Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×Jの冒険-2015年4月⑲「貸切」vol2-

1名×16組でもなく、2名×8組でもなく、

「16名×1組を追う」。

と言っても、当然、そのハードルは高い。よほど雰囲気がいいか、あるいは既に名が知れてる店でもない限り、いきなり「貸切をお願いしたいんですけど…」なんていう問い合わせはまず来ない。何も準備せずホームランは打てない。実際に知人以外で初めて貸切のお問合せをいただいたのは、オープンして3ヶ月経った7月のことだった。

カップル客をつかまえたいのであれば、カップル客に喜んでもらえるような仕掛けが必要であるのと同様に、団体利用を獲得したいのであれば、団体客に喜んでもらうためにはどうしたらいいかを考えなければならない。正確に言うなれば、「幹事」が何を求めているかを把握しなければ団体利用にはつながらない。けれど、それより重要なのは「幹事が何を避けているか、何を嫌がるか」だと僕は思っている。そのリスクやマイナス要素を解消すれば需要は自ずと湧き出てくるはずだと見当をつけていた。

幹事が何を求め、何を嫌がるか。自分自身、今までいろんなシーンで幹事をやってきたから、大体はわかっているつもりだ。しかし、その主観が必ずしも自店のターゲット層の心理と一致するとは限らない。商売不繁盛論とも重なるけれど、最初にコケるとそのあとの再訪はほぼ絶望的だろう、貸切の場合、特に。

 

だから当面は前のめりにならず、情報収集と課題の洗い出しに努めた。4月のうちに友人や知人が大人数で予約を入れてくれたので、一般客の前にデモンストレーションできたし(と言ってしまうとちょっと失礼だけど)、とりわけ大きかったのは当時東京駅近くに勤めていた父が父と同世代の方々をたくさん連れてきてくれたことだ。自分と父の世代では求めているものも感じ方も違う。自分が見落としてた自店の弱みがあり、逆に意識してなかった強みがある。そうした気付きの中で、試行錯誤しながら出来る限りでそのズレを修正し、自分の主観を「ならす」ように心がけた。

具体的な修正箇所や改善点(主にメニュー構成や価格設定)などはまた別の記事で書いていくが、このようにして実際に営業しながらフィードバックを積み上げていったのが最初の一ヶ月。けれど、身内利用を通していくら改善しようとも、どれだけ顧客心理を探ろうとも、肝心の一般客が来なければ始まらない。幹事がどうのこうのと言ってる場合ではないのだ。商売不繁盛論も本当に不繁盛のままでは当然、行き詰まる。実際に最初の一ヶ月でディナータイムに来店した一般客はほぼ皆無だった。そもそも、店の存在を知られていない。その状況が続くかぎり、当たり前に誰も来ない。

今まで延々とオープン当初の初動を書いてきたけれど、それは全てディナータイムのことだ。今日はノーゲス、明日は身内が来てくれる、けど明後日もノーゲス、最初のうちはそれでもいいと思っていた。夜は。


序盤、一回の表から三回の裏までは点を取れなくてもいい。

でも、点を取られてはいけない。

ディナーは攻撃で、ランチは守備だと思っている。序盤で守備が崩れるとゲームが成り立たなくなる。



生命線はランチだった。