Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

『J×Jの冒険』への冒険vol23.【A子とJ子】後編

2015年12月現在、ランチメニューは2種類提供している。一つは「カオマンガイ」。タイの代表的な屋台料理で鶏から出たダシで炊きあげたご飯の上に鶏肉を乗せたシンプルな料理で、地域によっては「シンガポールチキンライス」、「海南鶏飯」と呼ばれたりする。

 

 

 

 

もう一つは「シーズニングライス」。こちらは日替わりで世界各地の代表的な料理を炊き込みご飯にして、ご飯の上に乗せるというスタイル。「炊き込みご飯」という形をとることによって、

 

 

①気軽に楽しんでもらえるのではないだろうか(多国籍料理の敷居を下げられるのではないか)

②油の使用を抑えることができる

③表現の幅が広がる(アレンジが自由にきく)

④ワンプレートに収めることができる

 

と考えた。

 

 

 

 

メニューに関しては当面、レギュラーと日替わりのこの2品で進めることをあらかじめ決めていた。

 

 

その前提で、A子とJ子にヒアリングしたのは、

 

①予算感

②コーヒーやデザートなどサイドメニューについて

③ポイントカードの特典内容(どういう特典がついたら喜ばれるか)

④喫煙について

 

に加え、行動パターンに関して、

 

⑤行きつけのランチは何店舗あるか

⑥そのうち週に一回行くお店はどれくらいあるか

⑦いつも大体何人で行くのか、上司を含めて5,6人で動くことはあるのか

 

 

などの点について、確認した。

 

 

例えば、③のポイントカードの特典内容について。A子とJ子がそれぞれに言っていたのは「いくら特典内容が厚くても、それに辿りつくまでの道のりが長いとポイントを溜める気がなくなる」ということ。「だったら、すぐに溜まって、すぐに使えて、少し嬉しい気持ちになる、そういうちょっとしたサービスの方がいい」。そういう意見をいただいた。

 

 

来店頻度の見当がつかない上に、そもそも来客数が見えなければ、どんな特典が喜ばれるのかもわからない。であればなおさら、彼女たちの意見を踏襲した方がいいと考え、サービスの特典は「3回のご来店につき、コーヒー一杯サービス」と設定した(通常時は+100円でお替り自由)。

 

 

また、ディナータイムへの導線を敷くために5コ溜まったら「ドリンク一杯orピザ一枚サービス」とも明記している。5コ溜まったポイントカードをディナーではなく、ランチで使用する場合はコーヒーかデザートのサービス、どちらかを選べるように設定しているが、これについては

ポイントカードには故意に記述していない。5回来てくれている時点で、ある程度のロイヤリティを感じていただけていることは見い出せる、であればあえて明記しないことによってゲストとのちょっとしたコミュニケーションの、ちょっとしたきっかけになればいいなと考えた。

 

 

 

 

 

というような具合で、ヒアリングした内容を実際のオペレーションに反映させた。けれど、あくまで一部であり、その全てを踏襲するには至らない。初めの段階で手広くするとサービスが追いつかず、逆に迷惑をかけることになるかもしれないと懸念した。初めは削ぎ落として最低限で進め、徐々に肉付けしていったほうが賢明だと思ったし、今でもそう思っている。

 

 

実際にどうだったか、という話をすると、

 

 

オープン当初、ランチの客数は乱高下した。仮に水準が低いのであればそれはそれで対策を練ればいいという話になるが、何ら規則性のない極端な振れ幅に単純に翻弄された。このあたりについてはまた別の機会に書くことがあるかもしれないので割愛するけれど、いくつかの対策を講じながら8月に一度、目標水準で安定。対策が功を奏したという手応えはなく、何故かなんとなく、というのが正直なところだ。けれどオープンから4ヶ月経ってからのことだったのでこの安定は信用に足るものだと思っていた。

 

 

しかし、8月の安定も束の間、緩やかな減少傾向の中で今もなお乱高下を繰り返している。ランチは一定の水準で落ち着いてくれるだろうと思っていただけに、この振幅運動は正直想定外なのだけど、年が明けたら仕切り直してブラッシュアップさせたい。自分の思惑やA子とJ子からのヒアリング内容、そしてゲストからの声や気付きの中で、当初は実現できなかったことも段階的に投影することができると思う。

 

 

最後に、ポイントカードの特典の行方について。

 

 

5コ溜まったら「ディナータイムにドリンクorピザ一枚サービス」、「ランチで使用する場合、デザートかコーヒー」と設定したが、ディナータイムでの回収率はおそらく3%にも満たない(多分、8か月の間で10枚前後)。そして、男性客だけでなく女性客も含めてほとんどの人がデザートには反応せず、コーヒーに流れている。

 

 

思ったとおりに事が進む場合とそうでない場合がある。今のところ、どちらかと言うと後者の方が多いのだけど、特典のために用意した冷凍庫の中で眠り続けるホーキーポーキーアイスクリームもそのうちの一つだ。