Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

「生産性」は本当に「生産的」なのか?

ウチの強みは「忙しい店ではないということ」。なんなら「わりと暇」です。

 
「あのさ、今まで働いてきた店の忙しさが100だとしたら、ウチってどれくらい?」とスタッフに聞いてみたところ、「60くらいですかね…」とのことでした。実際は50くらいでしょう、僕自身もそう思う、多分通常必要とされるカロリーの50%オフくらいでまわせている。このブログの存在がそれを証明しているはず。でなければ、金曜日の営業が終わったあとこんなブログを書く余裕はないのです(よほど切迫しているか、よほど変態的でないかぎり)。


僕がポイントしたいのはまさにそこで、当たり前だけども「忙しくないよ」とか「ていうか暇よ」ということをアピールしたいわけじゃない。大切なのは「何故、忙しくないのか」と「暇で浮いた時間で何をするか」、この2点を考え、突き詰め、そして極めることだと思っています。


小さな個人店で働くことの魅力とか、意義って「小さな個人店ってこんな感じ」ということを体感できること、これに尽きると思います。探せば他にも色々あるかもしれないし、人それぞれに人それぞれの幸福論があるので一概には言えないけれど、小さな個人店からすれば「小さな個人店を今後開きたいと思っている人」以上に採用と就職がマッチする人ってなかなかいないんじゃないかと思います。将来、野球選手になりたいなら野球を練習する、これがナチュラルであるように、将来、小さな個人店を経営したいなら小さな個人店で働いてみる、それもまあ基本的には当たり前かなと。そして、とにかく美味いラーメンを出したいのであれば、とにかく美味いラーメン屋で修業して、そのノウハウを自分なりに昇華させるというのは王道であり、有効なアプローチかもしれないけれど、アバウトに「自分の店をやりたい」のであれば、メニューだとかサービスだとかというよりもアバウトに「店のやり方」を学ぶべきだと思うのです。

 

美味しいラーメンが作れる=ラーメン店を継続的に運営できる、


という式は成り立たず、


客足がやまないラーメン店で修業を積む=独立できる、


という等号も当然あり得ない。こんな公式が成立するのであれば飲食店が潰れることはない。というか飲食店だらけになって、潰れる。
 

ラーメン店を継続的に運営する方法を教わる≒ラーメン店を継続的に運営できる、


独立する方法を教わる≒独立できる、


という式のほうがよっぽどロジカルに思える。でも、この式も相応のリスクを伴う。何故なら「教わる側」は「教える側」に対価を払わなければならないからだ。こうした領域は飲食店オーナーというよりもプロフェッショナルなセミナー講師やコンサルタントやプロデュ―ス業のエリアで、彼らが飲食店を100%成功させ、100%運営を継続させることができるのであれば成功者ばかりが溢れかえることになり、やはり潰れる。なかなか難しいけれど、それが単純に競争社会であり、それが単純に資本主義だ。「教える側」の賢い人たちは「教える範囲」をとどめるけれど、もっと賢い人たちはひたすら開拓だけしてあとは放り投げてグランドエスケープ、それは賢いというか「ずる賢い」ということになるのだけど、それはやはり単純に、やはり資本主義だ。

って考えると(こんなこと日夜考えてるわけではないけど)、「働いていただいた御礼として、当然の給料と、そして自分の成功体験と失敗経験はまるごと共有させて」というのは雇用主としては健全であり、健康的であり、精一杯の努力であり工夫かなと思うのです。ていうか小さな個人店の店主にできることってそれぐらいしかないっす。ていうかというか、俺にできることってそれぐらいしかないっす。けれども、1年かけてようやく育った成功と、1年かけてもまるでダメだった失敗をサクッと共有できるんだと思えば、それなりの意味はあるかなと。そういうシェアを全方位的にスムーズに行うことができればもうちょっと建設的な発展と継続を建設的に進められるのではないかと思うけど、そうならないのは共有する側が恩着せがましいor話がつまらないor話し方がつまらないor 話が長い、もしくは共有される側が「ジジイどもの武勇伝や苦労話なんてどうでもいい」とハナから受け付けないか、そのどれかだろうなと思うけど、おそらくそのどれも全てが該当するのでしょう。

 

こうしたギャップやズレと向き合うためには「忙しくないこと」とか「暇であること」、というか「余裕があること」ってマストな要素になってくるんです。大型であれ、小規模であれ、オープンからクローズまでずっと忙しい店ではこういうコミュニケーションはできません。少なくとも腰を据えてじっくりディスカッションすることはできません。ディスカッションするにしても、その内容は「どうすれば今のお店の売上を伸ばせるか」と「どうすれば今のお店の生産性を上げられるか」に終始し、個人の未来がフォーカスされることはほぼないと思います。

だから、求人広告の募集タイトル(キャッチコピー、50文字以内)は、

 

「自分のお店を開きたい方、独立に興味のある方、個人店の経営やお店作りを学びたい方に最適な環境です」

 

としました。募集要項のトップとなるこの50文字に至るまでに、死ぬほど長い記事を3発投下しました。僕は生産性をすごく大切にしています。その生産性のためには「商売繁盛」ではなく「商売不繁盛」を意識するべきだと思っています。

www.journeyjourney-blog.com

 でも、何故「生産性」が大切かと言うと、生産性を大切することによって、残りの40〜50%のカロリーを「非生産的なこと」に注ぎ、捧げ、そのありったけの「非生産的なこと」が結果的に「最も生産的」である、と確信しているからです。この記事を書きあげるのに所要ジャスト3時間、特濃のウーロンハイ5杯。次回の記事でいよいよ募集要項全体を記させていただきますが、願わくば募集要項全体を晒す前のご応募、お待ちしております。