J×Jの開業当初からの定番かつ看板である「カオマンガイ」、率直に言ってカオマンガイではありません。カオマンガイではなく、「カオマンガイ的なもの」です(この表現ですら好意的な譲歩でしょう)。
カオマンガイの定義とは何か。それについて僕はろくな回答ができません。wikipediaによれば中国の海南島の名物である「文晶鶏」に由来しているらしく、海南島の出身者の華僑がタイ、シンガポール、香港に移住し、故郷の味としてそれぞれの土地でそれぞれの土地の料理として確立した、とあります。そう考えると料理というのはすべからく流動的で、その時々と場所々々で変遷し、さすらうものであり、定義付けすること自体に無理があるように思えます。だけども、カオマンガイAとカオマンガイBを違う名前にするのもしんどいので、名称を統一することによって、便宜性を高めているのだと思います。だから、正しくは「カオマンガイ的なJ×Jオリジナルの鶏肉ごはん」となり、その自覚はあるのだけど、当然ややこしいので、便宜的に「カオマンガイ」としています。ので、以降、J×Jのカオマンガイはやはり「カオマンガイ」と呼びます。
お店をオープンした時、ランチはカオマンガイをメインに据えようと元々考えてました。自店の近くにはエスニック的なお店はなく、中華屋さん、カレー屋さん、お蕎麦屋さんなどランチシーンにおける巨人ばかりがひしめきあっている状態で、「多国籍料理」というただでさえ異色なのに、内容やテイストまでクセがあると牽制されるかなあと懸念し、本格派からすれば大分、中途半端な仕上がりになりました。いつか機を見て、本格派に寄せていこう(現実的にオペレーションが可能な範囲で)と構想していましたが、次第にそのテイストにも固定客がついてくれるようになり、変えるに変えられなくなりました。そして、その中途半端で軟派なカオマンガイのスタンスを崩さない範疇で、何度か改良を繰り返してきました。
さらにこのコロナ禍において、カオマンガイもUBERで適用するようになり、他店との差別化の意味もこめてトッピングを充実させるようにしたそんな折、『エブリィ』、『Nスタ』、『ひるおび』から立て続けに取材が入りました。
ニンニクを効かせたカオマンガイを「ガリガリカオマンガイ」とし、こうなればとことんやってやろうということで、現在では「ガリガリ」の他に、パクパク、坦々、タルタル、ネバネバ、辛々とアレンジを広げています。否定的な眼差しを感じながらも、ランチメニューではカオマンガイが独走状態であり、他メニューをぶっちぎってます。「邪道も極めれば道」という哲学を胸に、改良は今後も継続しますし、より良いものは目指していきますが、カオマンガイについては今のここに到着したかなという感があります。ディナータイムでもスタンダードとアレンジの両軸で展開していきます。インジェラや鴨だとクセが強すぎるので、こうした安全安心メニューも是非お試しくださいませ。
「カオマンガイについては今のここに到着したかなという感」と言いつつも、この先、どこにどう漂流していくかも楽しみだったりします。「料理というのはすべからく流動的」と僕は思いますが(思うと言うかそう考えたほうが個人的に楽しい)、伝統や文化が重んじられ守り抜かれているからこそ(そうした方々がいるからこそ)、流動性が生まれ、物事を変遷、変容せしめるわけで、そう考えれば両社は背反するものではなく一体的なものだ、と邪道を突き進みながら改めて感じてます。
温故知新、覧古考新、紆余紆余曲折。
引き続き、紆余紆余していきたいと思っています。