遡ってみると、僕はこのブログを2015年の4月14日、お店のオープンから2週間後にスタートしている。お店を開いたばかりの頃は色々とてんやわんやで息つく暇もないまま、毎日追われに追われていたわけだけど、週に一回のペースを目安に細々と書き進めてきた。
定休日の日曜日に普段なかなか手をつけられない事務作業を済ませたあと、静かな店内で一人黙々とブログを書くのはわりと好きだったし、このしんとした時間が週に一度あるということは頭と体のリズムを整えていく上で必要なことだったように思える。記事にもよるけれど、1投稿あたり大体2~3時間を要する。週に一度の休みに出かけもせず、飲みにも行かず、それだけの時間を孤独に費やすことが店の主体者の休日の過ごし方として適切かどうかは甚だ疑わしいけれど、自分にとってブログを書くことは日常的な生活から切り離された健康的なジョギングに似ていた。書いていることはお店のことなのだけども、通常の営業とは別の座標に位置しているもので、現状、このブログにおいて、直線的な告知やプロモーションの要素は削いでいる。だから仕事の一環としては捉えていない。言うなれば、ただの趣味であり、独りよがりな道楽であり、自己満足的なエクササイズだ。
通常、営業中も自分なりにあれこれ頭を働かせながら進めているわけだけど、まとまった文章を書くというのも同様に頭を使う作業だ(少なくとも僕にとっては)。でも、営業中の思考とは全く別のものなので、「日常的な生活から切り離された健康的なジョギング」になりうる。まあ、今の自分を省みればブログを書くことよりも、実際的にジョギングをしたほうがよっぽど健康的なのだろうけれど、それは今後もっと自分の時間を有効に持てるようになってからにする。こう見えて走るのはけっこう好きなのだ。ランニングマシーンはやらされてる気がして苦手なのだけど、外を走るのは嫌いじゃない。こう見えて。
今まで42話にわたり、飲食店(多国籍・無国籍のダイニングバー)の開店準備からオープンに至るまでの過程を記してきた。飲食店の独立や開業に関するサイトは無数にあるので探せば見つかるのかもしれないけれど、これほど長きに渡って綴ったものはあまりないと思う(よほどの成功者のよほどの成功談以外では)。理由は簡単で、特にメリットがないからだ。多くのサイトは広告的な誘導や煽りを直接的にあるいは暗に目的としている。成功事例と失敗談を程よく織り交ぜた、ポイントだけを要領よく絞った出来合いのストーリーはあくまで広告的な導線である場合が多い。そうした意図があれば話は別なのだけど、小さな個人店がその独立までの過程を描いたとしてもはっきり言って特に意味はない。そんなことに時間を割くのであれば、売上や利益に直結する仕事にウェイトをかけた方がよっぽど有意義だ、ということになる。
それを承知で何故、書くのか。
最初の記事でも書いているのだけど、
「今後お店がどうなっていくかわからない今だからこそ、リアリティのあるリアリティをもって書けるのではないかと考えています。そして、そのリアリティがこのブログの読者の方々の現実と夢に何らかの形で振動・共振することを目標に書いていきます」
ということになる。まどろっこしく書いているけども、平たく言えば、飲食店の開業を目指す方々の参考資料になったらいいな、ということです。それに「個人的な日記」という意味合いも単純にある。その「個人的な日記」が誰かのお役に立てたしたら、けっこう素敵じゃないか、と。でも、それは成功談もなく、失敗談でもない今のうちに書いたほうがいい。その方がリアリティがある。だからこそ、一年目から合間を縫って継続的に書き進めてきた(と言っても、もうすでに1年4ヶ月の乖離があるのだが)。
前回の記事を以って、一区切りとし、今後はオープン後の話を書いていくことになる。『J×Jの冒険への冒険』というややこしいタイトルも卒業、これからはれっきとした『J×Jの冒険』となる。
内容的にはもっとカタめなものになっていくと思う。その中で今まで手をつけてこなかったこともブログを通して色々試していきたいと考えている。ビジネスライクな色合いを強めることによって、もともと多くないアクセスがさらに減ってしまうような気もするけれど、主とする目的は上記に基づいている。だから間口を狭めることになったとしてもそれは仕方ないかな、と。
けれど、内容はそうであっても、基本的なスタンスや全体のトーンはこのままで進めていきたい。一年書き続けているうちに、更新の度にブログについて触れてくれるゲストが少なからずできた。恐縮なことに、楽しみにしてくれている方もいる。少なからず。
そのようにして、節々で嬉しいお言葉をいただいたりもしたのだけど、
(皆様、ありがとうございます‼)
一番嬉しかったのは、
「ヤマモトのブログ、正直言って面白いよ」と同級生に言われたこと。
ではなく、そのあとに続いた、
「でも、いいね!は押さないよ。俺が痛いと思われるからな」。
というお言葉。
勿論、SNSにリンクを貼る時点で、反応していただくことはありがたいし、嬉しい。
でも、であれば、スタンスもトーンも違うふうに仕立てるべきだと思う。
目指すのは汎用性のある「参考資料」(ごく一部の人にとっての)でありつつ、「いいね!」を押すのをためらわせるような、ロックでシャープな痛々しい「個人的な日記」だ。「これ、いいね!、押しちゃっていいのかな、やめとくか」と思わせうる、痛ましく危うい日記でありたい。
その痛みや恥じらいをかいくぐって、押していただける「いいね!」やコメントに心から感謝する。