Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×Jの冒険-2015年4月⑧「商売不繁盛論」vol8-

2016年9月7日の株式市場において、「食べログ」を運営するカカクコム(東証一部)の株価が急落。一時、年初来安値を更新するという事態に陥った。

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 原因は飲食店経営者のツイートに端を発したネット上での炎上、とされている。そのツイートがどのような内容だったか、その詳細についてはここで細かくは触れないけれど、簡潔に言えば「食べログ上の点数及び検索順位は運営側(食べログ側)が操作している」という旨を指摘したものだった。真偽のほどは定かではない。そして、それは重要ではない(自店にとっても、この記事においても)。


フォーカスしたいのはそのツイートの「嘘か真か」ではなく、ネット上での発言がその会社全体を揺るがすほどのインパクトを与えうるという危うさ、だ。その急落がどれだけの実際的な損失を招いたのか、あるいはそれほどでもなかったのか、それはわからない。けれども、何万、何十万ものクチコミをコンテンツとする巨大なメディアを運営する会社がたった一件のクチコミによって、御しきれない暴風に見舞われたのは事実だ。ネット上での悪評が株価に直結するというのはPCデポの件も然り近年当たり前のように起きているが、本件についてはクチコミによって生かされている企業がクチコミによって刺されたという点にアイロニーを感じるし、同時に恐ろしくもある。

恐ろしさとはすなわち、クチコミの「破壊力」。一件のクチコミが大企業の株価を撃ち落とすほどだ、一介の個人商店なんてひとたまりもない。全体を取り巻く環境がこれだけデジタルに染められていく中で、「クチコミ」というアナログ(クチコミそのものは極めてアナログだ)は今もなお、というより情報と選択肢が溢れる現代だからこそ、強力無比な影響力を誇っている。


オープン当初、僕は、

カテゴリー①「近隣の住民や会社員」
カテゴリー②「身内(僕の友人や知人)」
カテゴリー③「Webからの流入客」

の3カテゴリーから成る売上の構成比は、1:8:1ぐらいになると予測していた。当面はほとんどが僕の知人で近隣もWebも全体の1割くらいだろうと。これを1年かけて、5:4:1くらいに推移させ、2年が過ぎるころには6:2:2に着地させたいと思っていた(思っている)。


Webからの流入で全体の売上の20%。僕の能力と立地、及び広告予算から考えればこのラインが精一杯だろうし、逆に言えば目安とする売上を達成するためにはWebからの流入客が不可欠だった。ゆくゆくどうにかして取り込んでいかなければならないカテゴリーであり、そのためには出だしの時点でネガティブなクチコミやレビューを回避することは不可欠だった(あくまで「出だしの時点で」、だ。営業年数が続けば続くほど、リーチが増えれば増えるほど、何かしらの悪評は立つし、それはきっと避けられない)。


食べログは評価点数について自社サイトのFAQにて、以下のように回答している。


食べログの点数は単純平均ではありません。各評価がお店の点数に与える影響度はユーザーによって異なります。基本的には食べ歩きの経験が豊富な方の影響を大きくするという考え方のもと設計されており、ある程度食べログで投稿を繰り返しているユーザーについて、様々な要素をもとに影響度を設定しています。例えば、初めて投稿したユーザーの評価は点数には全く反映されませんが、影響度の高いユーザーの評価は点数に大きく反映される、といった具合です」

 

なるほど、点数については独自のアルゴリズムによって一定の基準が保たれているのかもしれない。

 

けれど、点数はそれほど重要ではないと僕は思っている。点数よりもユーザーがどういうクチコミを残したか、そのテキストそのものが重要なのだ。そのユーザーがインフルエンサーであるかどうかなんて店に関係あるだろうか。今回、食べログに炎上をもたらしたツイートを発した飲食店経営者の「影響度」はいかほどであったのだろう?影響度が高いから炎上したのだろうか、それとも影響度は低いのに炎上したのだろうか。おそらくいずれでもない。その経営者がインフルエンサーであったかどうかは関係なく、彼が呟いた「テキストそのもの」が火種だ。


今回の騒動は一時的に舞い上がる炎とともにたちまち沈静化した。一ヶ月半経った今、結局どうなったのかはわからないまま、風化し、一般ユーザーは何事もなかったかのように(と言うか、そんなことがあったのかも知らないまま)食べログを利用し続ける。飲食店経営者が呟いたツイートは間もなく跡形もなく忘れ去られるだろう。


しかし、店の場合、一度投稿された酷評は残り続け、多くの人の目に晒され続ける。もし店が評価点数を追求するならば、その後の営業努力で点数は挽回できるかもしれない、が、投稿そのものは烙印のようにいつまでも居座る。Webは完全に無視、という態度を貫ければそれで済むが、6:2:2を目指すのであれば、気丈に振る舞い続けるのも難しい。


肥え続けるレビュー社会。そのうちレビュアーのレビューにもレビューがつき、レビュアーのレビューにも点数がつく、そんな点数だらけの世の中になりそうだ。



 

では、自店はどうすべきか。




オープン当初、想定していた1:8:1、カテゴリー③「Webからの流入客」のその「1割」をどれだけゼロに近づけられるかに苦心した。勿論、これも商売不繁盛論に基づいている。 

 

 

→vol9に続く。