Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

「商売不繁盛論」と「冒険」①-総論-

常々思っていることではあるけれど、時が経つのが早い。とりわけ、この12月は矢の如き光陰だった。随分前から最も繁忙期であるこの12月に照準を合わせて、諸々進めてきたけれど、終わってみればあっというまだ。


そして、今日、一年前の大晦日のブログを読み返してみた。書いてある内容も、年末を通して感じたこともそう変わらない。


ただ、ブログの進行速度が恐ろしいほどに遅い。去年の今頃はちょうどお店がオープンする2週間前のことを書いている。そして、その一年後、つまり今日の時点でオープンのタイミングで自分が考えていたことをまだ書いている。この一年の間でブログ上の物語はたった2週間しか進まなかったということだ。リアルタイムでは間もなく2017年という新年を迎え、ブログは未だに2015年の4月を彷徨っている。気付かぬうちに1年8か月もの乖離があることに自分自身、驚嘆している。矢の如き光陰は兎の如し、ブログは亀の如し(むしろ、亀にも劣るし、亀に失礼だ)。


しかし、翻って言えば、それだけちゃんと作りこみたかった内容だったということでもある。芽となり、葉となる物事も始めは「種」だ。この商売不繁盛論もまたやがて「何か」として実り、「何か」を結ぶための種になると僕は思っている。種は日の目を見る必要はない。ただじっと地中で活力を蓄えておけばいいのだ。


そして、その種も今日で植え終わる。最後に、この膨張した商売不繁盛論をコンパクトに圧縮して一区切りとしたいと思う。


重複になるが、一言で言えば「最適化」だ。短期的ではなく、長期的なスパンを見据え、「売上・利益」、「健康状態」、「スタッフの安定性」を段階的に最適化していく。その最適化がうまくいけば、お店は自動的に継続性を持つことができる。継続性があれば、無理な営業や肉弾戦に持ち込むことなく、余裕を持ってゲストと向き合い、余裕を持って経営に取り組めるようになる。


オープン当初、自店にとっての最適だったのが商売繁盛の対極、つまり商売不繁盛だった。


何故ならば、

自分に対してそこまで自信がなかったからであり、

おまけに、自分と飲食未経験のスタッフと2人きりという薄氷の体制で、

けれど、運よく借入はなかったので金銭的なプレッシャーが少なかったから


という3つの理由があったからだ。



不繁盛に持ち込めば、当然、機会損失を招く。作れたはずの売上を手放すことになる。けれど、それと引き換えに、労働力をゲストとの関係構築に充てることができるゲストとの距離を適正に保つことができる。その関係性と距離感が店とゲストの双方にとって心地よいものであれば、営業は健全に保たれることになる。


営業が健全であれば、縮小均衡のスパイラルに陥ることなく、予算を最適に分配することができる。仕入れか、人件費か、設備投資か、ポジティブな予算はポジティブに消化され、昇華される。年齢と環境変化に伴い、自分の友人たちの足が遠のいたとしても、万が一、Web上で一方的な悪意に晒されたとしても、影響はミニマムに抑えることができるだろう。そのようにして維持される成長曲線は多少、緩やかだったとしても、角度が鈍かったとしても、社会的心象を損なうことはない。第三者からの心象が悪くなければ、お店は可能性と次なる展開を秘め続けることになる


夢見がちなストーリーに聞こえるが、けして理想論ではない。どんな経営にも必ずリスクは伴う。判断すべきはいつ、どこで、どんなリスクを負うのかだと思う。このストーリーラインが理想論じゃないのは入口で、ホイッスルとともに不繁盛というリスクを負っているからであり、入口に設置されているがゆえ、そのあとの展開が綺麗に映るだけだ。


店は生き物だと思っている。勿論、スタッフやゲストとともに育まれていく生き物だけど、やはり一番は親である主体者の意識が色濃く投影される。主体者に余裕がなければ、店全体の余裕が失われるし、逆に主体者がリラックスしていれば店全体もリラックスする。


メンタルもフィジカルも常に一定に、というのは難しい。わかっていても難しい。どうしてもムラは出てしまう。でも、その不可避なムラも自分自身の工夫次第で、ある程度和らげることはできると思っている。その「工夫」というのが僕の場合、商売不繁盛論の採用だ。だから、オープン当初だけの一過的な戦略としてだけではなく、自分の根本的なスタンスに据えたいと考えている。





オープンして以来、この1年8ヶ月、不繁盛論に基づき、ずっとディフェンシブだった。じっと慎重に進めてきて、12月の繁忙期を終えた今、それなりの手応えを感じている。まだまだだけども、少なくともこの航路とこの速度は間違っていない。



けれど、不繁盛論をひたすらに徹底するというのも味気ないものだ。



不繁盛論に徹するのであれば、ブログのタイトルは『J×Jと山本ジャーニーの商売不繁盛論』であるべきだ。





このブログは「冒険」と名乗っている。



さすれば、冒険しなければならない。




来年はちょっと冒険してみようと思っている。