Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×J、営業停止の危機③-休業した場合の補償関連について-

例えば、スタッフBが陽性だったが、店主Aや他スタッフC、Dは濃厚接触者ではないと判断されたケースを考える。この場合、営業継続自体は問題ないが、仮にAが「やっぱりちょっと心配だからクローズしよう」と判断したならば、Aは休業を命じたCやDの雇用維持のために雇用調整助成金厚生労働省に申請できることになる。だが、陽性が判明したBにこれを適用することはできない。Bが働けないのは雇用主のAの意思に基づくものではないからだ(雇用調整助成金は雇用主Aの意思に基づく)。仮にBが陰性だった場合も同様である。

そして、雇用主AにスタッフBへの給与(休業手当)の支払い義務はない。これに関しても自宅待機を通達しているのは保健所であり、「使用者(店主A)の責に帰すべき事由による休業」ではないので休業手当の支給対象にはならないという判断だ。

ではコロナに感染してしまったスタッフBは何によって守られるかというと、これは社会保険になる。被用者保険に加入していれば、各保険者から傷病手当金が支給される。具体的には療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12ヶ月の平均標準報酬日額の3分の2。つまり2週間の自宅待機により、土日以外の10日が勤務予定だった場合、そのうちの3日を除いた7日分、仮に日割りした一日の給料が15,000円だったとしたら、その3分の2である1万×7日=7万が傷病手当となる。

スタッフCやDにおいても濃厚接触者とされた場合同様だが、逆に言うと、濃厚接触者と判断されないかぎり、PCRは自費で受けなければならない。もし仮に「濃厚接触者ではなかったけどPCRは受けておきたい」とCやDが思うのであれば、症状があった場合、受診したクリニックによっては無料で検査してくれるパターンもあるみたいだが、このあたりはグレーゾーンなので何とも言えない。なお、自発的にPCRを受け、陰性だった場合は行動制限は課されない。行動制限が発生するのは保健所の指導による検査を受けた場合のみ、だ。

最後に、店主Aはどうか。店主Aに社会保険による傷病手当は発生しない。当然、雇用調整助成金も関係ない。事業主を守るのは事業主が加入している保険のみとなる。もしくは火災保険などお店が入っている保険が感染症についてカバーしていれば営業補償の対象となる可能性もあるが、小規模の個人事業主がそこまで網羅しているとは考えにくいので保険を改めて見直してもいいかもしれない。東京海上と損保ジャパンでは下記のような商品も販売している。

www.jiji.com


本人がいくら気にしてしても、スタッフの感染予防意識がいくら高かったとしてもリスクをゼロにすることは難しいと考えるのが妥当だろう。お店の営業を継続できるかという側面で言えば、そのリスクとは感染の回避、というよりもむしろ、濃厚接触者として判断されること、なのだ。一般的な感染予防は徹底できたとしても、これを切り抜けるのは多分、不可能に近い。だとすれば、いつそうなっても大丈夫なような体制を作るほかなく、お店にできることは仮に店内の中で濃厚接触の該当者が出たとしても、その波及ができるだけ広がらないような予防策を打つことに尽きる。2週間の自宅待機及びそれに伴う半ば強制的な休業で経営が逼迫すること自体が問題だ、と言われればそれまでだけども、多くの個人経営にとってそれはとてもクリティカルなことだと思う。休業後、すぐに元通りの客足が戻ればいいけれど、おそらくそれもまた容易ではない。それに別件で店内の誰かに濃厚接触の疑いが持たれれば、また同じことが繰り返される。

繰り返すようにJ×Jは結果的に何事もなかったわけだけども、今回の件を通して、自分たちがいかに薄氷の上を立たされているのかを思い知らされた。おそらく、どこもかしこも薄氷だらけではなかろうか。