Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

スタッフいずみが語る「テフ及びインジェラは本当にスーパーフードなのか?」①

どうも!いずみんです!


J×JのインスタやYoutubeにはたまに登場しておりますが、このブログでははじめまして、ですね!

オーナーのブログで私が記事を書く日が来るとは思いませんでした!

3分で読み終わるんで!いや、1分!頑張れば!頑張って読んでください!

 

何を話すかと言いますと、インジェラについてです。

インジェラ。なんかポケモンにいそうですね。

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オーナーがエチオピアで実際に食べたインジェラ

このブログでもJ×Jのインスタでも何ならYoutubeにも度々話題にしてますが、簡単に言うと「テフ」という穀物を使ったエチオピアの主食です!

今回はこのインジェラについて栄養学的な側面から見たらどうか、っていうお話をさせていただきたいと思っているのです!(私は元々こういうの好きなのですが、オーナーはちょっとひねくれてるので…)

インジェラ、本来ならば新メニューとしてどかんと打ち出してたんですけどね…

こんなに長く緊急事態になるなんて思わなかったしね…

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お店でお出しする予定だったインジェラ

ま!でも!緊急事態宣言が明けたら皆様に食べていただけるのでね!その前にちょっとでも知ってもらおうってことで今回のブログなわけです!ああ、あともうちょっと時間ください!

 

まずですね、インジェラの原料である「テフ」。めちゃくちゃ栄養素高いんです。

キヌアの次に来るといわれたスーパーフードなんです。

キヌアがAKBならテフは乃木坂的な。的なね。違うか。

 

そんな栄養素が高いテフは!ダイエットに持ってこいな食材なんです!

スーパーフード=セレブ、だけじゃなくて!

最近おうちで飲みすぎちゃってるあなた!(と私)

ダイエットする上で欠かせない栄養素がテフには盛りだくさんなんですよ!!


まず! 


【カルシウム】

カルシウムと聞いて「骨」とか「成長」などのワードが一般的には取り上げられがちですが、カルシウムにはリパーゼという脂肪を分解する酵素の働きを活性化させる役割を持っているんです!

 

またタンパク質は筋肉の材料。タンパク質が足りないと筋肉が衰え代謝が下がってしまうのです。代謝を上げて痩せやすい身体を作るためには筋肉をつけるのが1番!

関係ないですが中山きんに君は毎日ゆで卵を5個食べてるらしいです!やー!


次に!


【鉄分】

鉄分は貧血の人だけが必要な栄養素ではないんです!

鉄分はエネルギーを作るのに必要な栄養素。つまり鉄分が足りないと摂取したカロリーがエネルギーになりづらく、脂肪として蓄えられてしまうことに…

筋肉にもエネルギーがいかないから運動の質も落ち、代謝が下がり…

え…脂肪として蓄えられ、代謝も下がったら…太りやすくなって…また脂肪が増え…なにこれ悪夢?


日本人は無自覚の貧血の人が多いとも言われているので積極的に取り入れたい栄養素の一つですね!


次の次に!!

と、いきたいところですが 、今回はここまで!「テフ及びインジェラは本当にスーパーフードなのか②」に続かせていたただきます!

 

 

そもそも発酵食品は何故、身体にいいとされているのか。

毎日インジェラを食べ続けながら、インジェラと合わせるおかずを変えていく中で、ふと思いました。スーパーフードと称されるテフ粉を発酵させたインジェラを、発酵食品と食べ合わせたら、より身体にとって有効なのではないか、と。

そして同時に思いました、「そもそも発酵食品は何故、身体にいいとされているのか」と。なんとなく身体によくて、なんとなく美味しい。それが僕の中での発酵でしたが、その「なんとなく」をこの機会にちょっと掘り下げてみようと考えてみたのです。

そもそも「発酵」とは、

人間にとって有効な微生物が働き、物質を分解させる現象、

と書いているものもあれば、

生物が栄養素として取り込んだ有機物を嫌気的に(酸素を使わずに)代謝してエネルギーを得る過程、

という表現もあれば、

微生物(細菌・酵母・カビ)が人間に有益な有機物を生成する過程全般、

と定義しているものもあります。はっきり言って、いまひとつ要領を得ないのだけど、簡単に言えば、細菌・酵母・カビが人間にとっていい感じのものをいい感じに作ってくれる現象、であり、逆に人間にとって悪い感じなものを悪い感じに作る現象が「腐敗」、となります。

