Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

冷奴はビールにあうのだろうか?

長らく眠っていた2号店をようやく起こすことができました。正確に言えば貸切の時は開けていましたが、通常営業を再開したのは2年ぶりくらいです。長かった…。とは言え、目下深刻な人手不足に見舞われており、開けられるのは木曜日と金曜日の週2日のみです。さらに言えば、その週2日営業もどこまで続けられるかわかりませんし、そもそもこれから忘年会の季節、実際どれだけ普通に営業できるのか不透明なところです。

でも、なんとかこじ開けることができてよかったと思ってます。そして、ただオープンするだけでなく、同時にフルリニューアルを図れたのがよかった。今までは本店の内容をコンパクトにした感じだったけれども、その機能は残しつつ(2号店は本店と同じメニューですか?、と聞かれることもやはり多い)、「居酒屋」として側面も付与したことが今回のリニューアルの最も大きなポイントだと思ってます。

もう一つのポイントは自分が2号店に立つこと。独立して2年半後に2号店を出すことができたのはよかったけれど、自分自身は本店にかかりきで、コロナも相まって、2号店に手が回らなったのが実際のところ。一方、コロナがあったからこそ、2号店に着手する時間が生まれ、改めてしっかり整えることができました。それにこの2年半の間に自分が取り組みたいと思っていた飲食外のこと(EC、オリジナル調味料の開発、小説執筆、レシピ本の制作)は大体できたし、宴会・団体・貸切需要に特化し続けたことによる弊害(と改めての恩恵)も十分味わったので、一周回って普通の居酒屋を普通にやりたいという現場欲が沸々と高まっておりました。だから、今、自分が2号店に立ち、イチから再構築するということは挑戦的だし、楽しみなことであります。

普通の居酒屋を普通にやりたいと言っても、ほんとに普通じゃ面白くないし、お客さんも来てくれないと思うので、日々、「こういうことやりたいなあ、でも本店じゃできないなあ」と感じていたことや、「自分がお客さんだったらこうするなあ」と思っていたことを週2営業という限定的かつ現実的な範囲で可能なかぎり凝縮したつもりです。

個人的に冷奴はビールにあうとは思っていません。枝豆も同様です。ビールを飲む1杯目、2杯目のタイミングで「とりあえず」的な感じで、そこに枝豆があるからそうなってるだけで、「ビールにあう」とは思えないのです(栄養学の観点は除く)。正確に言えば枝豆に振られている塩であるとか、冷奴にかかっている醤油や薬味がビールとの相性として機能しているだけでないか、訝しく思ったりもします。だって醤油と薬味のないただの冷えたお豆腐はビールとあわなくないですか?と、そんなような疑念を僕は抱いているのです。

このブログを書くにあたり、そう思っているのは僕だけじゃないはずだ、と検索してみたら、Yahoo!の知恵袋でまさに同じような疑問を投じている人を見かけ、おお!、と思って覗いてみたら、びっくりするぐらい袋叩きにされてました、苦。「おまえの主観だろ」だとか「美味しい枝豆を食べたことがない残念な人」だとか、それはもうひどい言われようで、まさに惨劇でした。

幸い、このブログはほぼ誰も読んでいないので荒れることは100%ないし、「店」はそもそも店主の「主観」を「提案」して、「吟味」してもらう場所だと思うので、自由にいかせてもらいますが、今回、2号店では「個人的な主観に基づくちょっとした個人的疑念」をすごく細々と、とてもささやかに、ブチまけています。マーケット・インは勿論重要ですし、それによってJ×Jの経営は成り立っていますが、同時に個人事業主の個人事業におけるマーケット・インほど虚しいものはない、とも考えています。どんなに小さくてもいいから自分ならではのマーケットを創出して、自分だからこそ形成できる文化を醸成するのが個人事業の醍醐味であり、魅力でしょう、と僕は思うのです。

プロダクト・アウトが失敗するのは単純にプロダクトが悪いだけで、プロダクト・アウトという概念そのものが悪いわけではないんじゃないだろうか。逆に言えば、マーケット・インは良心と良識のあるマーケットがあるからこそ成り立つ概念ではなかろうか。

というわけで、J×J2号店の冷奴は「非冷奴」で、J×J2号店の「純豆腐」は「不純豆腐」です。うがった見方をしてるわけでもなく、斜に構えてるわけでもありません。シンプルにそっちのほうが喜んでもらえるんじゃないかと思ってます。勿論、ひねくれたいわけでもありませんが、ちょっとひねりたい、という感情はあります。

そして、「居酒屋」の定義も、皮肉めいた言葉遊びや個人的疑念も、マーケットも、プロダクトも超えて、

その先というか後というか、

その奥というか手前というか、

そうした座標を超えて、そもそもの本分としてあるのは「楽しい時間を過ごしてもらいたい」という一点で、帰り道に「今日、楽しかったね」と言ってもらうことが単純に全てです。


ご来店、お待ちしております!