2015年3月1日、日曜日、契約初日の日。
池尻さんの立ち会いのもと、橘さんから鍵を渡された。軽く歓談したのち、二人は店を出た。店内には僕一人。店に一人でいるというのは当然、これが初めてとなる。いつもは友達とグループで行動していたのに、ふと気づいたら意中の女の子と二人きりになってしまった、そんな気分だった。妙によそよそしく、妙に浮足立っている、ああいう感じだ。
何となくその空気に馴染めなくて、近くの中華屋にお昼を食べにいった。酢豚だった。
店に戻り、店内の写真を撮った。
隅には橘さんが置いていった(僕が造作譲渡として買い上げた)調理器具。
キッチン内。
外観。
こういうところがいかにも橘さんっぽい。
レセプションの初日は3月28日にするということを知人や友人にすでに伝えてしまっている。あと27日間でここから、そこまでもっていかなければならない。何となくその現実に馴染めなくて、近くの中華屋さんにメシでも食べに行こうかと思ったけれど、さっき食べたばかりだった。酢豚だった。
このブログはオープンしてから2週間後、4月14日に始まっている。その最初の記事にこう書いてある。
「(このブログでは)オープンまでの過程を過去に遡ってトレースしていきたいと考えています。立ち上げたばかりのお店なので当面のバタバタは必至なのですが、今だからこそ、そしてお店の開業が成功事例でも失敗談のいずれでもない今のうちに、書き留めておきたいのです」
あれから毎週、定休日の日曜日にこのブログを書き進めてきた。そして、契約初日に至るまでに半年の時間を要した。このペースで行けば、ブログ上でお店がオープンする頃にはお店をたたんでいるかもしれない(というのはブラックジョーク)。
3月1日から3月28日までの27日間で、
・内装工事
・仕入れ先との契約
・銀行やクレジットカードの開設などお金の管理に関わる事項
・メニューの考案とオペレーションの策定、及びメニューブックの作成
・調理器具の用意
・各種備品の準備
・WEBページの作成や写真撮影
・商圏の調査
・広告、プロモーション
最低限でもこれだけのことをパラレルにこなしていかなければならない。
あ、あと、
・加藤の教育
も。
彼は飲食経験、ほぼゼロ。旅の経験もなければ、インドがどこにあるか知っているかどうかも怪しい。けれど、結局、「加藤の教育」に関してはほぼノータッチだった。その時間はなかった。「とりあえずビールがつげればそれでいいよ」とレセプションの前日に言ったけれど、当日人と酒がごった返している中で「山本さん、カシスソーダって何ですか?」と聞かれたときには戦慄した。「加藤、カシスソーダはカシスとソーダだ」と真顔で返答した自分にも驚愕した。
さておき、このブログでは引き続き「『J×Jの冒険』への冒険」と題して、当面の間、この27日間を追う。内容的にはこれまでよりもより実務的、と言うか、ビジネスライクな感じになるのでわずかにしかいない読者がさらに離れてしまうかもしれないのだけど、何か物事を始める上では飲食店であろうがどんな業態であろうが本質的にはそう相違ないし、言ってしまえば日常にも通ずるところもあると思っている。
飲食業の人でなくても楽しめるように鋭意努力し、堅い内容の中にも自分なりのユーモアは極力盛り込み、そして困った時は文脈において加藤の力を借りる。多いに借りる。
2015年3月1日、夕方。久しぶり(2012年9月のルワンダ以来)に自撮りした。いつもは友達とグループで行動していたのに、ふと気づいたら意中の女の子と二人きりになってしまった、そんな気分の中で。
参考までに、2012年9月の自撮り。ルワンダの古びた宿にて。あれから2年半。自分にしては上出来だ。太ったけど。