ではここでいう「いい感じ」とは具体的にどういうことを指すのか、という話になり、「発酵」を推しているサイトからテイのいい文言を引っ張ってくればそれで事足りるのだけど、あえて逆に「腐敗」からアプローチしてみようと思います。

腐敗がもたらす「悪い感じ」とは何か。調べてみると「腐敗のプロセスは食品の成分や細菌の種類によって異なり、メカニズムについてはっきりしてない部分も多い。栄養価が損なわれているだけでなく、未知の毒性の物質や病原菌生物によって汚染され、腸内環境を脅かす食中毒原因菌となる可能性もある」と、このようなことが書いてあります。

これが腐敗。

そして、極端な話、加え、僕の個人的な解釈としてはこれと真逆のことが起こっている、あるいは起こしているのが「発酵」。「身体にいい」とは「身体に悪い」ことの逆であり、こう考えると今ひとつ曖昧で朧げな「身体にいい」がよりクリアになり、具体的な輪郭を帯びてくるのではないかと考えています。腐敗しているものを食べてお腹が痛くなるのはわかる、発酵はその逆の状況を作ってくれている、そういうことです。


その上で、何故、発酵食品が身体にいいのかを調べてみます。どのサイトも同じようなことが同じように書かれているので、簡単にいきますが、

①腸内環境を整えてくれるから

出ました、「腸内環境」。最近になって特によく聞きます。腸内には500〜1000兆の微生物が存在するのですが、それだけいれば良いヤツもいれば悪いヤツもいるわけで、悪いヤツの蔓延を抑え、悪いヤツがもたらす病気と闘ってくれるらしいのです。で、発酵食品にはその「良いヤツ」(乳酸菌やビフィズス菌など)を多く含んでいる、と。

②栄養価を上げてくれるから

腐敗が食材の栄養を損なわせるのと逆に、発酵においては微生物がタンパク質、糖分、デンプンを分解して、栄養価を上げてくれちゃうのです(納豆とかいい例で、素の大豆にはないナットウキナーゼという酵素爆誕させたりとか)。そして、それだけでなく、分解の過程で消化の段取りをうまいこと組んでくれたりもするのです。段取りが上手な人ってやっぱり仕事できますからね、そういうことです。おまけに旨味(グルタミン酸イノシン酸など)まで引き出してくれちゃうわ、食品の保存性も高めてくれちゃうわで至れり尽くせりの、もう出木杉です。食べる出木杉君。

まとめると、

栄養が身体に入りやすくなり、免疫を高め、病気を予防する

ってことですね。これは教科書に書いてあるとおりです。

ちなみに弱点は「塩分や糖分の摂取量が多くなる」です。でもこれは全ての発酵食品にあてはまることではないので、バランスをとるのはさほど難しいことではないと思ってます。味噌が好きだからと言って、スプーンですくって食べることはしないわけだし、身体を配慮してる方で甘すぎるヨーグルトをばくばく食べる人もあんまりいないんじゃないかと。

最後に。「発酵」には他にもいろんな側面があるのですが(あるらしいのですが)、僕的に注目したいのは「複数の食品と合わせやすい」ということです。これはなかなかにポイント高いと思っていて、上記の塩分と糖分さえ気にすれば、あとはけっこう自由でアレンジやバリエーションが効くなあと。健康やダイエットにおいてどうしてもありがちな「過剰摂取はよくない」とか「バランスを考えて」という壁(まあ真っ当でもっともな話ではありますが、卓袱台ひっくり返される感は否めない)が立ちはだかるのだけど、発酵はその点、融通がきくのです(と思ってます)。あと発酵食品は往々にしてお酒の肴になるのも嬉しいww(これまた飲みすぎてしまうと元の子もないのだけど)

というわけで、「30日間、主食をインジェラにしたらどうなるか」という取り組みは、

「スーパーフードであるテフを発酵させたインジェラ出木杉君である発酵食品を合わせたらどうなるか」

と、よりアップデートした形でお届けしていけたらと思っております。





30日間、主食をインジェラにしてみたらどうなるか?②

30日間、主食をインジェラにしてみたらどうなるか。

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というわけで、インジェラを食べ続けています。初日はドイツソーセージとザワークラウトというオシャレな取り合わせでした(新メニューの試食も兼ねて)。

