリラ豪雨のように上から下に降り注ぐ雨にずぶ濡れになったことはあっても、遊びで滝に打たれたことはあっても、下から上へと突き上げるエネルギーに触れる機会と…

<完結編>『J×Jの冒険』への冒険vol40.【沈没と船出】①

2015年の3月28日にレセプションの初日を迎え、それから3日間を最終的な準備期間に充て、予定の通り、翌4月1日、無事オープンに漕ぎつけることができた。ランチ営業から始めた初日、初めてのゲストは2人組の女性だったと記憶しているけれど、気持ちが宙に浮い…

『J×Jの冒険』への冒険vol39.【レセプション編】

飲食店を始めるにあたり、どのタイミングでスタートを切るのがもっとも適切か、というのは以前から考えていた。個人的には3月か4月がいいと思っている。この時期は人が「動く」シーズンだし、また気候的に「動きやすい」シーズンでもある。勿論、立地にもよ…

『J×Jの冒険』への冒険vol38.【所信表明と桜演説③】

ゲストの「今日、楽しかったね」を作ること、 それが自分にとっての飲食業であり、ライフワークであるということが桜演説の前文。この前文をその他一切の前提とし、またその他一切の重心に据える。今後、やれやれなことは多々あろうが、しんどくなったらここ…

『J×Jの冒険』への冒険vol37.【所信表明と桜演説②】

まだ物件が決まる前、2014年の12月、休みの日に中野に飲みに行った。12月という繁忙期の真っ最中で、僕はくたくたで、とにかく疲れていた。気分転換にと思って中野に向かったわけだけど、飲めば飲むほど自問が頭の中を駆けまわる。 「自分にとって飲食業とは…

『J×Jの冒険』への冒険vol36.【所信表明と桜演説①】

3月1日の契約開始から27日のレセプションのまでの26日間、 内装工事を進め、 スタッフが秋葉原に引っ越し、 立地を検証し、 商圏を調べ、 他のお店に勉強に行ったりした。 その上で、 ランチについてあれこれ考え、 ディナーについてあれこれ考え、 ドリンク…

まるちゃんの冒険

昨年11月から今年の2月末までお店を手伝ってくれていた「まるちゃん」。 今回は彼女の冒険について。あれから3ヶ月経って、ようやく書ける。それが嬉しい。 まるちゃんは以前勤務していたお店の同僚で、ほぼ同時期に入店した(僕が2014年の3月、彼女は同年4月…

『J×Jの冒険』への冒険vol35.【馬喰横山歩道橋下黄昏メニューブック編】

メニュー作成は出店する人間にとって、最もわくわくする仕事の一つ。空間や接客を含め、飲食店はトータルなもので問われるけれど、その中心にあるのはやはりメニューだと思う。 独立する前の一年、僕は多国籍料理のダイニングバーでお店のメニューを提供しな…

『J×Jの冒険』への冒険vol34.【内装工事】編④

内装工事3日目の朝はオーブンと冷蔵リーチインケースの搬入から始まった。 厨房機器の大きな買い物はこの2つのみ。オーブンはガスを使うので、メーカーからの搬入の日程とは別に東京ガスに入ってもらう日程も調整しなければならない。そこでまず東京ガスに連…

『J×Jの冒険』への冒険vol33.【内装工事】編③

ここのところ話があっちにいったり、こっちにいったりしていましたが、ここでまた本編に戻ります。すでに33話目になるこの『「J×Jの冒険」への冒険』というややこしいタイトルのシリーズも間もなく終わり、オープンを経て、ようやく『J×Jの冒険』が始まりま…

Kの冒険【蛍の光編】

3月に入り、Kが再びお店を休むようになってから、シフトフォローの手配に追われた。まるちゃんは2月末にクランクアップ。これ以上のフォローはお願いできない。僕は速やかに、何が何でも、誰かの協力を仰がなくてはならなかった。ディナーはいざとなれば独…

Kの冒険【退職編】

今回のブログはスタッフの退職に関した記事です。前もってアナウンスさせていただきますが、けしてポジティブな退職ではないし、最後まで読み通したとしても何ら救いのない内容になっています。であれば、わざわざ書く必要があるのかという話にもなるけれど…

J×Jのタイへの冒険⑥-失踪「急」-

「ヤマモトさん!!、オレ、金持ってないっすよ!!」 加藤はヘルメットを被りながら、大声で俺に言った。 「大丈夫!!着いた先で俺がまとめて払う!!」 この時、“財布からお金を出し、加藤に渡す”というほんの数秒を正しく費やすことができれば、また違った展開に…

J×Jのタイへの冒険⑤-失踪「破」-

年末から年明けにかけてのドタバタで蓄積された疲労に加え、タイに来てからのハードスケジュールによって、くたくただった身体にマッサージは思った以上に有効で、まさに会心の時間となった。 マッサージ屋を揚々と後にし、次のミッションへと速やかに移行す…