Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

『J×Jの冒険』への冒険vol35.【馬喰横山歩道橋下黄昏メニューブック編】

メニュー作成は出店する人間にとって、最もわくわくする仕事の一つ。空間や接客を含め、飲食店はトータルなもので問われるけれど、その中心にあるのはやはりメニューだと思う。

 

 

独立する前の一年、僕は多国籍料理のダイニングバーでお店のメニューを提供しながら、自分ならどうするかというのを常日頃から考えていたし、その作業はやはり楽しかった。秋葉原から家に戻るまでの道の途中、コンビニに立ち寄って缶チューハイを買って飲みながら、思いついたアイディアやネーミングを書き留めていた。歩道橋の下に腰をかけられるスペースがあって、その場所がメニューをゆっくり考えるための事務所であり、勉強机だった。

 

 

あれこれ考えているうちに、テンションが上がってきて、またコンビニに戻り、もう一本買って飲みながらメモをとる、というのを繰り返していた。普段なら20分くらいで着くのに気付いたら一時間以上経っている、そういうことがざらにあった。ネタをあれこれ考える売れない芸人みたいだったし、お店にとってメニューというのは芸人におけるネタとまさしく同じものだと思う。

 

 

例えば、面白いネタを思いついたとしても、それを観客の前で実際に披露するのとでは勝手が異なるように、メニューもまた、「それを作れる」ことと「それをゲストに提供する」ことはちょっと違う。作り手は基本的にある程度の制限と束縛の中で料理を作っている。少なくとも僕はそうだ。時間が限られ、スペースが限られ、原価が限られている。そうした制限や束縛と上手に向き合い、工夫を凝らし、いかにして自分のパフォーマンスを最大限に引き出せるかが力量なんだと思う。店としても、作り手としても。

 

 

とは言え、物件が決まる前からそんなこと考えても仕方ない。僕は持てる全てのアイディアを気ままにとにかく絞り出し、ひたすら夢想し、理想論と朧げな未来に黄昏れた。缶チューハイを片手に、馬喰横山の歩道橋の下で。

 

 

いざ物件が決まり、いざ契約が始まるとメニューをじっくり熟慮するという時間はどこにもなかった。オープン直前に僕は慌てて「馬喰横山歩道橋下黄昏メニューブック」の中で無造作に散らかったメニューを整理し、現実に落とし込み、50種類くらいに絞り込んだ。

 

 

昨今、いわゆる多国籍料理店というのは随分身近になったけれど、エスニック寄りであることが多い。実際に自分もそうだし、その方がゲストに訴求しやすいということでもあるだろう。けれど、その点はマジョリテから離れ、世界一周の経験を十分に活かすべきだと考えた。多少、ハードルは上げてしまうかもしれないけど、まずは南米、アフリカの料理を幹として、そこから枝をつけるようにエスニック、西洋、テクスメクスの料理へと広げ、バランスを整えていった。

 

 

その一方で、自店周辺で「多国籍料理の店を出す」という時点で十分尖がっているという自覚もあった。きっと珍しいものを好む傾向より、保守の色合いの方が強い。であれば、あまり前のめりになるのもリスキーだ。無難なものは無難なもので無難に用意しておいたほうがいい。と、考えた。

 

 

あと考慮すべきはオペレーション上の問題だった。実際に物件を見てみると、やはり時間もスペースも原価も当面はかなり限定された状況になるということは容易に想像できた。注文されてからの工程が多いメニュー(仕込みでは追いつけない)は最小限に抑えた。

 

 

結局、50アイテムからさらに30アイテムに絞り込み、メニューが出来上がった。下の写真はメニューの試作時の写真(この一枚だけ残っていた)。

 

 

 

 

 

同時に、これをベースにあとは都度都度で修正と改善をかけていこうと思った。実際に走らせてみて、フィードバックして、ブラッシュアップしていく。物事の基本だ。

 

 

が、その「物事の基本」がこの一年の間に十分になされたかというとそれは甚だ疑わしい。メニューブックを刷新したのはオープンから1年2ヶ月経過した2016年6月現在であり、新メニューに関しては当然、改善と反省が反映されているが、「都度都度で修正と改善を」という意味ではこの1年、ほとんど何もできなかった。このあたりのスピード感と小回りがきくフットワークは今年の課題になると思う。

 

 

 

 

 

「作り手は基本的にある程度の制限と束縛の中で料理を作っている」

 

 

 

 

少なくとも僕はそうだ。そして、それはどこまで行っても続くものだと思う。

 

 

 

 

けれど、この1年の試行錯誤において、その制限をある程度和らげ、その束縛をある程度ほぐすことができたと思っている。その「自由度」の広がりはすなわち「成長」を指し示すものだろう、きっと。店にとっても、作り手にとっても。

 

 

 

 

 

 

馬喰横山歩道橋下黄昏メニューブックは卒業、

 

 

 

 

 

この6月よりリニューアルした新しいメニューブックをゲストの皆様が開いてくれるのが楽しみ。

 

 

 

 

秋葉原旅食ダイニング ジャーニー×ジャーニー

秋葉原旅食ダイニング ジャーニー×ジャーニー

ジャンル:旅食居酒屋

アクセス:JR秋葉原駅 昭和通り口 徒歩8分

住所:〒110-0016 東京都台東区台東1-13-9 BRIDD秋葉原1F(地図

周辺のお店:ぐるなびぐるなび 秋葉原×ダイニングバー

情報掲載日:2016年6月5日