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エチオピアの現地ではカレーやスープにつけて食べたり、野菜をのせて食べたりしています。スタイル的には南インドスリランカのカレーに似ているのですが、インジェラのよいところは何を一緒に食べてもいいということ。勿論、本場に寄せるのであればエチオピアの味付けや調理法に則るべきでしょうが、今回フォーカスしているのはインジェラそのものなので、そのあたりは自由にやらせてもらっています。

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2日目、空心菜炒め

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3日目、レバーペースト

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4日目、余りものを色々。

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5日目、カンパチの塩焼き(アラ)

こんな感じですね。魚との相性がよく、カンパチの塩焼きを巻きながら食べたのがこの中では一番のヒットでした。塩焼きにちょっと醤油とレモンを絞りましたが、これがまたよかったのですが、その時に思いました。何と一緒に食べてもいいのだけど、どうせなら発酵食品であるインジェラには発酵食品を合わせてみてはどうか、と。

そんなこともあり、6日目は日本発酵界のプリンス、「納豆」です。

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順当に美味しいです。お米とのマッチングには敵いませんが、お米は相性が良すぎて無限に食べてしまうところがあるので(個人の感想です)、インジェラとちまちまと合わせるのはありだなあと。そんなこんなで納豆インジェラをつまみにウィスティー(J×Jの定番賄いドリンク。「ウィスキー+無糖の紅茶」です)を飲みながら、ふと思いました。


そもそも発酵食品は何故、身体にいいとされているのか。


前回記事でも書きましたが、僕は今までこれといって自分の食生活を気にしたことはありませんでした。勿論、職業柄、栄養やバランスについて勉強したり、触れたりすることはあってもどこか他人事で、空論のように扱ってきたのも認めざるをえません。特にこれと言ってジャンクフードが好きというわけではないにせよ、今のこのみっともない身体はその無関心と蓄積と言えましょう。


ところが、そんな僕がこのインジェラという一つのメニューを通して、そうした部分に興味を抱くようになっていったのです。まだインジェラ計画は道半ばですし、今のところ体重含め、特に目立った変化はありませんが、この意識のちょっとした「揺れ」がまず最初の効果であるように思えます。







30日間、主食をインジェラにしてみたらどうなるか?①

GW以降、まともな営業ができない中で、J×Jはグランドメニューの大幅リニューアルに取り組んできました。その一連の動きの中でエチオピアの主食「インジェラ」をメニュー化できないか、と思い立ったのです。インジェラそのものについては、過去の記事で触れているのでそちらをご参照いただければと思います。

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今回、フォーカスしたいのはインジェラの原料となる「テフ」です。テフというのはイネ科の植物で、エチオピアではその種子が主食となっています。世界最小の穀物とも言われ、栄養価が高いことから欧米ではスーパーフードとして消費が伸びつつあるのです。ミネラル分が豊富で高タンパクのテフは糖尿病患者に理想的な徐放性食品(中身が除徐々に放出されること、一挙に放たれるのではなく時間をかけてゆっくり出ていくこと)でありそうしたことからもキヌアに代わる次世代のスーパーフードになるのでないかと言われています。

なので、皆さんも是非テフを!、是非インジェラを!、


という話にすぐなってしまう高度資本主義情報化社会。


私は思います、


ほんとか?、と。


スーパーフードであることと、健康食品やダイエット食材はそれぞれ立ち位置と役割が異なるので一緒くたにしてしまうのはよくないですが、やはりこの手の情報には慎重になってしまいます。日々、新しい食材やメソッドが広告として提案され、飛び交いますが、ほんとに真なるものがあればそれは自然と定着し、継続されるでしょうから、一過的なものであるはずがないと。結局はファッションと一緒で、仕掛ける人がいて、仕掛けるための予算があって、仕掛けられる人がいるのだと僕は認識しています。1970年代に「紅茶キノコダイエット」というのが大流行していたらしいですが、ご存知でしょうか?

