Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

TOKYO都台東区アキバ系路地裏経済論②

飲食のつながりの中でも楽観的な経営者と悲観的な経営者とに別れる。


もともと税抜き表示をしている店にとっては「×0.08を×0.1にするだけだからさー」と言う。そう言ってしまえばそうなのだけど、軽減税率の絡みがあるのでそう安直にもなれない。

今まで税抜き100円のものを仕入れたとき8円の消費税を払い、税抜き200円で売った場合、16円の消費税をゲストから預かることになる。この差額、16円-8円の「8円」を事業主が税務署に納めなければならないのだが、軽減税率が適用されることによって、仕入れは8%のまま、けれど納税は10%になるので、このケースで行くと20円-8円となり、納税は12円となる(実際には仕入れだけではなくその他の経費も絡んでくるので一概には言えないが)。

それにしたって、事実上売上があがるんだからいいじゃん、となるのだけど、それはあくまで増税後も来客数と客単価に変化がない場合だ。これに加え、売るものが弁当やケータリングの場合、8%で販売することになる。この場合、従来のままで変わりないように思えるが、実際には包材や各備品、各経費に関しては実質値上がりすることになるので、提供価格を変えなければ単純に利幅は狭まる。


このように増税の影響度はケースバイケースではあるが、自店に限って言えば、僕は増税の煽りをモロに受けるのではないかと思っている。その煽りをどうすれば抑えられるか、どんな工夫が必要なのかを考え、対策を講じていかなければならない。

というのを前々から考えていて、10月以降、諸々の変更を施していくのだけど、それについてはまた別途別記事で紹介していくとして、この消費税10%をもうちょっと深堀していきたい。

消費税10%とともに令和元年10月より変わるもの、「最低賃金」。最低賃金はわりと頻繁に改訂されてるし、消費税が上がるタイミングに合わせて最低賃金が上がるのも自然と言えば自然。でもこれはあくまでボトムの話であって、消費者全体に恩恵のある話ではない。

これとは別に毎年、春季労使交渉(春闘)がある。春闘とは毎年2月頃に賃金のベースアップ(ベア)や労働条件の改善を労働組合側が経営陣に交渉する労働運動のこと。安部政権は2013年以降、消費税増税を見据え、法人税の減税と同時に毎年のように賃上げ請求を経済界に訴えている。去年においては「3%」という具体的な数字まで提示したが(実際は2.54%だった)、本来、労使に委ねられる賃上げ交渉を政府が介入・牽引することは「官製春闘」との批判がある。今年に関しては数値目標の設定は避けたが、賃上げ請求への期待に変わりはなく、結果的には2.46%に着地。例年2%未満というのがほとんどだっただけに、去年は下回るにせよ、悪くない数字なのだろう。

 

要は、「社長さん、法人税を下げますよ」→「そのかわり、従業員さんの給料に反映させてね」→「従業員の皆さんはこのベアをもとに消費税10%に備えて」、という話で、目標値には届いてないにせよ、流れとしてはそうなっているし、数字的にも動いている。そもそもそうでないと消費者は単純に2%の負荷を単純に背負うことになる。

けどまあ、これもまた大企業の話で路地裏の飲食店にはあまり関係のない話だ(もっともこうした循環の一部に「じゃあ今度の打ち上げはJ×Jにするか」という話が少しでも紛れればそれは幸いなことなのだけど)。安倍政権の経済政策を批評する際、よく大企業優遇が取りざたされ、もっと中小やスタートアップにウェイトを寄せないと日本はよくならない、と言うし、「そうだそうだ!」とも思うけれど、僕個人が前提として思うのは「仮にどうであれ、よりしなやかにたくましい事業体(店)になるしかい」、でしかない。店がどんな窮地に陥ろうとも、安倍政権も経団連もましてや税務署は助けてくれない。当たり前だ。むしろ税金の取りっぱぐれを少しでもなくそうと首を絞められているような気がしてならない。

 

もっと言えば、自店は中小でもないし、スタートアップですらない。ただのイチ飲食店だ。そうした最弱の存在に救いの手はないかと言うと、実はあながちそうでもない。税金は事業主にとって確かに荒々しいものではあるのだけど、一方で時に筋道を示す。次はそうしたところに触れていきたい。