Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編⑨総括

結局、スムーズに明け渡しとはいかず、その後も細かい修正や追加工事の対応に追われた。このあたりも内装業ではよくあることだ。けれど、多少工期が伸びたにせよ、最終局面でクライアントと元請け/下請けが話をこじらすことなく、うまくまとまったことに多いに安堵した。ここで揉めると全てが台無しになる。

 

ハヤカワは四六時中現場にいた。孫請けとして入り、①解体〜⑬家具搬入まで基本的に全ての工程に立ち会っている。そこにオーナーさん(クライアント)も来る。当然、ここをこうしてほしい、ああしてほしいというリクエストは直接ハヤカワに伝えられるのだけど、僕らが勝手に工事内容をいじることはできない。あくまで僕らは元請け、下請けからの指示に遂行する孫請けなのだ。もしオーナーさんが何かを求めるのであれば、元請けに伝えなければならない(一番現場をよく知るハヤカワにお願いしたいのがオーナーさんとしての自然な心情だろう)。が、元請け、下請けは基本、現場にいない。ここに難しさがある、そしてこれもまたよくあることだ。

反対に一番の成果としては、とにもかくにもゼロからやりきったという部分にある。チームをまとめる側もそうだけども、チームに参加する側も最初は構える。けれど一度仕事を通してしまえばお互いになんとなくつかめるものだ。今回のこの銀座を通して培われたネットワークは当然、今後に活きてくるし、いざ新しいプロジェクトに取り組むとき下地ができた状態でスタートを切ることができる。


「自分的に一番、達成感がある部分はどこなの?」とハヤカワに聞いてみた。

 

「トイレですね」と即答が返ってきた。

「今回、一番厄介だったのがトイレなんです。壊してみたら色々問題が出てきてトイレの場所を変えざるをえない状況になってしまって…。で、新しい設置場所は勾配がとれなかったんです。そうなると床をあげるしかないんですけど、そうすると天井が低くなって圧迫感が出る。でも甘い傾斜だと下水が逆流してくる。これをどうにかできないか水道屋さんと知恵を絞って取り組めたのが一番エキサイティングでしたし、やってやった感ありますね。どうしてもパッと目につきやすい造作や塗装やクロスに目が行きがちなんですけど、こういう誰も気にしない部分、誰もが当たり前だと思っている部分に職人さん(水道屋さん)の匠が光るんですよね」

今回の件である程度お店作りの流れは理解できたつもりだし、多いに勉強になった。けれど内装そのもののことをあれこれ語ることはできない(今回のこの一連の記事はただの事実をただ並べているだけだ)。が、その話を聞いて、内装も面白いなあとしみじみと思った。

 

そして、トイレを眺めるハヤカワはとてもいい顔をしていた。

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置きっぱなしにされたインパクトとボールペンが少し胸を打つ。




 

 

 

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編⑧

⑫建具工事というのは「工作物に木製または金属製の建具等を取付ける工事」。サッシ、シャッター、自動ドアの取り付けなどがこれにあたる。最後の難関となったのは入り口ドアの取り付け。寸法を測り、間違いなくピタっとはまるように設計されたドアを発注したのにも関わらず、いざ取り付けようとすると、どうしてもハマらない。業者さんに直してもらう時間的余裕もないので、もう自分でどうにかするしかない。

蝶番の場所などを工夫して調整を試みるも何度も失敗。

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であればと、取り付け部分を削ってスペースを作ってみる。この作業が大変だった…。

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何度もトライ&エラーを繰り返し、ようやくおさまった。ただドアがついただけにも関わらず、ドアが閉まった瞬間、心から歓喜した。このあと地上に出て(お店は地下1階)駐車場にて缶コーヒーで乾杯。たまらなく美味しかった。

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このようにして最後の難関を乗りきった。いよいよ大詰め。⑬家具の搬入。

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あとはクライアントに明け渡すのみ、となった。

 

 

 