その後、

1980年代リンゴダイエット、こんにゃくダイエット、ゆで卵ダイエット
1990年代寒天ダイエット、黒酢ダイエット、唐辛子ダイエット
2001年ミネラルウォーターダイエット
2003年にがりダイエット
2004年グレープフルーツ、もろみ酢
2005年プーアル茶
2006年チョコレート、豆乳クッキー
2007年納豆、キャベツ
2008年朝バナナ
2009年夜トマト
2010年ヨーグルト
2013年鯖缶

と変遷し、ケトジェニック、ファスティング、低糖質、食べ順、体幹グリーンスムージー、キヌア、他スーパーフード等々、ビリーは今も元気だろうか。

勿論、こうした情報のほとんどが出鱈目であるとは思っていないですし(真摯に取り組んでらっしゃる方も大勢いる)、ちゃんとやればちゃんと痩せるのだろうし、ていうか食材も方法論もはっきり言って関係なくて、「それを継続できるかどうか」が本質であるはず。

一方、そうした極論を抜きに、情報の精度と確度からすれば、その「事実」が誠実であればあるほど白日の下に出てこず、奥に潜まったまま、という印象を持ってます。胡散臭いことばかりの世の中を憂いているわけではなくて、「情報」というのは構造上、そういうものだと。検索してすぐに出てくる情報は当然、その情報が真であることとイコールではなく、多くが戦略と予算によってセクシーに着飾られたものであり、そんなことはわかっているはずなのに何故か誘導、扇動されてしまう、という…。そういう意味ではネットもテレビとそう変わらない。

脱線してしまいましたが、僕のスタンスは上記のとおりです。僕がひねくれてるところも多いにあるでしょうが、美辞と麗句を並べられても基本的には穿った目で見てしまっています。

海外旅行に行けない今だからこそ、世界の食文化や他国の料理を多く取り入れ、やれる範囲でエキゾチックに表現していきたいと思う中で、インジェラにスポットを当ててみることにしましたが、インジェラ及びテフに「エチオピアの主食」という以外の価値と側面がもし本当にあるのであれば、そこはちゃんとフォーカスしたい。勿論、仮にインジェラが健康によいものだとしても、J×Jに一回食べにきて何がどうなるというわけではありませんが、体験することを楽しんでもらいたいですいし、それをきっかけに何かが生まれれば有意義だと思ってます。


というわけで、まずは僕がスーパーフードであるインジェラを食べ続けてみることにしました。30日間、主食をインジェラにしてみたらどうなるか、を検証していきます。ああだこうだと御託を垂れ流しましたが、そもそも僕自身がみっともない身体をしているので、そもそも何の説得力もありません。ダイエット企画をはじめたいわけではないのですが、これを機に少しでも痩せたらいいなと思ってます。

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*7月12日以降、店舗の営業は平日のランチタイムのみで、ディナーは営業しておりません。インジェラの販売はディナー営業再開に伴い始める予定です。


健康で文化的な最低限度の激辛ラーメン「白虎」

明日28日よりディナーも営業を再開します。しかし、18時から20時までの短い営業になってしまうので、当初予定していた新メニューではなく、その中から一部をピックアップして期間限定メニューでの営業となります。

エチオピアの主食「インジェラ」、香港などで親しまれる「鴨飯」、J×Jの定番の「カオマンガイ」が中心になりますが、他にもう一つご用意するのが「ラーメン」です。

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J×J特製弱激辛ラーメン「白虎」です。弱激辛というのは文字のとおり、「激辛のちょっと手前」という意味になります。そして、言い換えるならば「健康で文化的な最低限度の激辛」。激辛を健康的かつ文化的に楽しもうというのがメニューコンセプトとなります。これについて以前、ブログで触れているのでもし興味がございましたら是非こちらも。

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JTVも撮っております。

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本来であればメニューを絞らずにバーンっといきたいところですが、とりあえず当面はこの4品を中心にお届けしたいと思います。

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インジェラ

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鴨飯 *写真は4人前です

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カオマンガイ

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白虎

とは言え他にもサラダですとか、おつまみですとかはある程度ご用意します。明日からのディナー営業、よろしくお願いします!ご来店お待ちしてます!


