あかねは去年の春からJ×Jで働いている。ジョインから数ヶ月経つが、このブログではほとんど触れたことがない。あかねがどんな女の子で、どんな経緯でJ×Jで働くことになったのか、そして、どのような日々をJ×Jで過ごしているのか、それはまた改めて別の機会に詳しく書くことにするが、端的に言うなれば、とにかくファンスティックな女の子で、ファンタスティックな経緯を経て、ファンタスティックな日々を過ごしている。主体者の立場からすれば、それで苦労するところもあるけれど、それよりも楽しませてもらっている部分の方が多い。歩くファイナルファンタジー、僕はあかねのことをそう思っている。
今回はそんな彼女の冒険の一部をトリミングし、先んじて綴ることにする。が、前もって言うと、この物語に特にオチはない。ぬるい温度感の中、ぬるいリズムで進む。最後まで読み終えたとしても、ぬるい読後感しかないのだけど、その「ぬるさ」こそ、この話のポイントだし、あかねらしさでもある。
「海外/世界」、「旅/旅行」をテーマにしている以上、年に一回くらいは海外に行きたいと思っている。プライベートとは別に、店として、社員旅行のような感覚で行きたい(この先人数が増えたらわからないけれど、今のうちは航空券代くらいは工面して)。年末戦線が過ぎると、多くの飲食店はしばらく閑散期に入る。事業所立地の店舗はとりわけ暇で、ましてや路地裏の店は悲惨だ。というわけで、去年は2月にタイに行ったけれど、今年は1月の三連休を社員旅行にあてることにした。
行き先についてはいくつかの候補が上がる中、香港に決めた。予算は限られているので自然と近場になるし、香港には大学時代の友人がいる。時間もタイトなわけだし、自分たちで探索するよりも彼にコーディネートしてもらったほうがより有意義だ(バックパッカー魂は引き出しの奥に眠っている)。そして、何より、僕も茜も行ったことがない国、というのが香港を渡航先に選んだ一番の決め手だった。
6日の金曜日の営業を終えたのち、そのまま店に泊まり、7日の早朝のフライトで香港へ。到着後、市街地まで電車で移動し、友人と合流。予約しておいたホテルに荷物をおろし、香港観光へ。
まずは香港の名物とも言える雲呑麺。雲呑の中に海老がぎっしり詰まっている。
雲呑麺を食べたのち「ビールを飲もう」ということになって、バーへ。15時に雲呑麺、そして16時にバーでビール。このあたりの無軌道感がいかにも旅行らしくていい。
ビールが五臓六腑につたっていくのと同時に、全身から力が抜けていくのをありありと感じた。11月中旬から1月7日まで全力疾走で、ずっと気を張っていたけれど、この瞬間、散りばめられた電源を片っ端からオフにし、ガスの元栓を閉め、勢いよくシャッターを閉めた。
友人にはあちこち案内してもらったし、香港の魅力をたっぷり堪能させていただいた身でこう言うのも恐縮だが、この瞬間が今回の旅行の中で最も印象深い。全身を湯船につけた時に感じるような心からの安堵。
その後、改めて香港の市街地に繰り出す。まずは上からの百万ドルの夜景「ヴィクトリアピーク」。
ぶらぶらしたあとは、
香港の本格中華の数々。
青椒肉絲。
坦々麺。
この旅のMVF(Most Valuable Foods)はエビチリ。空前絶後。
ご満腹の、ご満悦。
と、ここまでは全くの食道楽。ひたすらの食い倒れ。
が、全ての物事に表と裏があるように、この笑顔の裏にも秘めれるものがある。先日、あかねも24歳というわりとムーディーな年齢となり、間もなく社会人3年目を迎える。世の理も朧げに見えてきて、今まで気にしてこなかったことも次第にリアリスティックな輪郭を帯び始めた。こうした時、
自分は何をしたいのか、
自分らしさとは何か、
自分はどういう人になりたいのか、
という門が立ちはだかる。
その青春の門をノックするために、彼女は海を越えた。
黄大仙(ウォンタイシン)。占い大国香港の総本山。
明日、我々はここに向かう。