Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

J×Jの激辛道とJ×Jの『ゲキカラドウ』への冒険③

激辛調味料を作るにあたって、「どれぐらい辛くすればいいのか」を見極めることが課題となりました。①の記事でも書いたように、コロナ前から「激辛」はJ×Jにとって重要なキーワードと位置付けていましたが、コロナ禍を通して、J×Jは改めて「激辛とは何か」を再考し、再定義し、再構築することにしました。「辛い、辛くない」は結局、個々人の主観であり、個々人の味覚に過ぎません。Aにとっては激辛で、Bにとっては激辛でないものをCが「この商品は激辛です」と激辛商品として売り込む自体、独善的と言えば独善的だし、そもそもちょっと無理があります。

だからまずはせめて、近隣(秋葉原・神田・浅草)の中で激辛を謳う、あるいは激辛と謳われているお店やメニューを実際に食べて、どれぐらい辛いのかを市場調査することにしました。

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この日、3店舗くらいをまわって、近隣の「激辛メニュー」を試食しましたが、結論としては「なんかちょっとよくわからないな」ということでした。辛いっちゃ辛いけども、激辛かと言われると物足りない気もするし、かと言ってこれ以上辛いと単純に美味しくなくなると思うし…、みたいな感じで、とりとめのない気持ちになりました。

そして、その「とりとめのなさ」はそれ以降もずっと付きまといました。「とりとめのなさ」というのはつまり、「まとまりがない」と言うか、「バラバラとしたさま」と言うか。とにかく、なんだかしっくりこないのです。「激辛とは何か」を探れば探るほど「激辛とは何か」が遠のいてく感覚です。その試行錯誤の様は動画に顕著に出ています。全ての動画を載せたいくらいだけども(自分たちの迷走を全て見届けてほしいけども)、それこそとりとめがなくなってしまうので、一部だけリンクを張っておきます。

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そうした探り探りの激辛の中、さらにその上の本格的な激辛に踏み込もうとすると今度は「辛すぎる」という壁が立ちはだかります。辛すぎて、辛すぎるだけなのです。僕らはその座標を目指したいわけじゃない。そうした錯綜と葛藤の中、生まれたのが「弱激辛」という概念です。「弱」と「激」という矛盾する背反性を「弱激辛」という言葉で表現しました。

「弱激辛」とは何か?その定義をわかりやすく言えば、「激辛の少し手前」です。でも、このブログではわかりやすく収めたいとも思ってないので、あえてややこしく言えば、僕らが目指しているのは「健康で、文化的な、最低限度の激辛」です。健康的でない激辛、文化的でない激辛、度を超した激辛がなんと多いことか(僕はそれを「激辛のインフレーション」と呼んでます)。逆に、全く激辛でない激辛がどれだけ溢れかえっているか(僕はそれを「置き辛」と呼んでます)。

何故、際限なくインフレーションしてしまうのか。逆に何故、激辛なのに置きにいってしまうのか。「弱激辛」はその極端な2つの世界線に対するアンチテーゼであり、挑戦であり、挑発です。「弱激辛」を以ってして、その暴走と迷走に一石を投じたいのです。

「そもそも激辛には答えがない」というのが僕たちの激辛に対する答えです。例えば子育てに答えがないように、「かわいい」か「カッコいい」に正解がないように(正解があるのであれば、皆そうするだろうし、間違いのない世の中ができるはずなのに、実際は間違いばかりで、それを無理に正そうとするからまた間違える)。あるのは「自分が実現したい自分らしさ」だけだと思います。何事も。

その「答えがないという答え」を「弱激辛」という非論理的な言葉に託しました。そもそもが矛盾しているのだから(人によって激辛はそれぞれ異なるのだから)、矛盾そのものを商品や表現にアイデンティファイしたとしても、それは自然なことだと思います。「本商品の最大の特徴は矛盾です」。それでいいと。それが自分たちが実現したい、このジャムの「らしさ」です。

当然、「わかりにくい」「弱激辛ってどっちなんだよ!」「全然、弱じゃないじゃないか!」というお声も出てくると思います(というか、毎日出てます)。冗談めいたツッコミで済むのが一番平和なのですが、たまに冗談で済んでない反応もあるし、これからそれはもっと加速していくと思ってます。でも、全ての反応がこの商品の正しいレビューです。僕は今のレビュー社会に本当に嫌気がさしてるけども(何故見ず知らずの人の意見や感想に、自分の行動を委ねるのか)、この商品は多いに揉まれてほしいし、多くを揉んでほしいと思ってます。だってそういう商品だから、です。


と、そんな想いで、弱激辛ジャム作りを始めました。


そして、それと同時に弱激辛ラーメン作りも始めました。