邪道と紆余紆余カオマンガイ

J×Jの開業当初からの定番かつ看板である「カオマンガイ」、率直に言ってカオマンガイではありません。カオマンガイではなく、「カオマンガイ的なもの」です(この表現ですら好意的な譲歩でしょう)。

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カオマンガイの定義とは何か。それについて僕はろくな回答ができません。wikipediaによれば中国の海南島の名物である「文晶鶏」に由来しているらしく、海南島の出身者の華僑がタイ、シンガポール、香港に移住し、故郷の味としてそれぞれの土地でそれぞれの土地の料理として確立した、とあります。そう考えると料理というのはすべからく流動的で、その時々と場所々々で変遷し、さすらうものであり、定義付けすること自体に無理があるように思えます。だけども、カオマンガイAとカオマンガイBを違う名前にするのもしんどいので、名称を統一することによって、便宜性を高めているのだと思います。だから、正しくは「カオマンガイ的なJ×Jオリジナルの鶏肉ごはん」となり、その自覚はあるのだけど、当然ややこしいので、便宜的に「カオマンガイ」としています。ので、以降、J×Jのカオマンガイはやはり「カオマンガイ」と呼びます。

 

お店をオープンした時、ランチはカオマンガイをメインに据えようと元々考えてました。自店の近くにはエスニック的なお店はなく、中華屋さん、カレー屋さん、お蕎麦屋さんなどランチシーンにおける巨人ばかりがひしめきあっている状態で、「多国籍料理」というただでさえ異色なのに、内容やテイストまでクセがあると牽制されるかなあと懸念し、本格派からすれば大分、中途半端な仕上がりになりました。いつか機を見て、本格派に寄せていこう(現実的にオペレーションが可能な範囲で)と構想していましたが、次第にそのテイストにも固定客がついてくれるようになり、変えるに変えられなくなりました。そして、その中途半端で軟派なカオマンガイのスタンスを崩さない範疇で、何度か改良を繰り返してきました。

さらにこのコロナ禍において、カオマンガイUBERで適用するようになり、他店との差別化の意味もこめてトッピングを充実させるようにしたそんな折、『エブリィ』、『Nスタ』、『ひるおび』から立て続けに取材が入りました。

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ニンニクを効かせたカオマンガイを「ガリガリカオマンガイ」とし、こうなればとことんやってやろうということで、現在では「ガリガリ」の他に、パクパク、坦々、タルタル、ネバネバ、辛々とアレンジを広げています。否定的な眼差しを感じながらも、ランチメニューではカオマンガイが独走状態であり、他メニューをぶっちぎってます。「邪道も極めれば道」という哲学を胸に、改良は今後も継続しますし、より良いものは目指していきますが、カオマンガイについては今のここに到着したかなという感があります。ディナータイムでもスタンダードとアレンジの両軸で展開していきます。インジェラや鴨だとクセが強すぎるので、こうした安全安心メニューも是非お試しくださいませ。

カオマンガイについては今のここに到着したかなという感」と言いつつも、この先、どこにどう漂流していくかも楽しみだったりします。「料理というのはすべからく流動的」と僕は思いますが(思うと言うかそう考えたほうが個人的に楽しい)、伝統や文化が重んじられ守り抜かれているからこそ(そうした方々がいるからこそ)、流動性が生まれ、物事を変遷、変容せしめるわけで、そう考えれば両社は背反するものではなく一体的なものだ、と邪道を突き進みながら改めて感じてます。


温故知新、覧古考新、紆余紆余曲折。


引き続き、紆余紆余していきたいと思っています。



一から出直してます②鴨飯編

J×J、一から出直してます。

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接客や内装、人柄や客層、クリンリネス、コミュニケーションなど飲食店を構成する要素や来店動機は色々あるかと思いますが、本質的な部分はさておいたとして、直接的に何が売上を上げているか、何を売り買いしているかというと、それは単純に「メニュー」になります。J×Jは開業から6年経った今、ここに初めてメスを入れる、というか、斧を振り下ろしています。メニューを変えたところで何も起きないお店もあるし、自店もその可能性もあるけれど、新しいお店を作るぐらいの勢いで、一からスタートするつもりで抜本的に見直してます。

メニュー数は今の時代それほど重要ではないし、むしろ絞って、強みとコンセプトをシャープに尖らせた方がいいのだと思いますが、今回取り組んでいるのはその対極です。J×Jはメニューを現行の30品から120品まで拡大します。

