2008年から2010年までの間、千葉の実家で独り暮らしをしていた。チェーン店の飲食店とレストランでのバイトを掛け持ちしながら、世界一周のための資金を貯めていた頃で、料理をやり始めた時期に重なる(それまではカレーライスすらまともに作れなかった)。夕方から朝まで働いて、早朝、家に戻る前にファミレスに入り、調理師、フードコーディネーターの資格の知識、加え、料理そのものや海外の料理と食文化について独学で勉強し、帰宅後、自作でつまみを作り、ビールを飲みながら「はなまるマーケット」の料理コーナーを見て寝る、そんな生活だった。
休みの日には友人を招いて、覚えたての料理、試したい料理を次から次へと作り、次から次へと試食してもらった。料理を作ることが何よりも楽しかったし、何よりもピュアだった。
こんな感じで作り、
こんな感じで飲んでいた。
その自習のための宅飲みに頻繁に出入りしていた友人の中に「やっぴー」という男がいた。中学からの同級生で、高校・大学時代はたまに会う程度だったが、このホームパーティー時代に加速度的に飲むようになった。
自分が作る料理の中で、彼がとりわけ気に入ったのが「カオマンガイ」だった。他の友人たちもこれを好んでくれて、「うちで飲むときの〆はカオマンガイ」、そんなような感じで我が家の定番となっていった。
僕自身の好物であったことから、どうにかこのカオマンガイを昇華できないかと苦心した。オーセンティックに寄せるのではなく、オリジナリティを出したかったのでいろんなソースを試したし、いろんなパターンを考えた。
当時のカオマンガイ。
あの頃から5年、当時の試行錯誤が今、ランチ・ディナーともにお出ししているカオマンガイに繋がっている。
そして、2015年10月。やっぴーが結婚式を挙げた。
式の一ヶ月前、新婦からのご依頼いただき、お店でやっぴーにあてたサプライズ動画を撮影。
ついでに、動画を見て泣く新郎。
撮影の時、〆にカオマンガイを出して、あの頃を思い返した。実家の台所がお店の厨房に変わったが、食べている面々も、食べている様子も5年前と何ら変わらない。けれど、右も左もわからないまま夢中になって作っていたものを今、お店で出していると思うと感慨は深くなる。
オープン当初は正直に言って、まだばらつきがあったと思う。やはり単純に作るのと、オペレーションに乗せて提供するのとはわけが違い、思うようにいかない部分があった。今では少し落ち着いてきて一定の水準を保てているが、まだまだ改善の余地はあると思うし、もっともっと精度高く、突きつめていきたいと思っている。
3日前、
泥酔したやっぴーが閉店後にご来店。ビールを飲んで、カオマンガイを食べて帰った。
そして昨夜、
泥酔した新婦が閉店後にご来店。シードルを飲んで、カオマンガイを食べて帰った。
今のカオマンガイ。
新郎新婦も、カオマンガイも、冒険は続いていく。
末永くお幸せにね。
以上、僕からの結婚の祝福と、カオマンガイの宣伝。