Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

【超貧窮路地裏経済論①】J×Jとクラウドファンディング(多分前編)

ちょっとセンシティブで、どう考えるか難しいトピックになりますが、今日時点(4月20日)でJ×Jの事業主として「クラウドファンディング」をどう考えているか、ちょっと書いておこうと思っています。前提として、になるけれど、クラウドファンディングを薦めてくださる方はとても多いのです(そして、同時に「支援するよ」とおっしゃっていただける方も多く、大変に恐縮です)。こうした動きに対して、事業主としては複雑な気持ちを抱くことになるのだけど、根幹にあるのは「ありがたいな」という気持ちです。今回のブログ記事はそうした方々へ感謝の意を込めた回答でもあります。


前々から検討しているものの、今の時点において、クラウドファンディングに踏み切る意向はありません。理由は色々ありますが、「お店によって向き・不向きがあること」、「内容とタイミングにはくれぐれも慎重にならなければならない」、この2点が主な理由になります。これについては下記の記事にて、もう少し詳しく書いてます。

www.journeyjourney-blog.com


ストレートに言うなれば「潰れちゃったらリターンできなくない?」ということです(勿論、リターンの内容にもよるけれど)。でも、この極論的な見地はクラウドファンディングだけではなく、「未来チケット系のサービス」は含め、その他あらゆる可能性を排除することになってしまうので、いったん、この最悪の想定からは離れます。話をもう少し前の段階に据え、「お店によっての向き・不向きの話」で考えると、こういう感じになります。

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自分でも自覚しているのですが、説明が下手。もう少し掘り下げていきたいのですが、その前に言うと、


支援が「お金」であるのに対し、リターンが「お金に関わらない」場合、今から説明することは該当しません。例えば、1,000円の支援に対して、リターンがハグwである場合とか、あとは「限定招待」とか、つまり「何かの権利」であること。要はリターンに「お金が関わらない=原価を伴わない」ケースは除外します(ちなみに僕はクラファンのことについて全く詳しくありません。個人的な感想を個人的に述べているだけなのでご留意いただければと)。


その前提で、もう少し具体的にイメージしていきます(以下、丁寧語略)。


例えば、僕が席数10の小さな居酒屋の店主だったとする。「常連さんは10人、たまにふらっと入る方が10人、それより頻度の低い方が10人、あとは新規客が不定数」、そういうイメージのお店が今回のような事態に見舞われ、月末の家賃が支払えない状況に陥り、クラファンを活用。1万円の支援に対し、8,000円の食事券をリターンを用意。常連さん及び他一部のゲスト、合計15人がそれぞれ1万円ずつ支援し、店主は15万円を募ることに成功し、4月末の支払いを乗り切る。その後、5月6日に緊急事態宣言が解除され、常連さんから徐々に客足が戻る。支援した15名の初動の8,000円分はリターンとして消化されるが、残り固定客15名及び新規客のご利用は正規の値段となるので、十分とは言えないものの5月末の支払いもなんとか乗り切る。6月からはもとの軌道に戻り、通常運転を再開させる。「よかった、よかった」と僕と常連さんは乾杯しながら、日常を取り戻す。


これがクラファンによる「資金繰り」のスタンダードなケースでしょう。

(本来はあくまでクラウド、webに広がる無数無形を対象としているので、上記の場合だと全然クラウドじゃないのだけど、今この状況下でお店のことを全く知らない人が既存のお店のことを支援する、というのは稀有だと思うのでわかりやすく削ぎ落します)


一方で、僕が「結婚式の2次会利用に特化したレストラン、2次会利用がない時は通常のレストランとして営業」、こういうお店を経営していたとする。レストランには僕の友人・知人含め60人の「不定期な固定客」がいると想定する。ただし、その60人同士はそれぞれに面識や繋がりがあるわけではない。

今、この状況で、結婚式を挙げる人はいない。それは上記60名も当然認識し、運営を危惧している。僕はレストラン存続のためにクラウドファンディングを始め、1万円の支援に対し、8,000円の食事券のリターンを用意し、それを受けて固定客60名のうち30名に支援いただき、その30万円を元金に月末の支払いを乗り切ることに成功した(実際にはそんな安いところないけれど喩えとして)。

緊急事態宣言解除後、60名は徐々にレストランを訪れるようになる。そのうち支援した30名はリターンを使用・消化し、他の30名は通常利用をする。「よかった、よかった」と僕は固定客と乾杯しながら、日常を取り戻す、

ということには当然ならない。


前者の居酒屋と違って、後者のレストランにとって「日常」や「もとの軌道」というのは、運営上においては「結婚式の2次会として利用されること」ではじめて取り戻すことができる。では、仮に5月6日に緊急事態宣言が解除されて、5月中に結婚式の2次会の予約が入るか、というとまず100%ない。ジューン・ブライドである6月も皆無に等しいだろう。


するとどうなるかと言うと、4月に募った30万で4月末を踏ん張り、5月もまた同様に苦しくて支援を選択しなかった残りの30人に訴えかけ、どうにか30万を募り、5月も命辛々乗り切ったとしても、2次会が戻ってこない限り、6月中にきっちり破綻することになる。支援してくれた60名の方に然るべきリターンを実施できればまだいいものの、それさえできないまま閉店、という可能性だってこのケースにおいては十分にありうる。


だから多分、後者のレストランのオーナーがクラウドファンディングに踏み切るんだとしたら、60名の不定期な固定客にアプローチするのではなく、収益の主たる部分/運営の根本を担う「結婚式の2次会利用」(の見込み客)に訴えるべきなのだけど、それは言うまでのもなく事実上、不可能に近い。この状況であれば、最初からクラウドファンディングには手をつけない、多分これが正しい。


か、もしくは、店の存続を前提としないファンディング、かつ、店の存続を前提としないリターンを用意する、しかないのではないかと僕は思う。あるいは「2次会利用に特化したレストラン」という基幹を捨てるしかない(これはこれで修羅の道だ)。そして、J×Jは現時点において、収益構造上、立地特性上、事業内容上、あらゆる側面で前者の居酒屋より後者のレストランの立ち位置に近いのは間違いない。