とは言え、今の20時までの営業時間でそれを対応するのは困難なので、6月28日より20時までの時短営業要請が解除されるまで、先行的にいくつかのメニューをピックアップして取り上げていきます。その一品目が前回ご紹介した「インジェラ」です。そして、今回の記事で取り上げるのは「鴨飯」です。6月28日より、インジェラとともに鴨飯を前面に打ち出していきます。

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鴨飯とはその名のとおり、鴨をのせたご飯です。香港が有名なような気がしますが、タイや中国でもあります。国や街、店によってそれぞれに個性があるのですが、J×JはJ×Jのスタイルでお出しします。

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J×Jでもこのようなスタイルでお出しできればいいのですが、これまたちょっと難しいので…

鴨肉の特徴は「鶏肉よりも固い」、「鶏肉よりも野性味がある」、「鶏肉よりも小骨が多く食べにくい」という3点が挙げられます。はっきり言って「鶏肉の方が美味しい」と感じる方のほうが多数派でしょう。逆に言えば、鶏肉にない魅力が鴨にはあります。野性味があり、弾力があり、肉々しいお肉を食べてる感がある、とも言えます。

 

先程の写真のようにフルサイズ(全羽)でお出しするのはマンボウ中は難しいので、

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フルサイズを4分の1にカットした状態の鴨飯をお出しします(写真は4分の1カット×4です。なので1人前はこの4分の1ですね)。基本はこの4分の1サイズの鴨飯(1人前)で1,500円になります。事前にご予約いただければ半羽(2分の1)、全羽もご用意できます。

もし時短が緩和されてせめて21時までの営業が可能になれば、インジェラ同様、他のメニューとの兼ね合いで事前予約が必要となるメニューになります。小さめのサイズで予約不要でご注文いただけるのは20時までの時短営業中のみです。先述したように鴨飯と言ってもいろんなタイプがあるのですが、J×Jは「鴨を焼いてから煮る」という「焼き煮」のスタイルでお出しします。この機会に是非お試しくださいませ。

一から出直してます①インジェラ編

J×J、イチから出直します。

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今までの在り方を全面的に見直し、新しいジャーニージャーニーを目指していきたいと考えてます。根本の根本はぶらさずにしても、スタンスや表現の仕方は従前から丸ごとひっくりかえそうかと。その転換を一言で言うなれば、「メニューのフルリニューアル」です。コロナ前のアラカルトメニューは約50品でしたが、ちょうど一年前にコロナの影響もあり30品に縮小、これにより単品・アラカルト注文でも大分スムーズに運用できるようになりました(元々はコースばかりだったので)。今後もこれくらいに絞った感じで続けていけたら、と思っていましたし、昨今の流れからすればそれでよかったのかもしれませんが、ばってん一転、結局、J×Jは現行の30品から約120品に増やすことにしました。

間違いなく大変な感じになります。ゲストがたとえその日2組であってもそれなりにハードだと思いますし、提供側の提供的事情はさておき、お客様をお待たせしてしまうリスクだってあります。そうならないようにする努力と工夫は当然として、その一方で、リスクは承知の上でちょっといったんズバッと振り切ってみようと思うようになりました。マイナスを踏まないようにリスクヘッジリスクヘッジを重ねて、取捨選択しながら、慎重に進めてきたつもりですが、そういうのはもういいかなと。リミッターを外して、予定調和をぶっちぎって、その先に何があるかちょっと冒険してみようという気持ちが開業から6年の歳月を経て、ふつふつとぐつぐつと湧いてきました。

という気概で、一から出直す気持ちで、なんなら新しいお店を作ってやるぐらいの勢いでGW以降、全リソースをそこに注ぎ込んできました。はやくぶっ放したいのですが、緊急事態宣言の延長に次ぐ延長、だらだらとぐだぐだ続く時短要請。今の短い営業時間の中で120品はさすがにどうにもならないので、20時閉店の間は期間限定メニューでお届けします。