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編⑦

「仕上げ工事」と一言で言ってもこれが意味する範囲は広い。仕上げ工事=内装工事と同じ意味合いで使われることも多々ある。


ここで言う仕上げ工事とはまさに内装を仕上げ、クライアントに明け渡しするための最終工事全般を指す。具体的には⑩塗装工事、⑪クロス張り、⑫建具工事にあたる。


⑩塗装は文字通り。今回はこうした塗装機も使用した。

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⑪次にクロス張り。クロスで大分店内の様子が変わる。

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壁際のクロス張りがなかなか難しい。

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また、朽ちていた階段の修繕も仕上げ工事の一部だ。

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こうして一気にお店が出来上がっていく。この局面になると細々とした雑用も増えてきて、僕やスタッフが手伝いに行くこともしばしば増えてきた(手伝えることが増えてくる)。

 

お手伝いしてくれたスタッフ碧くん(この動画はまだ初期の頃だけど)。

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飲食の営業が落ち着いたのち、オンボロの原付に乗って昭和通りをまっすぐ抜けて銀座まで向かう道中が意外とけっこう好きだった。勿論、飲食仕事のあとのそれは大変でもあったのだけれど、文化祭の準備のような独特なテンションの中、何か特別なことをしてるみたいで楽しかったのだと思う。

 

納期が差し迫る中、僕ら(というものおこがましいが)に最後に立ちはだかったのは⑫建具工事だった。ドアを取り付ける、そんなシンプルなことがここまで厄介なことだとは思いもよらなかった。

 

 

 

 

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編⑥

⑧造作工事。内装においてもっとも花形となる仕事になるのが造作。柱、梁などの構造部分以外の仕上げ工事、天井や床、階段、敷居などの室内装飾となる仕上げや下地を材料から組み立てる工事の総称、つまり言わゆる大工さんの領域だ。銀座のこの物件ではカウンター造作をメインに、付随して棚やドアなどを組んでいく。ここから徐々にお店がお店になっていく。

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⑨電気工事は電気屋さんを呼んで対応してもらった。合計で1週間くらい入ってもらった。今回の工事の中でもっとも予算がかかった部分だ。やはり、水道・電気などのインフラ系はどうしても費用が高くなる。

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各場所に電源コンセントを配置し、電源を供給する。電気機器及び照明器具に接続するとともに、この電気工事を通してエアコン設置やダクト工事へと展開する。

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他の厨房器具の搬入も始まる。

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そして、最終フェイズである「仕上げ工事」に移行していく。

 

 

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編⑤

結局、左官はハヤカワ自身が仕上げた。前の職場が社長と二人の二人三脚だったこともあってデザインオフィスでありながら、現場に出ることが多く、職人さんたちに混ざって自ら体を動かし施工に参加していたことあって、各工程全般に精通しているところがハヤカワの強みだ。

 

ここから④防水工事へと移行する。言葉のとおり、水の侵入を防ぐための工事だが、厨房など内部から客席への浸水を防ぐとともに、外部からの浸水を防ぐ。

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そして、その防水を守るための措置として、保護モルタル(コンクリート)を薄く被せる。

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この上に、実際の厨房レイアウトの縮尺を取っていく。

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次に、⑤配管工事。水道やガスなどのインフラを引き込んでいく。

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ケルトンの場合、こうしたインフラ部分からゼロから作り上げていくことになるが、居抜きの場合、水道や電気はいじらないことも多々あると思う。けれど、どうしてもいじりたい、いじらなきゃいけない場合はある程度のコストを覚悟しなければならない。こうした工事を行うには専門の資格が必要となり、自分たちではどうにもならない。居抜きで安く抑えようとしても、ここを変えようとすると予算は跳ね上がる。自分がお店を始めた時はここの認識が甘かった(結局、自店は何もいじらないことにしたのだけど)。

 

そして、⑤土間打ち。これは厨房の床を作る工事。この工程を経ることによって、厨房内で水を流せるようにできる(J×Jのようなキッチンだと水は流せない)。次に⑥軸組み。これは言わば側壁の下地工事で、 配線・配管を壁内に収納し外部から見えないようにするための措置。

 
この①〜⑥の工程を経て、基礎及び土台作りの完成となる。


ここから先の工程でようやく、この店のこの店らしさが施されていく。

 

 

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編④

というわけでのっけから出鼻を挫かれ、せっかくのGWも解消されたわけだけど、①解体の工程はクリアし、②現場調査へと進み、まっさらな状態(スケルトン)から厨房と客席を実際的にどう区画するかを決定した。

