Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×Jの冒険-2015年4月⑰「正方形二元論」vol2-

「大人数や団体時に利用したい店」という認識が深まれば、「事前予約」に必然的に繋がる。事前予約が浸透すれば、提供側である店もある程度の売上予測を立てながら、自分たちが持ちうるパフォーマンスをより適切に表現することができる。それだけ慎重を期してもご満足いただけなければ、それは店の力不足として甘んじて受け入れるしかない。が、もし、店の提供内容とゲストの求める水準が合致すれば、ゲストにとって「満足」は「安心感」となり、リピートにつながる。改まって言うようなことではないけれど、店としてはそうしたサイクルを目指していきたい。

仮に、自分が描いたデザインがその通りになった場合、一つのリスクが予見される。


「限られた席をどう振り分けるか」。これが難しい。今までこれに頭を悩ます主体者をいろんな店で目の当たりにしてきた。


同じ坪数、同じ席数でもどういう間取りになっているかで席の振り分け方の案配はまるで変ってくる。

例えば、「12坪・20席」という店があったとする。(都内で、個人事業主が、一店舗目として営業、と考えた場合、広すぎず、狭すぎずの標準的なサイズ感だろう)


店舗①は長方形の間取り。テーブル席もあるが、カウンターのウェイトも高い。

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次に店舗②は正方形のレイアウト。カウンタースペースは縮小し、テーブル席がメインとなる。

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ゲストとの近い距離感やコミュニケーション、もしくはプロフェッショナルな技巧やライブ感を価値やアイデンティティに据えるのであれば当然、店舗①の間取りが適している。けれど、そうでないのであれば、店舗②の方が勝手がいい。ましてや、大人数や団体を取り込んでいくのであればなおさらだ。

店舗①の場合、団体が入るとテーブル席をこう振り分けることになる。

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12名様のゲストを1組。もしくは8名×1、4名×1。勿論、6名×2というのも可能だ。ただし、8名の予約が入ったあと、別の5名以上のゲストをお通しすることはできない(カウンター5名で問題なければご案内できるが)。せっかくお問合せをいただいてるのにも関わらず、ましてや席自体はあるのに、レイアウトの問題で案内できないというのは何とも口惜しい。

一方、店舗②の場合はその問題を解消する。8名を2組、通すこともできるし、

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ご案内できる組数を増やすこともできる。

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極端に言えば、こう振り分けることもできる。

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主体者がどういうスタンスで、どういう営業を実現したいかによって、解釈の仕方は変わってくる。けれど、僕個人としては「空席があるのにも関わらず、案内できない」というのは残念なことだし、物理的にどうしようもないことにせよ、申し訳ないと思う気持ちが先行する。だから僕は、物件選びの際、とかく坪数や席数に目が行きがちだが、それよりも「席の可動性・可変性」の方が重要なのではないかと思っている。限られたスペース、限られた席数の中でその「一席」が帯びる意味は重い。可動的であり、可変的であれば、席の振り分けに苦心することもなく、その駆け引きにストレスを感じることもない。これだけで負担は大分、減る。

このように正方形のレイアウトが孕む「席の可動性・可変性」、「団体や大人数での利用」、「事前予約」という3つの要素は相関的、補完的に結びつき、小さな個人店にありがちな問題を解消する。そして、この補完計画は一つのベクトルを導く。

 

どうすればこの寂しげな裏路地で生き残っていけるか。どうすれば「売上・利益-スタッフ-健康」の3点から成る三角形を広げていけるか。多分、これが最も有効なベクトルであり、今の自分にできうる唯一の活路と言って過言でない。

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