そうした事情に伴い、J×Jは当面の間、インジェラ屋になります。「見た目は雑巾、味はゲロ」とバックパッカーの中で揶揄される、エチオピアの主食「インジェラ」。通常営業においてはおそらく要予約の商品になりますが、逆に今の機会だからこそ打ち出してみようと考えました。「見た目は雑巾、味はゲロ」。誰が最初にこう表現したかはわからないけれど、このフレーズは先述したようにアフリカを旅するバックパッカーの間では有名で、面白がってネタにする旅人も多くいます。でも、こうした風潮に違和感を覚え、一周中にインジェラについてのブログを書きました。もう9年前の記事ですが、ほんの少しだけ炎上しました(ボヤぐらいな感じですが)。インジェラが何故そう揶揄されるのかも書いてますので、興味のある方はどうぞ。

ameblo.jp


ちなみに小説『Journey×Journey』でもインジェラは出てきます。

jjakihabara.thebase.in


僕が一周中に現地で食べたのはこんな感じで、

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J×Jで出そうと思っているのは下記のようなイメージです。

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上にのせる具材は現地仕様を踏襲しつつ、半分はJ×Jのオリジナルにして世界一周感や多国籍感を出す予定です。料金は1,800円となります。


J×Jの「一から出直します」の初手であるインジェラ、好き嫌いと賛否分かれるところだとは思いますが、この機会に是非お試しくださいませ(J×Jは6月28日から18時〜20時の時短で営業再開する予定です)。JTVではインジェラを作る様子などもお届けしていきますのでこちらもどうぞよろしくお願いします。

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恋つづ-後編-

「一緒に行かないか?」

と、おじいちゃんは言った。

ここまでの過程でおばあちゃんは特に動じることなく、ただ静かにお茶を啜り続けていた。角度的に表情こそ読み取れなかったが、その堂々たる背中にただならぬものを感じていた。さてはおばあちゃん、やり手の女子だな、散々モテてきたな、と。一方、おじいちゃんはもうすでに見てられない。もう完全におばあちゃんに恋をしてしまってる。自分もこんな感じだったんだろうなと戦慄する。見てられない…。

答えがOKであれ、NGであれ、おじいちゃんのその直球をおばあちゃんがどう上手に返すか、僕は固唾を飲みながら、お茶を飲んだ。まだ3皿目なのにお茶を啜ってばかりだ。もはやタッチパネルでネタを選んでいる場合ではない。まさに今、僕の隣でどでかいネタが繰り広げられている。

おばあちゃんは湯呑を置き、カウンターに残されていた握りにここに来て手を付けた。咀嚼とともに沈黙が流れる。そして、

「こ、これ、お、お、おいしいね…」と苦しそうに言った。

完全にテンパっている。おじいちゃんのマグニチュードを遥かに凌駕する規模で激しく動揺している。

ちなみにおばあちゃんはその時食べた握りは「下足」(ゲソ)だった。ここで本日のおススメである金目鯛や鉄板の中トロであればともかく、下足に「旅行に誘う」というヘビー級の会話をぶった切って、話題を面舵一杯するほどの力はない(下足は僕も好きではあるが…)。しかも、おばあちゃんがどう「上手」に切り返すかを期待していた自分としては「下足」が個人的なメタファーとなって押し寄せてきた。じわじわとじわる。今、僕の隣でとんでもない邂逅が展開している。

おばあちゃんのその想像以上の動揺はおじいちゃんにとっても予想外だったようで、事態はさらに混迷した。

「あ、か、か、金は俺が全部払うからさ、だからそこはし、し、心配しなくていいからさ…」。

そこじゃねー、多分、そこじゃねー。そこだとしても今言わねー。

「金は天下のまわりものって言ってね、使わないと増えないから…」

だからそこじゃねー、そして多分この件に関してはまわしても増えねー。

「1泊だとあまりゆっくりできないからさ、2泊くらいしてさ…」

そこでもねー、絶対、そこでもねー。2泊ならOK、ってならねー。

おばあちゃんの方は「いや、それはちょっと…」という空気は醸すものの、かと言って、明確な否定もしない。波を立てずになんとなく交わしたいのであれば今は宝刀「コロナ」があるではないかと思うが、それを抜こうともしない。

