Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

あかねの「将来の不安」への冒険-香港ラウンド後編-

香港の中心部で本格中華を堪能したのち、九龍に移動。日本で言うところの六本木というか、豊洲というか、それをどちらも兼ね備えたかのような九龍。惜しみないセレブリティが惜しみなく溢れていた。

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僕たちをアテンドしてくれた友人はこのエリアに住んでいる。そのため、普通は立ち入れないマンションの敷地にも入ることができた。香港の夜景を余すところなく独占できたのも彼のおかげだ。

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そして、初日のハイライト。この九龍の一角にある「リッツカールトン」へと向かう。僕は一度だけ六本木にあるリッツカールトンのバーに連れて行ってもらったことがあるのだけど、それはまあラグジュアリーでして、超一流たちが醸し出す超一流の静寂の中で、アラブの王族のような方々が葉巻をくゆらせてるわけです。香港もそんな感じかと思いきや、

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 と、意外とカジュアル。このオゾンというバーは最上階の118階にあるのだけど、下の階にもバーがあるようで、そっちのほうはもうちょっと落ち着いたラウンジだそう。


しかし、まあ、ゴージャス。

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そして、まあ、浮く。

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けれど、あかねにしても、僕にしても、こういうラグジュアリーな世界とは無縁で過ごしてきたので、いい機会だった。カクテル一杯に3,500円だなんて、派手に羽目を外さない限り、手が届かない。


そして、翌朝。占い大国「香港」の総本山、黄大仙(ウォンタイシン)へ。

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これまた、あかねにしても、僕にしても、占いだとかの世界とは無縁なのだけど、これはこれでいい機会だと思い立った。あかねも24歳というムーディーな年齢。将来に対して不安の一つや二つあるのは当たり前。

自分は何をしたいのか、

自分らしさとは何か、

自分はどういう人間になりたいのか、

わりと真面目に生きてれば、誰もが通る青春の門。そして、多くの人がくぐれないまま右往左往する青春の門。僕自身もそんな人間の一人で、あーでもない、こーでもないとうろうろしながら、そういう漂流もまた一興、と自分の都合のいいように解釈してるわけだけど、それをあかねに伝えるのはなかなかに難しい。あかねは確固たる「ピンとくるもの」を強く求めている。僕の説法はあかねにあまり響かないし、仕事は仕事であって、確固たる「ピンとくるもの」には該当しないようなので、ここはひとつ、プロの見立てと意見を聞いてみようじゃないか、ということで占い師を訪ねてみた次第だ。

 

香港人と「占い」の結びつきは強く、その中でも道教寺院である「黄大仙」は人々に厚く信仰され、毎年300万人が参拝に訪れると言われている。

週末ということもあってか、この日も境内はごった返していた。

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香港スタイルの参拝に戸惑いながらも、見よう見まねで手順を進めていく。

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どこか心細げだが、できるだけ忠実に。

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この竹筒を振って、出てきた棒に記載された数字をメモする。

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その数字を持って、占いコーナーへ。何軒も並んでいるので迷うところだが、どの占い師を選ぶかはインスピレーションだろう。色々覗いてみた結果、

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日本語がわかり、かつ、ミーハー感のない(日本の芸能人との写真などが軒先に飾られていない)地味めの占い師を選んだ(営業妨害になりかねないので、どの占い師に占ってもらったかは特定しないようにする)。

その占い師に先程の数字を渡す。占ってもらう内容はずばり、「恋愛」と「仕事」だ。

番号と生年月日に沿って、占い師は日本で言うところの「おみくじ」のようなものを取り出した。このおみくじにあかねの向こう一年が書かれているというわけだ。


ちなみに、このおみくじが指し示すのは向こう一年であり、それより先のことはわからない。「ソレヨリサキノコトハワカラナイネ」と占い師は言う。「モットサキノコトハ手相ヲミナイトワカラナイネ」。勿論、手相を見てもらうためには別途料金がかかるし、その額はわりと跳ね上がる。なるほど、ミライにはお金がかかる。


とりあえずは向こう一年で十分だろうということで、まずは「恋愛」。

 

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当然、何が書いてあるか、何を意味しているのかはわからないので、それを占い師に読み解いてもらう。「これはこれを意味してて、あれはあれを指していて、つまりはこういうことで、スナワチ…」。



「ヨクナル」と占い師は言った。


言語の壁と、理解への努力の問題だとは思うけれど、説明と経緯はよくわからなかったが、最終的には「良くなる」と。


続いて、「仕事」。

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昔、何とかっていう王様がいて、争いが絶えなかったのだけど、どうのこうので、あああだこうだで、最終的には丸くおさまって、つまり、まあ色々あるけれども…


「ヨクナル」と。


なんならこの占い師さん、おみくじに平仮名で「これから前よりよくなる」って書いてくれてますからね。


帰路、「何だか物足りないですね」と茜がぼやくのに対して、「もっと詳しく知りたいのならお金を積みなさいってことだ」と世知辛いコメントをすると、「世知辛いですね」と彼女は答えた。


「あかね、恋愛は?」

「良くなる」

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「じゃあ、仕事は?」


「良くなる」

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「なら、いいじゃないか」



「そうですね…」



この日も精力的に香港を観光した。飲茶を食べ、エッグタルトを食べ、タイマッサージを受け、アルゼンチンステーキを食べ、ネパール人がメキシコ料理を出すパブでベルギービールヒューガルデンを飲んだ。飲茶以外は全て外来種だ。けれども、この出鱈目な無国籍感こそが香港の本質であると思うし、それを味わうのが香港の醍醐味なのだと感じた。


飲んだ帰りに交差点でインド人同士が何やら楽し気に話していた。その様子を見て、あかねは確固たる「ピンとくるもの」の一端を垣間見たようだ。作家村上春樹神宮球場で野球観戦をしている時、ヤクルトスワローズのデイブ・ヒルトン選手が二塁打を打つのを見て、「よし、小説を書こう」と思い立ったと言う。何がどこでどうなるか、というのはわからないものだ。



彼女がインド人から得た着想が今後どのように冒険していくかは定かではないし、それはまた別の物語だけども、挫けないかぎり、きっといい方向に向かうだろう。



「これから前より良くなる」だろう。

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