Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

商売不繁盛論ならびに路地裏経済論「コロナウイルス編」⑤

2月17日週は元々4件の団体の予約が入っていたが、1件キャンセルとなり、残り3件。逆に言えば、週初めの時点でまだこの3件については特に変更の知らせはなかった。複雑な気持ちを抱きながらも「直前のキャンセルも当然ありうるよな」と戦線恐々していたのだけど、結局、予定通り、宴会は行われた。まずはいただいていた予約をちゃんと対応できたこと(当たり前なのだけど)に安堵した。

 

一方、営業外では焦点が定まらない、曖昧で、落ち着かない一週間だった。この時点ではまだ、

 


「自店が通常、営業スタンスとして、普段使いよりも「貸切/団体利用」にフォーカスして訴求し、その文化をせっせと積み上げてきてしまったことがより事態を深刻にしている。そのスタンスは自分なりの“選択と集中
だったのだけど、それが今回思いっきり跳ね返ってくることになった。『コロナウイルス編①』より。

 

といった心地で、3月1日現在のような状態に全体が陥っているとも思っていなかったので、3月の営業をどう考えるべきか要領を得ないまま逡巡した。一点突破でぶれずに「貸切/団体利用」を推していくのはまずあり得ない、舵を切るべきなのは間違いないのだけど、どう切るか。どこに切るか。中途半端なことをしても付け焼刃であって、さしたる効果は見込めない、では大胆な値下げに走るか、否、そんなことしても体力的にも経費的にも消耗するだけ、そもそも「集客」自体が適切かどうかもわからない。といった具合で、「ああ、これはもはや俺の頭の中が感染しちゃってるわ」という診断を自ら下した。


まずは「情報」。お店側もゲスト側も近隣がどう動いているのか、全体がどう動いてるのかの把握。ランチに来てくれるお客さんに会社の様子を聞く、ピーク時の他店の動きを調査する、業者さんに売上の推移を確認する、スタッフにSNS界隈の動きを教えてもらう、飲食店同士で情報交換する、簡単なことだし、当たり前のことなんだけど、直接関係しないようなことを意識的に取り入れながら、視野が自店のことだけに集中しないように集中した。

 

次に「断捨離」。と言うと、ちょっと強い表現になってしまうけれど、これを機に「とりあえず一応残しておこう」と思っていたあれこれをいったん切り離してみることにした。勿論、日頃から有効でない経費は削ぐようにしているけれど、こうした極端なことが起こると普段さして気にしてないようなこと、当たり前だと思っていたことにも目が届くようになる。これはこれでいい機会だろうということで、諸々、断捨離した。「情報」と「断捨離」、この2点だけである程度スッキリする。そして、これはたまたま幸いなことに切り離したものに買い手がついたりして、うまく循環するケースもあった。

 

そうこうしているうちにAさんの回答期限、2月22日が近づいてきた。正直、Aさんがどう決断するか見当がついていなかったのだけど、心構えとしては「見送られる」つもりでいた。でないと、ちょっと切り替えが追いつきそうにない。

 

Aさんは期日の前日に連絡をくれた。回答は、

 

「あれから自分のことを色々考えて、ジャーニー×ジャーニーで働きたいと思い、連絡させていただきました!」


だった。

 

一週間、視界を覆っていた濃厚な霧が後退していく感があった。

 


舵は切る。けれど、縮小路線はない。