Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×Jの冒険-2015年4月④「商売不繁盛論」vol4-

個人店の開業を目指す主体者がまず最初にくぐることになる関門は「ハコ(物件)」であり、それと同等に「ヒト」であると思う。いいハコを抑えることができたとしても、ヒトが不足していれば家賃は重くのしかかり、ヒトがいたとしてもハコが不十分であれば人件費は切実なものとなる。

「ハコ」と「ヒト」のバランスをどう保つかは主体者が向き合い続けなければならない課題であり、個人事業主であろうが法人であろうが、また、事業規模が大きかろうが小さかろうが関係なく、常に先頭を走る最重要項目であると思う。

「ハコ」が先か、「ヒト」が先か。分かれるところだとは思うけど、自分の場合、ハコよりもまず初めにヒトを決めた。物件ありきでヒトを含むその他を構築したのではなく、第一項をヒトとし、そこから物件を含むその他のイメージを膨らませた。

まず最初に考えたのは「一人でやるか、否か」。次に、雇うとすれば「社員としてか、あるいはアルバイトか」。では「何人でやるのか」。そして「誰とやるのか」。

「一人で」という選択肢はすぐに外した。開業資金の予算からすれば一人でまわすような小さいお店も検討しなければならなかったが、一人でやれることは知れてるし、収益の天井も低い。ある程度調理に集中しなければならないし、かと言って、調理にだけ集中してコミュニケーションを削ぎ落す、というのも望むところではない。

さらに言えば、「一人でまわせなくもないけど、できれば2人ほしい」という規模感にも積極的ではなかった。この規模感の場合、常に人件費に神経を擦り減らしながら営業しなければならず、そうした環境はあまり健康的ではない。席が埋まり、回転を目指すのであれば適正人数は3人、でも基本的には2人で十分、というサイズが最も好ましく思えた。

「アルバイトを雇う」という考えも早々に立ち消えた。

アルバイトを雇う利点としては、

①給与体系が時給であるため、売上に応じて人件費を調整できる
(勿論、各々のアルバイトが稼ぎたいと思う金額は担保しなければならないが、かと言って、そもそもの売上がなければそれも叶わない)

②複数人雇うことで、想定外のシチュエーションに対する対応力が強まる。
(例えば体調不良や唐突な欠勤など不測の事態へのリカバリーが速い)


上記2点が主たるメリットになると思う。これに基づき、最初から社員を抱えるのではなく、まずはアルバイトから、というケースの方が一般的には多いのではないかと思うが、僕は「初めから社員と2人で」を選んだ。社員とする時点で、人件費は変動費ではなく固定費になるというリスクを背負うことにはなるが、そのリスクよりも下記2点を重点に置いた。

①営業の安定化とゲストとの関係構築の短縮化

出勤するスタッフによって店のカラーやサービスにバラつきが生まれるのを防ぎ、また来店されるゲストとの距離を短期間で縮めるためには複数人に散りばめるよりも、一人に集中させた方がいいと考えた。

②マネイジメントと教育の局地化

これは単純に自分の能力不足に由来する。お店の立ち上げとともに複数人を同時にマネイジメント及び教育する自信がなかった。おまけに自店は多国籍・無国籍のダイニングバーという特殊な業態。一般的には馴染みの薄い、専門性の高いメニューを扱うことになるため、フルタイムでも覚えるのに時間がかかる。パートタイムであればなおさら、メニューを覚えるだけでも困難となる。


今振り返ってみても、初めから「社員と2人で」という選択肢をとってよかったなと思っている。



最後に、「誰とやるのか」。これについては物件が決まる前から目星をつけていたが、社員として求めていた人物像は「自分とはタイプの違う、自分にできないことをできる人間」だった(2016年3月、彼はもう辞めてしまった)。加えて言うなれば、飲食経験が少ない人間の方が好ましかった(当該スタッフはこの条件にも当てはまっていた)。自分もスタッフも比較対象のない真っ白な場所から出発したかった。最初は大変かもしれないけど、そうした方が店として基礎体力がつくし、のちの跳躍力にも繋がるとも思っていた。経験豊富なスタッフと「はじめから華麗に」ではなく、「当面は泥臭く」でいい。


以上が商売不繁盛論の3つ目の前提となる。


前提3.自分と飲食未経験のスタッフ1人の2人体制

 


次回は前提3.が商売不繁盛論にどう結びつくのかを掘り下げていく。