「大丈夫、ちゃんと2か月前くらいに予約するからさー」

おじいちゃん、全然大丈夫じゃないよ。一回の表に7点取られてるのにその上で暴投してるようなもんだよ、それ。

「ほら、1か月前だと予約埋まっちゃってるかもしれないし、キャンセルとかになるとまためんどうくさいからさ…」

おじいちゃん…、空室状況も、キャンセルポリシーも今は気にしなくていいんだよ…。もう9点くらい取られてるのに気付いて…。

よほど白タオルの代わりにおしぼりをリングに投げ入れようと考えたが、結局その場はおばあちゃんが最後まで封じていた(封じてくれていた)「コロナが落ち着いたら…」という大砲を放ち、幕を下ろした。

 

この物語の結論は、

①コロナ、はやく落ち着いてほしい。
(おばあちゃんも多分まんざらではない)

②うずうずしているのは若者だけではない。
(おじいちゃんはコロナが落ち着くまでの間にちょっと落ち着こう)

酒類の提供禁止は解除してほしい。
(今日はおばあちゃんの隣で飲みたかった。おじいちゃんはお茶でよかったね)

④世の中の「お友達と言えばお友達」という関係は無限の意味と蓋然性を孕み、それは中学2年生であれ、70歳の男女であれ同様で、時に最もプラトニックで、時に最もエモくエロく、往々にして切ない(本当に切ない)。

 

⑤されど恋はつづく。
(どこまでも) 

 

 

 

 

恋つづ-前編-

ご夫婦と思われたその二人はどうやら「夫婦」ではないらしい。

回転寿司のカウンター席で僕は鱧の握りを味わいながら、隣の席に座る二人の会話からそんなふうに推察した。年齢は二人とも70代前半と思われる。特にこれといった特徴も変哲もない、穏やかで優しい感じのおじいちゃんとおばあちゃんだ。けれど、夫婦ではないし、兄妹や親戚に類する関係でもなさそう。お友達と言えばお友達なのだろうけれど、それだけで割り切れるような雰囲気でもなく、かと言って、スキャンダラスな匂いを漂わせているわけでもない。感覚としては「付き合ってるわけではない中学2年生の男女が横に座っている」が一番近いように思える。けれど、世の中の「お友達と言えばお友達」という関係は無限の意味と蓋然性を孕み、それは中学2年生であれ、70歳の男女であれ同様で、時に最もプラトニックで、時に最もエモくエロく、往々にして切ない。

「これって何て読むかわかる?」

とおじいちゃんは携帯電話の画面をおばあちゃんに見せた。

おばあちゃんはお茶を啜りながら「ぎんざんおんせん」と言った。銀山温泉山形県の大正浪漫の温泉郷

「いや、俺の携帯にさ、ここの温泉の広告がしつこく出てきてさ、行ってみてえなーと思っててさー」

「私もこの前、テレビで見たわよ」

「けっこうしつこく携帯に出てくるから、しつこくてさー」

広告のしつこさを不自然に連発している、というか、広告のしつこさをしつこく言及しているところに、おじいちゃんの動揺と心拍の乱れが伺える。僕の隣に座るおばあちゃんは身体をおじいちゃんの方に向けているので、僕は彼女の脈はおろか、表情を捉えることもできない。茶を啜り続けるおばあちゃんはおじいちゃんの胸の高鳴りと血圧の上昇を感じ取っているだろうか。


「でもさあ、広告見ると"2名様〜"ってなってんだよなー。1人じゃ行けねーんだよなー」

おじいちゃんは完全にドキドキしている。お寿司どころではない。

おばあちゃんを挟んで僕も完全にドキドキしている。僕もお寿司どころではない。

おばあちゃんはやはり茶を啜っている。

僕も箸を置き、仕方なく茶を啜る。

僕は茶を啜りながら、茶を啜るおばあちゃんの背をちらりと見る。なんだか、その落ち着きっぷりに数々の歴戦を超えてきた「やり手の女子の背中」に見えてきた。


「一緒に行かないか?」とおじいちゃんは言った。


僕の脳内ではOfficial髭男dismの『I Love…』のイントロが流れた。まさに『恋はつづくよどこまでも』 だ。

けれど、それはあくまで僕の脳内の話で、実際はいかにも回転寿司屋で流れていそうなメロディーがいかにも流れている。ちなみに今日のおススメは僕が食べた「鱧」と「金目鯛」らしい。そして、今、僕の隣ではおじいちゃんがおばあちゃんを銀山温泉へのデートに誘っている。