「売上推移」と「人件費率」に続いて、
3.原価率について
飲食店経営において、人件費とともに重要な数字となるのは「原価率」。よく言われるのは飲食店は人件比率と原価率を合わせて、55%を理想とし、60%以内にコントロールすることが目安とされています。J×Jは2024年の上半期の人件費比率が31.6%だったので、教科書通りを目指すのであれば23.4%以内に抑えなければならないところ、実際は28.9%。人件費と合わせると60.5%。全然悪くない数字だし、むしろよく頑張れてるとは思うものの、57,8%にはしたいところ(教科書の言う55%にするにはけっこう難儀だと感じている)。
とは言え、食料品の価格は上がり続けるばかり。その分価格転嫁すればいい、という話になるけども、様々な観点からしてそう容易ではない。仕入れ値をそのまま売価にタイムリーに反映できるスタイルのお店(例えば、日替わり単品メニューがメインのお店であれば)は工夫の余地があると思うけど、自店のようにランチ価格を固定していて、かつ、ディナーがコース主体、そして大半が事前予約となると、柔軟な対応がなかなか難しい。
となると、仕入れそのものを改善するか、そのあとの調理工程や加工を工夫するか、という話になるのだけど、ウチは「多国籍料理店」で、ある意味何を出しても成立するというアドバンテージがある。イタリアンはイタリアンである限り、基本イタリア食材を使うだろうし(少なくとも使いたいと思っているだろうし)、そうなると日本だけでなく他国の物価上昇や為替変動の影響は直接的で、工夫できる範囲は極めて限られる。この側面で言えば、ウチは調整できる幅と余地はまだ広いと考えている。
ネットショッピングはますまず充実していくだろうし(世界中のモノが手に入りやすくなるだろうし)、政治的には色々あるにせよ、日本で働く外国人が増えることによって、輸入食材は今よりももっと自然に流通するようになるし、専門店の台頭はおそらくより加速する。ソリッドではない、ゆるふわ系多国籍料理店としては今後にワクワクできる部分も少なからずある。
4.その他販菅費について
せっかくだから、その他の経費についても一つ一つ掘り下げていきたいところだけども、いつものごとく、それを悠長にやっている時間がなくなってしまったので、さらっと触れてみる。
①地代家賃
→家賃は14.6%。この数字は一般的な指標と比べて高くなってしまっている。が、現状、売上ゼロの本店2階の家賃も含まれているので、この点についてどう考えるかは見方にもよる。利益のことだけを考えれば確かに圧迫しているけども、家賃以上の働きをしてくれているとも思っている(ささやかな福利厚生としては十分機能している)。
②広告宣伝費
→1.0%。広告費はほぼ使っていない。2024年上半期のみならず、この9年半、広告はかけていないのでその点についてはうまくやれている。SNSもほぼ動かしてないので、そういった意味で広告的人件費もゼロ。今の2店舗営業であるかぎり、これからも実店舗営業に広告予算をかけることはないだろうけども、浮いた分を物販にまわしたいとは考えている。
③接待交際費
→1.7%。願わくばもっと使いたいけれど、使いようがない。
④水道光熱費
→4.0%。ここも比較的抑えられていると思っている。常に火を使わなければならない、水を出し続けなければなないお店は大変だと思う。また大きい箱は電気代のコントロールも難しい、というか、しようがないので、ここもまたシビアだ。
⑤その他
→通信費0.7%、消耗品0.5%、細かく言えばゴミ処理1.0%、おしぼりなど0.6%となっているが、そもそもの売上に対する設備(冷蔵庫や空調)の価格が高いので、ひとたび故障となればその打撃は極めて大きい(そして悲しい)。そうならないためにも不測の事態に備えて、積み立てる必要があるのだけど、そのあたりはやりきれていない。
あとは採用費用。ウチだけでなく、多くの飲食店が直面している問題だとは思うけど、まあとにかくシリアスだし、打開策がいっこうに見えてこない。現状、なんとかなってるからなんとかなってるだけで、そうも言ってられない。
上記は2024年の上半期の数字。その翌月の7月は過去最高売上を記録し、全ての数値の平均が改善されたが、8月はブータンに行ったり、台風の影響によるキャンセルなどで7月分に打ち立てたものは全て帳消しになっていると思われる。
これを受けて、では繁忙期である12月をどのように迎えるかを緻密に組み立て、周到に準備していきたかったところなのだけど、まもなくJ×Jならびに自分には緻密も周到もすべて吹き飛ばすほどの出来事が起こる。というわけで、今日もまた整理できないまま、棚卸しできないまま、一日が終わる。
今、私たちのお店はそんな感じ。