そうした曲折を経て、テイクアウトに関する基本的なスタンスとしては、飲食店としての「非・おうちごはん感」を打ち出すことよりも、「おうちごはん」そのものにプラスアルファ(味変、ちょい足し、創意工夫、遊び心、刺激、栄養摂取)を施せるアイテムを用意することに重きを置いた。5月6日までに状況が劇的に改善されればそれに越したことはないが、そうでない可能性があるのであれば、息継ぎのしにくい渾身のメニューよりも、息継ぎのしやすいカジュアルなメニューの方がいい。それでいて差別化的で、独自性と希少性のあるアイテム。
そして、こういう商品を用意するとこういう買い物が生まれる。
こうした消費行動や買われ方(求められ方)は僕が訴えたところで、一朝一夕に構築されるものではなく、届きうるものではなく、粘り強い宣伝と啓発が要される(碧は元スタッフだから伝わりやすいけれど)。既成と固定の概念をひっくり返す、まではいかなくとも、少しずつ剥がしていきたい、めくっていきたい。店側が既成と固定に無理に付き合おうとするから、則ろうとするから苦しくなる。そもそも「今」をもたらしているのは、「非常事態」という名の非常事態にも関わらず、何故、平常時での行動を平常にとろうとするのだろうか。既成概念とは行動規範であり、行動規範とは安定材料であり、安定材料とはつまりは安心の拠りどころだ。その、そもそもの「拠りどころ」が脅かされているのに、何故、それまでの行動規範を遵守し、何故それまでの既成概念に寄り添うのか、と疑問でならない。
心優しい碧君は古巣を想ってJ×Jに顔を出しに来て、1,000円分飲んで、その1,000円分をJ×Jに貢献してくれようとしたわけだけど、飲み物(パインジュース、380円)は僕がおごり、そのかわり1,000分のよろずやメニューをおススメさせていただき、お買い上げいただいた。多分、この状況で、この場所でパインジュースを飲むよりも、碧にとってはこの買い物の方が満足度は高いはずだ。少なくとも即時消化のパインジュースよりも、ママレードやアチャールや朝天辣椒の方が継続的で、発展的であることには間違いない。
お子様のために甘いカレーを作る。大人用のカレーを作る時間はない。そこでどういう味になるかわかっている七味唐辛子をかけるのであれば、当店の十七味唐辛子を試してほしい、どういう辛さになるかわかっているタバスコをかけるのであれば、当店の赤玉を試してほしい。非常事態だからこその、「非日常」を楽しんでいきたい、楽しんでもらいたい。と、僕は思う。
と思うから、是非「おうちごはんに冒険(ジャーニー)を」。