Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×Jの冒険-2015年4月⑬「商売ほどほどに繁盛論」vol2-

大切なのは「継続そのもの」よりも「どう継続させるか」。


売上や利益は「継続」における必要条件ではあるけれど、同時にその一つに過ぎない。継続していくには他にもいくつかの要件が必要で、自店の場合(おそらくほとんどの個人店が同様であると思うけど)、その最たるものとして「スタッフの安定」と「心身ともに健康であること」の二つが挙げられる。



このどちらかが欠けると、たとえ利益が上がっていたとしても店を継続することは困難となる。この2つの要件があってこその利益であり、同時に、利益があって初めてこの2つの要件が成り立つ。「どれが一番大切か」に回答はない。どれも等しく一番に大切だ。


継続とはすなわち、利益、スタッフ、健康の3点から成る三角形の重心を一定に保つこと。

 

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この三角形の面積が「自分たちができることの範囲」を示すのだと思う。だから、成長とはすなわち、重心を一定に据えながらこの三角形の面積を広げていくこと。

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この三角形を形成する3点のうちのいずれかが歪み始めると重心が揺れ、あるべき形を保てなくなる。バランスを取り戻さないかぎり、その三角形は沈むことになる。売上や利益を上げ、それをスタッフに還元することができればモチベーションになるかもしれないし、労働環境の改善や福利厚生の充実に予算をまわせば健康面は自他ともに整えられていくだろう。けれど、オーバーペースは必ず弊害を起こす。売上や利益だけをひたすらに追求する盲目的な労働はスタッフが離れていく原因になるし、スタッフはおろか自分自身が体調を崩してしまえば全てパーだ。


交通事故の原因のほとんどがスピードの出し過ぎであるように、企業によって引き起こされる問題や不祥事の根本にあるのは売上・利益至上主義の過度な加速にあると思う。社会問題のような大きな事柄だけではなく、小さな会社や店舗で起こっている問題の多くもまた、結局はここに由来している、ような気がする。それが過剰であれ、不足であれ、三角形を成す一点の中で最も脆く、危ういのがこの「売上・利益」という点だろう。


何事も「行き過ぎ」は良くない。そうわかっていても前のめりになって、アクセルとブレーキの制御を失うケースは少なくない。成長過程で欲に目が眩むパターンもあれば、見栄やプライドを先行させてしまうパターンもある。けれど、そうした傾向は主体者個人の内的な問題よりも、世の中が根本的に競争原理の上に成り立っているからだと思う。自分自身はジョギング程度に抑えて走りたかったとしても、競争相手にペースを乱されるのは往々にしてあることだ。そして、さらに相手は他者だけではない。どの企業にも、どの店にも当てはまるが、最も負けられないのは一年前の自分との競争だろう。いわゆる前年比、昨対比は第三者からの評価において、外せない指標の一つとなる。


銀行や公庫などその他の第三者は去年に比べて優秀なスタッフが増えた、だとか、一年前の今頃に比べて健康状態が改善された、なんていうところには当然着目しない。ただひたすら、クールに数字を見つめ、クールに判断する。彼らにとってはそれがお店の成長性であり、将来性であり、与信であり、一緒に仕事すべきかどうかの判断基準だ(勿論、それだけじゃないかもしれないけど、それぐらいのつもりでいた方がいいと僕は思っている)。「今月、よく売れたなー」という喜びは裏を返せば、一年後の「枷」でもある。だから、がむしゃらな追求は一年後に過酷なサーキットを与えることになる。そして、下手をすれば健康面に影響を及ぼし、スタッフの安定性の低下へと繋がる。イニシアチブの強い主体者やマネイジメントが上手なリーダーはこのハードなレースをハングリーに楽しみ、健全さを保ちながら、スタッフを明るい方向に導くのだけど、僕にその手腕はないと思っている、少なくとも今のところ。


あらゆる競争から身を引き、第三者からの視線を無視し、牧歌的にのんびり過ごすというのも在り方として賢明だ。けれど、一店舗の運営の先に見据えるものがあるのだとしたら、レースから降りるのは難しい。そして、僕は後者だ。だから、他者のペースに乱されることなく、一年前の自分たちに照準を合わせ、その競争にはきっちりと白星をつけていかなければならない。目標とする成長率をクリアできる見込みが立てば、あとはほどほどにして、余剰分は三角形の他の2点のために使った方がいい。健やかに働き、やるだけやって、健やかに休み、健やかにサボりたい。


映画でも観るか。

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川遊びにでも行くか。

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寝るか。

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さすれば、三角形が大幅に歪むことはないし、競争原理も正常に機能する。と思っている、と言うか、信じている。





大切なのは「継続そのもの」よりも「どう継続させるか」。






その所以はつまりこういうことになる。






*スタッフの寝顔に落書きが書かれているのは外部の人間の仕業であり、主体者(僕)はこの犯行に一切加担していない(犯行現場にはいたが、ボジョレーヌーボーという睡眠薬を飲まされていたため、寝ていた)。なお、投稿写真について落書きされていない写真も提案したが、全て棄却され、本人から渡されたのがこの一枚だった(この写真はその中でも比較的マシだということだ)。