Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

オリンピックの準備をしなければならない。

6月1日、一番最初にオーストラリアのソフトボールの選手団が入国したという報道を聞いて、「ほんとにやるんだ」と感じた。特に賛成も反対もなく、何とも思っていなかったのだけど、そのニュースを見て、初めて東京オリンピックがリアリティを帯びた。

これまであまり意識して観ることはなかったのだけれど、今回は休業中で営業に縛られず、テレビもSNSも五輪一色で、自然と触れる機会も多く、結果的に今までで一番積極的にオリンピックを楽しんだような気がする。開催中、大きなアクシデントが起きたらまた空気が荒むなあと危惧したけれど、特にこれと言ってそういうこともなくよかったなと感じている(テロだとかそういうレベルのアクシデント。極端な反対派からすれば開催そのものがテロなのかもしれないが)。

ただどうしても情報がメダルの祝福に偏ってしまうことで、それは確かにおめでたいのだけど、そんなに繰り返し流さなくてもいいからメダル以外の、そして日本人以外のニュースももっと取り上げてほしいなと思った。せっかく世界の祭典なんだし、テーマは「多様性と調和」なのだから。でもまあ普通に暮らしていて、日本という「国」や「日本人」というものを意識する機会は日常生活にあまりないので、こういうものかとも思う。代り映えしないテレビはどうしようもないにしても、ネットはもっとやれることあるんじゃないかと思うけども、結局PVと再生数の世界、大して変わりはない。

そうした中、サッカーの久保選手が「日本」というチームで、あれほど悔しそうにしていたのは印象的だった。

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そして、それ以上に突き刺さるのが吉田選手のインタビュー。記者の質問が全く無視されてるところに無念の度合いが伺える。

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こうしたインタビューに「日の丸を背負う」とか「メダルへの責任」というものを強く感じるのだけども、日本人選手にここぞで負けた中国や韓国の選手はちょっとぞっとするぐらい辛辣に叩かれているわけで、ナショナリズムという言葉は重いにしても、その重圧感は選手を鼓舞すると同時に残酷にも感じる。

各選手が程度の差こそあれ、そうした「国」を背負う一方で、その座標にいないアスリートがいる。それが29人の難民選手から成る「難民選手団」。

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2016年のリオから始まった制度で、下の動画もリオに出場したコンゴ出身の柔道選手だけども、こういう想いを持った選手が参加できるのであれば、仮に商業主義がオリンピックにはびころうとも、ビジネスだけでは測りきれない意義があるのではと、と個人的には思います。

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ただ残念ながら東京オリンピックに参加した29人の難民アスリートがどのように活躍したかほとんどまったく情報が出てこない。このあたりが上記に言ったようにちょっと寂しい。多様性と調和はどこに?、という感は否めない。


勝負の世界はシビアで、だからこそ勝利には興奮と感動があるのだろうけれど、個人的には勝利と同等に、敗れた側にもドラマがあると思っている。それに勝利に至る人間は一握りなわけだから、多く人が寄り添えるのはむしろ敗者なのではないかと。

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飛び込みの決勝では40歳のレジェンドに、さざ波から万雷の拍手へ。

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こういうのもあった。

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世界最高峰を競う「競争」ではあるのだけど、白黒だけが全てではないなと武闘派ではない僕は思います。そして、その傾向は「シェア」という言葉とともに今後、もっと拡大していくのかもしれないと思わなくもない。そういう意味で最も印象的だったのが「走り高跳び」の決勝。

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そして、野球の準決勝「日本対韓国」。決勝よりも準決勝で、それは日韓戦ということもあるのだけど、ゲームそのものよりもそれに伴うサイドストーリーがアツかった。時は13年前の北京五輪まで溯ります。

金メダルが期待されていた北京五輪、結果は4位と銅にも届かず。勿論要因は色々あるのだろうけど、敗北を決定付けたのはレフトを守っていたG.G佐藤のエラーである、と当時、彼は戦犯扱いされました。

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その後しばらく精神的に大分キツかったらしいけども、引退後は、もともとの明るくで気さくな性格を前面に出しながら、時折この世紀の落球をネタにし、プロ野球解説やバラエティーに出演しています(去年、不祥事に不祥事を重ねてロッテに首を切られ、球界から総スカン食らっている清田氏に救いの手を差し伸べていることでもちょっと有名)。


そんなG.G佐藤氏、韓国を下しての決勝進出の瞬間。

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「ずっとふざけてたけど、悔しかったんだ」。


いやはや…。


試合そのものだけじゃなくて、その試合に至るまでの過程や経緯、あるいはそのまわりにいる人たちのストーリーも含めてオリンピックなのだと感じました。もっと知ったら、もっと面白い。


そして最後は柔道男子100㎏級決勝「ウルフ・アロン(日本)対チョ・グハム(韓国)」。ウルフ選手が粘りに粘って、金をとった試合でしたが、僕がここで取り上げたいのは銀に終わった韓国のチョ・グハム選手。

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記事は日本のメディアではなく、「スポーツソウル」のものを取り上げます。

sportsseoulweb.jp

日本人だけでなく、対戦相手にも背景があり、ストーリーがある。そして、もともと言葉や思想を超えうるものとして位置しているのがスポーツ。綺麗事ばかりでないし、醜いものもたくさん噴出した今回の大会だったけども、それだけではないし、こうした部分にもちゃんとスポットがあたると、なおエキサイティングで、よりエモーショナルなんじゃないかと切に思います。何はともあれ、大切なのは自分以外と自分をリスペクトすることであって、何はともあれ、全てはそこからでしょう。


チョ・グハム選手は「韓国に帰ったら何をしたいか?」という質問に対し、


「オリンピックの準備をしなければならない」と笑顔で語った、と記事は締めている。


僕もパリはもうちょっと準備して、もうちょっとちゃんと見てみたいと思った。