そして、③左官工事。

左官とは建築物の壁を塗る職人のことを指し、土やセメントなどを水で練ったものをコテで塗り、漆喰(しっくい)などで表面を美しく仕上げるのが主な仕事になる。けれど、同時にお店の基礎や土台となるレンガやブロックを積んだり、タイル張りをしたりなど「下地作り」をするのも広義に左官の仕事に含まれ、ここで言う③左官工事というのはまさに後者にあたる。お店を作っていく上での「基礎作り」だ。

 

この銀座の物件を取り組むにあたっては、各工程にそれぞれの職人さんを手配している。電気工事においては電気屋さんを呼び、水道工事においては水道屋さんを呼んでいるように、左官工事は左官屋さんに担ってもらう。ハヤカワはそれぞれの工事に立ち会いながらディレクションし、全体のスケジュールをチェックする「施工管理」が主な仕事になる。通常、各工務店や内装業者は自分たちのチームやネットワークを持っていて、ある程度気心の知れた者同士でお店作りに取り組むことになるが、ハヤカワ及びJ×Jにとっては今回が初案件となり、すでに出来上がっているチームというのはなく、この銀座の物件に合わせて初めて編成されたチームで挑むことになる。勿論、電気屋さんはハヤカワの元々の友人であったり、水道屋さんは前の職場からの知り合いだったりするのだけど、中には初対面となる業者さんもいた。左官屋さんはまさにその初めての業者だった。

 

何事においてもそうだけども、仕事のクオリティやスピード感は実際に一緒にやってみないとなかなかわからないものだ。そうした文脈において、ハヤカワはもともとそのあたりのことを心配していたが、左官屋さんに関しては不安が的中してしまった。詳しくは割愛するけれど、シンプルに言うなれば、左官屋さんの仕事はハヤカワのイメージ通りではなかった。結果、左官の仕事は業者さんを外し、ハヤカワが自ら対応することになった。これによって①の解体に続き、③の左官も当初の予定よりも大幅な遅れをとることになった。

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このようにしてお店の基礎が出来上がる。ここの寸法を間違えると全ての計画が崩れてしまうので慎重にならなければならない。

 

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編③

一般的にお店作りというのは下記のような流れで進められる。細かく言えばもっと色々あるし、勿論、物件によって必要な工程とタスクは変わるけれど、

①解体工事→
②現場調査→
左官工事→
④防水工事→
⑤配管工事→
⑥土間打ち→
⑦軸組み→
⑧造作工事→
⑨電気工事→
⑩塗装(仕上げ工事)→
⑪クロス(仕上げ工事)→
⑫建具工事(仕上げ工事)→
⑬家具搬入→

こうした各段階を経て、お店は出来上がっていく。

前回の記事で書いたように、今回の案件についてはまず最初のステップである①「解体」で予想以上の時間と労力を要した。勿論、「解体」にも事前に見積もりが組まれており、「これぐらいの規模と内容の解体であれば、これぐらいの人数を投入して、これぐらいの時間をかけて、これぐらいの金額で壊しましょう」という計画に基づいて実行される。ところが今回のように、その算段に差異があった場合が厄介だ。

「店を一つ壊したらその裏からもう一つ店が出てきましたわ。お店2つ分、取り壊したようなものです」


と内装担当のハヤカワは言ったけれど、こうした場合、その超過した仕事を誰が負うのかという話になる。「というわけで、3日で終えられるはずだった仕事が6日かかっちゃいました。その3日分、追加で請求させてください」と言って、すんなり受理してくれればよいけれど、そううまくはいかないパターンも少なくない。クライアントからすればその3日分が本当に正当なものなのかどうかを見極めなければならないし、仮に正当なものだったとしても誰がその負担を負うのか。オーナーなのか、斡旋した元請けなのか、見積もりを出した下請けになのか、または孫請けとして現場に立っている我々なのか。

