当時のスタッフKが「みんな、しんさんしんさん言って、おもろないですわ」と言うので、「だったら自分でイベントを立ち上げみたら?」と提案した。「そしたらとりあえずその日一日は主人公になれるんじゃない?」。Kはこの提案を恐る恐る了承した。
このタイミング(オープン2か月目)でイベントを立ち上げることになるとは思ってなく、Kはおろか、そのイベントにどのような意味合いを持たせればいいのか少し悩んだ。特に意味もなく、テーマもなく、ましてや「Kが目立ちたいって言ってるんですよ」という名分ではイベントは打てない。
「何をどうすればいいんですかね?」というKの問いに対して、「とりあえずA4の紙出して」と言った。今回のようにほぼ白紙の状態から何かを立ち上げる場合、まずはとりとめもなく(ロジックやリアリティは考慮せず)、とにかく頭の中に浮かんだワードをひたすら殴り書くようにしている。ポイントとしては「とにかくとりとめもなく」。何がどこでどう重要になるか、何がどこでどう結びつくかはわからないのでどれだけ現実離れしていても、どれだけ荒唐無稽であってもとりあえず「書く」。
まずセンターに大前提や要件、もしくは目標などコミットの対象を据え、それを中心にその他の希望や条件、連想されるワードなどを自由に書き込んでいく。僕自身は最近その言葉を知ったのだけど、いわゆる「マインドマップ」と呼ばれる思考・発想法の一つであるらしい。けれど、そんな仰々しいものではない。何かの筋道を示したり、何らかの着想を求めたりする時は紙やホワイトボードに書いてみるのが一番、といういたってシンプルで、いたって自然なアプローチだ。
まずはここから。今回の場合、中心となる命題は「イベント」であり、主たる要件は「Kが主体であること」。そして、決めなければならない(検討しなければならない)のは「目的」(意味や内容)と、「時期」。
ざっくりな内容や差し当たって生まれるであろう課題を書き込む。
「Kにとってのイベントって端的に言うとどんな感じなの?」
「うーん、"祭り"っすかね。」
「祭り」というワードもこれに加え、7月に開催される「祭り」で検索する。すると「隅田川花火大会」がヒットしたのでこれも書き込む。
「隅田川花火大会よくないっすか?みんな集めて見に行きましょうよ!!」
「別にいいけどさ、それっておまえが単純に花火大会の幹事やるってことだと思うけど、そんなんでいいの?」
「じゃ、じゃあ屋形船借りてパーッとやりましょうよ!!」
「それでもいいけどさ、それっておまえが単純に飲み会の幹事やるってことじゃないの?」
「じゃあ、俺が屋形船で料理しますわ!!」
「なるほど…。そんな良心的な屋形船があるといいけど。あ、それと調べるついでに料金とか諸々調べといて」
5分後。
「ヤマモトさん、無理ですわ」
「一回、屋形船からは離れて、祭りの線で膨らませてみよう。基本的には場所はここで。外だとイベントっていうか、ただの飲み会になっちゃうよ。それじゃあ、そもそものK主体っていうのがあやしくなるし、お代金もいただけないでしょ?」
「スペインって夏、いっぱいお祭りあるんすねー」
「例えば?」
「6月に火祭り、7月に牛追い祭り、8月にトマティーナ、ですね、ざっくり」
「なるほど…」
「だったらさ、スペインをテーマにイベントやってみれば?スペインだけにフォーカスしてやれば、考えなきゃいけないことも絞れるし、いいんじゃん?」
スペインは観光大国の一つであり、皆、大なり小なり何らかのイメージは持っている。料理のバラエティーも豊富で、陽気な気質は夏にもKにもぴったりだ。「祭り」というサブコンセプトにも当てはまる。
「なんかイケそうっすね」
マインドマップは情報整理やインスピレーションだけでなく、モチベーションの刺激にも有効だ。イベント名は「J×J Festival-Spain round- 」にすることにした。そして、それと同時に、「次はJapan round」にしようと見据え、このコンテンツが定着すれば今後イベントの立ち上げがやりやすくなる、と思った。
今回のマインドマップは今回の記事のために簡易的に僕が改めてわかりやすく書き直したもの。当時のものはこれ。
当時の苦労が滲み出ている。よくこの地図から「スペイン」というワードを導き出し、その後の「ラウンド」につなげることができたな、と我ながらちょっと感心する。