ゲストの「今日、楽しかったね」を作ること、
それが自分にとっての飲食業であり、ライフワークであるということが桜演説の前文。この前文をその他一切の前提とし、またその他一切の重心に据える。今後、やれやれなことは多々あろうが、しんどくなったらここに立ち返ればいい。たとえ、どうであれなんであれ、目の前のゲストにエンジョイしてもらう、それだけ。シンプル。
その上で、他にもいくつかの取り決めを設けた。結局全ては自分の店がどういう店で在りたいかであり、ひいては自分がどういう人間で在りたいか、に通ずる。それは言わば北極星のようなもので、揺るぎない座標に位置しているものだけど、天体は広く、星は無数にある。取り決めを設けたのは北極星を見失わないため、また見間違えないようにするため。
一年経った今、思うに、守れてるものもあるし、守れてない時があるものもある。自分では守れてると思っても、内実そうではないものもあるだろう。
以下、桜演説全文、及び、注釈。
①挨拶と返事と感謝はしっかり
→昔はこういうのに冷ややかだったけど、今では大切さがわかる。気持ちのいい挨拶と返事は他のことがどうでもよくなるくらいの言い知れぬ凄みを与える。逆も然り。「感謝」に関しては全世界共通絶対的最重要項目。
②ユーモラスであること
→大体のことはユーモラスに対処する。怒ったり、愚痴ったりはその内容でその人の性格や度量が知れる。怒り方や愚痴り方は言うなればセンスの問題。怒ったり、愚痴ったりする時もできるだけユーモラスでありたい。
③誰かのせいにしない、何かのせいにしない
→自分の身に起こる大体の出来事は大体自分のせい。そういうふうに考えた方が大体、楽。
④時間は守る
→基本的に基本。しょうがないときはしょうがない。早すぎるのも難。遅れるのも早すぎるのも無碍に相手の時間を奪うという点では一緒。店の立場で言えば、逆にここをうまく融通きかすことがけっこう大切。
⑤嘘は言いたくない
→必要悪の嘘も極力避けたい。嘘をつかないといけない状況にまで持ち込まない。
⑥断定的に断定しない
→決めつけない。蓋然性が人の生活を豊かにする。
⑦正当化の正当化はしない
→物事が歪んでくるのは正当化の正当化からはじまる。
⑧お金は大切に使う
→お金が世の中をまわしているのではなく、お金をまわしてる「人」が世の中をまわしている、ということを肝に銘じる。お金にまわされる人にならない。お金を大切に使うことが大切。
⑨主体者と従業員はフェア
→「経営者」という言葉は仰々しいし、むずむずと決まりが悪いので「主体者」とする。主体者は主体者の仕事があり、従業員は従業員の仕事がある。それぞれがそれぞれの役割と全うしてる点においてはフェアであるということを留意する。
⑩キツい時が勝負時
→調子がいい時はあてにならないし、あてにしない。キツい時にこそ本性と本領が問われると心得る。そういう時にムキになるとろくなことにならないし、ダサい。もうダメだって時こそ、クールに、そしてユーモラスに。
そして、⑪、いざって時はずばっと徹底的に。
前文と以上11点を以って、所信表明桜演説とした。
夜更けの演説から数時間後、
僕は初めて自分の店でサロンを巻いた。
間もなく、ゲストが来る。