一般的にお店作りというのは下記のような流れで進められる。細かく言えばもっと色々あるし、勿論、物件によって必要な工程とタスクは変わるけれど、
①解体工事→
②現場調査→
③左官工事→
④防水工事→
⑤配管工事→
⑥土間打ち→
⑦軸組み→
⑧造作工事→
⑨電気工事→
⑩塗装(仕上げ工事)→
⑪クロス(仕上げ工事)→
⑫建具工事(仕上げ工事)→
⑬家具搬入→
こうした各段階を経て、お店は出来上がっていく。
前回の記事で書いたように、今回の案件についてはまず最初のステップである①「解体」で予想以上の時間と労力を要した。勿論、「解体」にも事前に見積もりが組まれており、「これぐらいの規模と内容の解体であれば、これぐらいの人数を投入して、これぐらいの時間をかけて、これぐらいの金額で壊しましょう」という計画に基づいて実行される。ところが今回のように、その算段に差異があった場合が厄介だ。
「店を一つ壊したらその裏からもう一つ店が出てきましたわ。お店2つ分、取り壊したようなものです」
と内装担当のハヤカワは言ったけれど、こうした場合、その超過した仕事を誰が負うのかという話になる。「というわけで、3日で終えられるはずだった仕事が6日かかっちゃいました。その3日分、追加で請求させてください」と言って、すんなり受理してくれればよいけれど、そううまくはいかないパターンも少なくない。クライアントからすればその3日分が本当に正当なものなのかどうかを見極めなければならないし、仮に正当なものだったとしても誰がその負担を負うのか。オーナーなのか、斡旋した元請けなのか、見積もりを出した下請けになのか、または孫請けとして現場に立っている我々なのか。
規模が大きくなればなるほど、関わる人間が多くなればなるほど、このあたりのせめぎあいがナイーブなものになる。そして、それは勿論、「解体」の工程だけで発生する問題ではなく(むしろ解体から想定と大きくずれこむのは珍しいケースではなかろうか)、①〜⑬の全てのセクションで発生しうることで、ゆえ、全てのセクションにおいて集中して見積もりを精査していかなければならない。リスクをとって見積もりに十分な余地を残すことは業者にとって必要なことだけれども、当然、金額が高くなって受注から自ら遠のくことにもなりかねないし、甘い見積もりであればその分、何かあった時の対応の幅も狭まるし、そもそも対応しようにも対応のしようがない、なんてこともありうる。
自分は普段、「見積もり」という言葉を使うことの少ない環境にいるけれど、内装業を通じてその大切さを思い知らされることになった。資金力が限られている個人事業主が個人店を出店する場合、見積もりも何も「内装にかけられるお金はこれしかありません」という状態でスタートすることが大半で、極めて切実なわけだけども、同時に内装業者にとっても切実で、ひとたびこれを誤れば自分たちの仕事がまるっきり赤になりかねない。かと言って他社がより安い見積もりを出せばクライアントの気持ちがそちらに傾くのも摂理。内装業においてまず問われるのは見積力であるように思う。