規模が大きくなればなるほど、関わる人間が多くなればなるほど、このあたりのせめぎあいがナイーブなものになる。そして、それは勿論、「解体」の工程だけで発生する問題ではなく(むしろ解体から想定と大きくずれこむのは珍しいケースではなかろうか)、①〜⑬の全てのセクションで発生しうることで、ゆえ、全てのセクションにおいて集中して見積もりを精査していかなければならない。リスクをとって見積もりに十分な余地を残すことは業者にとって必要なことだけれども、当然、金額が高くなって受注から自ら遠のくことにもなりかねないし、甘い見積もりであればその分、何かあった時の対応の幅も狭まるし、そもそも対応しようにも対応のしようがない、なんてこともありうる。

 

自分は普段、「見積もり」という言葉を使うことの少ない環境にいるけれど、内装業を通じてその大切さを思い知らされることになった。資金力が限られている個人事業主が個人店を出店する場合、見積もりも何も「内装にかけられるお金はこれしかありません」という状態でスタートすることが大半で、極めて切実なわけだけども、同時に内装業者にとっても切実で、ひとたびこれを誤れば自分たちの仕事がまるっきり赤になりかねない。かと言って他社がより安い見積もりを出せばクライアントの気持ちがそちらに傾くのも摂理。内装業においてまず問われるのは見積力であるように思う。

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【J×Jの内装事業/DIO】銀座編②

お店作りをする上でのスタートラインはその物件が「居抜き」か「スケルトン」であるかどうかで別れる。「居抜き」というのは前テナントの設備や内装を残したまま賃貸借されることであり、それに対して「スケルトン」というのは店舗内装設備のない状態のことを言う。建物を支える柱、梁、床などの躯体のみで構成されている状態で、要するにこの場合、お店をゼロから作ることになる。

基本的には当然、スケルトンからお店を作る方が費用がかかる。ざっくり言うなれば都内でスケルトンからお店を作るのに1000万かかるとしたら、居抜きであれば300〜400万程度で済む、そんなイメージだ(勿論、規模にもよるし、どこまで作りこむかにもよるけれど)。Journey×Journeyは本店も2号店も居抜き物件、契約金や厨房器具などを除いてシンプルに「内装」だけにフォーカスするなれば両店とも100万程度におさまっている。

今回の銀座の物件は「スケルトン」にあたる。僕はてっきり居抜き物件をやるのだと思っていたけれど、「今回、スケルトンからですよ」と聞かされてちょっとびっくりした。マジすか、と。がっつりやないかい。

しかも、「スケルトンからスタート」ではなく、「居抜きをスケルトンにするところからスタート」となる。つまり最初の仕事は「解体」だ。壊して、壊して、壊しまくる。

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破壊、

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破壊、

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そして、破壊。

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そして…

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本来であればもっとさくっと終わるはずの解体作業が思った以上に伸びてしまった。壊したところからまたゴミが出てくるという有様で、ハヤカワいわく「一つお店を壊したあとにまた新しいお店が出てきて2つ壊したようなもの」とのこと。前の業者さんがかなり杜撰だった模様。率直に言って、廃棄物を壁の裏側に隠蔽していた、それぐらいの勢いなのであります。ゴミを出すだけで何十万もかかってますからねー、大変なことです。

 

というわけで、序盤からいきなりの想定外。

 

ここから受難の道が続きます。

 

 

 

 

 

【J×Jの内装事業/DIO】銀座編①

群馬の施工が終わり、GWまでは自社案件はなく、人工の仕事に取り掛かることになるかなと思っていた矢先に、重量級の依頼が飛び込んできた。

 

虎ノ門にあるお店(カジュアルフレンチの洋食屋)が立ち退きにあって、銀座に移転する。自分が対応できればいいが、ちょっと手が回らないのでハヤカワ、ここの施工やってみないか?」ということだった。

声をかけてくれたのはハヤカワの元の職場関係の方で、プランニングオフィスを経営している。元請け業者は別にいて、この方は下請けにあたり、そこから来た話なので自分たちはいわゆる「孫請け」となる。とはいえ、部分的に任されるのではなく、施工そのものはまるっと対応することになる。スケルトン(骨組みの状態)からの挑戦だ。

 

場所が銀座と近場であること、20坪くらいの大きさで、技術的にもそれほど難易度は高くない、現実的に十分対応できる、というのが先方の見立てだったし、ハヤカワの所感でもあった。ただし動かさなければならない金額が大きい。いわゆるキャッシュフローの問題で、最終的な入金があるまで、自分たちの資金だけで施工を続ける/完了させる体力があるかどうかが論点だった。

