Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

八百屋化における5,000円券配布について②

前回投稿の記事(4月5日深夜/緊急事態宣言前)、

この記事の中で、5000円券配布の意図について、以下のように書いた。

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「御礼」、「継続性」、「きっかけ化」の3つの意味と文脈を5,000円券に託しているのだけど、もう一つ、4つめのポイントがあって、事業主としてではなく、個人としてはこの4つめが一番重要、けれどこれはなかなか言語化しにくく、さらなる長文を呼び起こすことになるので、この記事内で完結することを諦め、次のブログに持ち越すことにします。このブログを書いているうちに「6日も緊急事態宣言の準備入り表明見通し」とのこと。できれば「緊急事態宣言の準備入り」ぐらいの段階までに書ききりたいんだけどなー。

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実際には「準備入り表明の見通し」から「宣言」、そして「発令・実効」、それに伴う別途「東京都からの要請」まで展開は思ったよりも早かった。世界各国の対応や、世論の印象や、早期から自宅での籠城を決めこんでる人にとってはともかく、路地裏の飲食店店主からすれば、一連の動きは実に目まぐるしいものだった。同時に、「で、結局どうすればいいんだろうか」という感は正直強く、実際に「国の方針に基づいた都の方針が国によって再調整される」といった不揃いな足並みが露呈し、当然、営業自粛を求める側も、求められる側も錯綜したのは間違いない。「我々(飲食店)は一体何を禁止され(要請され)、逆に何が認められ、どこまでが守られ、どこから先が補償されないのか」、結局いまひとつわからない。おそらく今もなお誰もよくわかっていない。そして誰もよくわかってないまま、「行けばわかるさ、ダー!」といったアントニオ的な猪木な道だけが無造作になんとなく敷かれている(現在、4月11日午前2時。12時間前に東京都から正式に飲食店営業は20時までとしてほしいという自粛要請があった)。

 

でもまあ、しょうがない。どうやったって痛みはどこかが、誰かが引き受ける。皺を伸ばせば、どこかに皺が寄せられる。日本に暮らす1億2千万人が全員納得する答えなんてないし、もし誰かがその最適解を出しているのであればとっくに採用されている。むしろ、人口の4分の1相当の3,000万人の納得を導くことさえ困難で、そもそも状況が流動的かつ加速度的である以上、「解」そのものが流動的で曖昧模糊であるのも必然だ。

そして、それは飲食店だけを切り取って考えても同様のことが言えると思う。患者にそれぞれの診療と処方箋が必要であるように、それぞれの飲食店に症状と傾向と相性がある。

友人や知人や常連様から「こういうサービスがあるよ」とか「この助成金申請してみたら?」とか助言やアドバイスを多くお寄せいただき、ありがたいなあと思ったり、感嘆したり、ぐっときたりしました。近頃、御礼を申し上げてばかりだけど、改めて、皆様のご親切とお心遣いに厚く御礼申し上げます。

一方で、そうした多角度からの複数の進言をいただいたとしても、この窮地を脱するがための決定的な一手をなかなか見いだせないというのも厳然たる現実。今、業界には各方面から様々な救済案が提示されており、それについて僕は「大変なのは一部の業種だけじゃないのにすごいなあ」とその想いと行動力とスピード感につくづく恐縮なのだけど、広く伝播するためには汎用性のあるサービスでなければならず、また多店舗が発着できる大規模なプラットフォームでなければならない、逆に言えば、カバーの範囲を広げれば広げるほど、そのサービスがもたらす恩恵の濃度は薄まる。身近なところで例えるのであれば、「今、飲食店の活路はデリバリーだ、テイクアウトだ」として皆がこぞってこれに参画すると限られたシェアを多数で取り合うこととなり、リターンの幅は狭まれ、結局解決には至らない。そもそも、デリバリーやテイクアウトも個店によって向き不向きがある。

需要の先食いやクラウドファンディングキャッシュフローを考えれば有効なのは間違いない。けれど、それは、①事態が比較的早期に解決し、②社会の動きや流れも特に変わらず(人々はZOOMからまた居酒屋に戻る)、③そもそもお店の営業が継続しており、④そしてお客様の消費志向も減退していない、という4つの要件は少なくとも必要であるように思える。自店(というか僕)の場合で言えば、③の「収束した時にそもそもお店はまだあるのか」が気になってしまい、クラウドファンディングには踏み切れなかった。確かに先食いすることによって今月の家賃は払えるかもしれない、でもそれだけでは来月は払えない。④も切実だ。お店はなんとか持ちこたえたとしても、その時にゲスト側に余裕がなければ結局今の状況が続くことになる。飲食店は料理を出すから成り立つのではなく、料理を注文してくれる人がいるから成り立つのであり、現時点で特に経済的影響を受けていない方々の消費者心理が今後落ち込めば、その時はきっちり大恐慌で、ずっぽり乱世だ。この先のステージはその世界であり、普通にありうるんじゃないかと思う。

結論として僕が思ったのは、「結局、自分でどうにかするしかない」ということ。自店の症状と傾向と相性を精査すれば精査するほどその結論は確固たるものとなる。その第一の矢が「八百屋化」であり(デリバリー、ではなく)、第二の矢が「5,000円券を配る」(集める、ではなく)だった。生き延びるためにこれからあと18本くらいの矢を放つつもりだけど、この残り18本は第一の矢と第二の矢を土台としている。

僕個人はそれが自店にとっての最良であると考えたのけど、そうした結論(第一と第二の矢)に至ったのは広く皆様の助言・進言・アドバイスがあったからこそです。その一つ一つを因数分解し、繋ぎ合わせ、掛け合わせたものであり、そういう意味では僕個人の経営判断ではなく、これから放つ全ては皆様からのお力添えを基礎とした総合的かつ総体的なアウトプットであり、感謝の形となります。


情報は「収集」だけしても仕方ない、また「評論」してもどうにもならない、

「編集」し、自分の行動に落とし込むことで初めて意味を成すのだと思う。飲食店は両手両足もがれているのだから、とにかく考え続けるしかない、知恵を絞り続けるしかない。


まあ、一か月後には収集も評論も編集もへったくれもなく、店そのものが綺麗さっぱりなくなってる可能性だって勿論あるけれど、「矢」はまだたくさんあり、「弓」(店)もまた元気です。なんでかわからないけども、俺自身も心身ともに良好。