Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

秋葉原路地裏酔いどれ経済論vol2「ブレずにグレるくらいであればブレよう」

今までの店舗経営の振り返りですが、2015年の12月までは書いていたので(3年前に)、2016年からざっくりリスタートしていきたいと思っています。ですが、その前にそれまでのことを振り返りの振り返りとして、超ハイライトで整理します(久しぶりの自分のために)。

2015年の4月にオープンし、12月までの8ケ月の中で、一番重要視していたのは「いかに売上を最適化するか」でした。その最適化とは自店にとっては「商売不繁盛」という言葉と直結していました。

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「商売不繁盛」の言葉が意味する範囲は広いのですが、要は「頑張りすぎない」ということです。さらに言えば、「どれだけ売上を捨てれるか」。本来であれば独立開業は一世一代の大仕事なわけで、なりふりかまわず全身全霊を注ぐべきところで、それはそれで間違いないのですが、自分の場合、その全身全霊を一極集中せずに細分化するようこ心掛けました。一つのことに全力を注ぐということはある意味、他の可能性を自ら捨てるということであり、一つのことに一生懸命頑張るということは他のことを頑張らない、頑張れない、ということでもあると自分は思います。

「わかりやすいメッセージ」とか「ターゲットを絞ったコンセプト作り」だとか、「その店/会社のコアコンピタンスは何か」とか、何を始めるにしてもやたらとそういった明確性が問われ、求められます。実際に明確であることに越したことはないでしょう。自店の場合は「世界一周×多国籍料理」というある種の明確性がそもそも自然とあったので、アイデンティティについて深堀りすることはありませんでした。でも、そうした明確性というのは自分だけでなく、お店を開きたい人には大体あるんじゃないか、と思います。なんとなくの感じで、なんとなくお店やりたい、という人も中にはいるでしょうけれど、今となってはそういうタイプはむしろマイノリティで、大多数はすでに明確な意図だったり、何かしらの強い目的性がすでにあるように感じます。

だから、むしろ大切なのはその核たる部分を補足するサブ的なものにあるんじゃないかと。メインタイトルの次に来るサブタイトル的な部分であったり、メインターゲットの次の層であったり、わかりやすいコンセプトの裏に潜む小難しい理念であったり、複雑でセンシティブな想いであったり。そうしたサブや裏面がメインと掛け合わされることにより、初めて個性を個性として発揮できるような気がします。わかりやすいメッセージだけでこの乱世を潜り抜けることができるとは到底思えません。それに、尖れば尖るほど確かに希少価値は保たれ続けられると思いますが、よほどの職人気質でないかぎり、同じことを同じようにやり続けるというのは相当難儀なことです、多分。

だから軸たる部分は大切にするにしても、その軸の支え方というのはその時々において流動的で柔軟であったほうがいいと思うのです。全てを明確かつ固定的にしてしまうと行き詰ったときに修正がきかなくなってしまうので、どこかでアソビの部分を作るのも必要です。よくブレるのは良くない、と言うけれど、これだけ消費と新陳代謝がスピーディーな世の中において「ブレずに貫く」というのは、商売的にはもはや致命的ではないかと。ブレずにグレるくらいであれば、ブレてもいいんじゃないでしょうか。

そう考えれば、わかりやすいメッセージというのはほんとにそんなに大切なのかなと感じます。むしろ、そう易々と言語化できない、伝えきれない、ごちゃごちゃした感情の方が魅力的だったり、応援したくなるような気がするのだけど、それは僕が偏屈だからですかね。

と言いつつも、幸いなことに僕は今までさほどブレずに一点突破で店舗運営を推し進めることができたと思ってます。メインの軸が「世界一周の経験に基づく多国籍料理」なのであるならば、サブは「貸切利用」です。2015年と2016年はまさにこの「貸切」との闘いでした。