Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×J、営業停止の危機①-個人経営のお店でスタッフに陽性者が出た場合の対処-

「スタッフに陽性者が出た場合の対処」というタイトルにしましたが、実際に陽性者は出ておりません。ので、現実に、現実的な対処は特にしてないですし、そうなる前に事態を回避した、たまたま回避できたというのが実のところです。

しかしながら、営業停止の危機だったのは事実です。アメリカやヨーロッパのように一日に何万人の感染者が出れば感覚もいよいよ麻痺するかもしれませんが、日本においてはまだまだ「特別」なことです。マスコミが煽りすぎだ、インフルエンザと何が違うんだ、ていうかマジなところ、マジでただの風邪なんじゃないだろうか、と唱えたところで、どうにもならないのが実情でしょう。高齢者や基礎疾患の方への感染リスクを全集中で防いで、あとは全集中で日常を日常化する、というのが僕の思うところだけど、残念ながらどうにもならない。

例えば、家の近所のコンビニのスタッフがコロナに感染し、それが公表されたとする。その100メートル先に別のコンビニがある。となると、仮に他のスタッフの陰性判明と消毒が徹底されたとしても、大体の人は近所のコンビニを通り過ぎ、100メートル先のコンビニまで歩くでしょう。そして、大体の人がそういう選択肢を取れば、そのコンビニの経営は瞬く間に窮地に立たされることになる。今回のブログ記事は実際に感染したスタッフの話ではなく、「自分のお店(小規模個人経営)のスタッフがコロナに感染したら」という仮定法未来の話になります。

本来であればJ×Jで起こったことをそのまま記述したいところですが、いかんせんナイーブかつデリケートな話です(個人的にもはやそうは思わないけれど)。店側の事情もさることながら、そのまま書くとあらぬ誤解を孕んだり、その周辺の方々にも話が波及してしまうので、細部をデフォルメしながら本質だけをお知らせしていきたいと思います。飲食店、美容室、エステ、ネイル、アパレルなど全ての小規模リアルビジネスに該当することになると思います。

上記、コンビニはフランチャイズであれなんであれ、基本的に巨大な資本が背後にあり、現実的ではないので、仮にこれを家族経営の弁当屋に置き換えます。自分(仮名A)が弁当屋を経営して、その中のスタッフBから陽性反応が出た、とする。もしスタッフが来店客から感染した場合、これは勤務中の出来事になるので労災(またはそれに準ずる保険)の対象になりえます。そうではなく、勤務外の休日、プライベートで感染した場合、どうか。その「プライベート」というのも一言で括るのは難しい。店(会社)として注意喚起しているのにも関わらず、クラブやキャバクラではしゃいで感染する場合と、冠婚葬祭など避けがたい状況での感染とは心象がまるで違う。けれどもこうしたケースにおいて、当然、心象は関係ない。一般的には陽性者はただの陽性者として認識されるでしょう、経路と理由がどうであれ。

感染経路はともかく、とにかく弁当屋のスタッフBは陽性者となった。となれば、当然Bは一定期間の隔離を余儀なくされる。そして、Bと一緒に働いていた弁当屋の店主A、他スタッフのCやDが濃厚接触者として認定されれば、A、C、DもPCRを受けることを義務付けられる。A、C、Dも陽性となった場合、それはいわゆるのクラスターであり、全員隔離されることとなり、重ねて当然、弁当屋を営業することはできなくなる。

では、Bは陽性だったが、濃厚接触者であるA、C、Dが陰性だった場合どうか。陰性であれば営業できそうな気もするが実際はそうではない。「濃厚接触者として認定され、保健所の指導に基づき、PCRを受けた場合、陽性であれ、陰性であれ2週間、外出禁止となる」。実際のところ、各自治体の保健所によって通達内容は多少変わるらしいけれど、調べたところ、東京23区において基本的には上記の通りです。となると営業の継続可否という側面で見ればある意味、陽性であれ、陰性であれ関係ないということになる。濃厚接触者とされた時点で行動は制限される(少なくともそう通達される)。

しかしながら、ここに1つの疑問が生じる。一つ目は「陰性と判明した濃厚接触者は本当に2週間も自宅待機しているのだろうか」だ。11月第2週、東京では毎日のように感染者が300人を超えている。1人につき、仮に平均して20人の濃厚接触者がいた場合、300×20人=6,000人が2週間の自宅待機を命じられていることになる。というか実際に東京都の検査数は平日であれば大体ちょうど6,000件、陽性率は5%程度なので陽性者は300人、逆に言えば陰性だった5,700人は陰性であるにも関わらず、自宅待機を課されている。東京だけで日々、5,700人。陰性においても潜伏が考えられるため、致し方ないけれど、わりとえぐい。J×Jの従業員数で言えば2,850店舗分となる。

そして、上記弁当屋のケースにおいて、仮にA〜Dの4人で店をまわしていたとしたら、陽性だろうが陰性だろうが全員2週間待機となり、事実上、店は休業を余儀なくされる。他にEやFがいればとりあえず開けることはできるだろうが、実際にそんなことありうるだろうか。EやFが自分たちだけで店をまわせるほどの人材であればともかく、その家族経営の小規模なお弁当屋さんでその想像は難しい。つまり、お店の運営だけで考えれば、陽性者がいるかどうかよりも、濃厚接触者がいるかどうかでお店を開けられるか、閉じざるをえないかの命運が決定される、ということになる。


では改めて「濃厚接触者」とは何か。