 

お金の流れとしては、

施工が完了する→クライアントへと明け渡す→クライアントが元請けに支払う→元請けが下請けに支払う→下請けが孫請け(僕ら)に支払う、という図式になる。前金、半金という形で先に施工に必要な金額が入ってくればよいけれど、それはケースバイケースであり、今回は前金は見込めない状況だった。


となると、孫請けである自分たちがそこから職人さんと手配したり、業者さんを呼んだ場合、彼らへの支払いサイトがどうなっているのか、あるいはどう調整できるかを事前に確認する必要がある。最終的な入金まで待ってもらえるか、月末締め翌月10日か25日か、末日か。もしくは即金、または前金が必要なのか。

 

今回の話を受けるかどうかの争点はその点だったが、結果的に「先出しはこのくらいの金額でおさまるだろう」とハヤカワは見当し、僕としても「それであればGO」ということになった。

 

想定通りに物事は進まない、という想定を飛び越え、ここから銀座との死闘が始まる。

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死闘が始まる。

 

【J×Jの内装事業/DIO】施工事例①「暮らす和食のぼる」様@群馬・高崎vol5

「デザイン」+「設計」+「ロゴ制作」のご依頼をいただいたことで、元々提案していた原案を基にもっと鮮明に、より具体的にイメージを膨らませる作業に移った。そしてそのイメージで間違いないかというのをクライアント様に電話やLINEで確認いただくとともに、そのイメージを実際に施工できるかどうかを施工会社と連絡を取り合う日々だった。この段階においては、僕にできることは皆無に等しく、ハヤカワが一手に担う。スマホ上のやりとりで完結するという意味合いでは聞こえはいいが、この案件に取り組みつつ、一方で他社様の現場をフォローしながら、だったので常に電話が取れる状況にあらず、これはこれで困難な作業になった。けれど、結局はどうやろうが、どうしようがその状況に伴う「困難」はある。どう楽するか、どうしたら楽できるか、というのも仕事における重要な観点にはなるが、それよりもその「困難」とどうすればうまく付き合えるか、向き合えるかを考えたほうが建設的で、生産的なように思える。

そうした状況の中、工事は着々と進んでいった。例えばカウンター工事。既存のカウンターの一部を切り、厨房との出入り口を新設し、別の場所に新たにカウンターを設置する。

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僕自身も経験したことではあるけれど、今までなかった場所に新たにカウンターが出来るということはそこに新しい世界が浮かび上がるということ。ここから一体どんなコミュニケーションと関係性が紡がれるのだろうとワクワクする。

次に天井工事。

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天井には縦に梁を通すことにした。こうすることで店内の奥行きをもたらすとともに、立体感を演出する。そして天井からそのまま奥の壁にも梁をつなげる。

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このようにしてスペースを作り、小物を置いたり、酒瓶を置いたりなど、空間活用と雰囲気作り、そしてアイテムのアピールの場とする。

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照明の使い方も相まって、それまで平坦だった空間がシックに広がる。

そして、外観。クライアント様が強くこだわっていたのが「暖簾」。白い無垢な暖簾をスペースいっぱいに広げたいとのことだった。外観を演出にするにあたり、暖簾を自由に可動できる意匠にするという提案もさせていただきつつ、最終的には原案のとおり真っ白な暖簾を全面的に押しだすということで着地。エレガントな仕上がりとなった。

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ロゴについてはいくつか提示したパターンの中で下記が採用された。

 

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「のぼる」の「の」の部分に群馬を象徴する「山々」のイメージを投影している。

そうして、4月19日の大安・満月の日にレセプション。そして翌週にはグランドオープンとなった。

僕たちはちょっと間隔をあけてGWに初訪問。

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本当はオーナー様二人とハヤカワと僕の4人で記念撮影といきたかったけれど、店内大分混みあってまして、断念。断念ではあるけれど、僕らにとってはそれがこれ以上ない記念となりました。


「暮らす和食 のぼる」様、改めましてありがとうございました。そして、おめでとうございます。