Journey×Journeyと山本ジャーニーの冒険-独立・開業と「旅食」の航海日誌-

秋葉原の多国籍・無国籍のダイニングバー「Journey×Journey」。独立開業までの過程とオープン後の日々を綴る、山本ジャーニーの営業日報。

太らせない飲み放題-LCCコース(ローコスト&カロリー)/2H飲み放題3600円-DRINK編①

10月より新しくスタートさせた2号店での「LCCコース」(ローコスト&カロリーコース)。糖質オフ、カロリーオフのメニュー構成となっていて、メインはJ×Jオリジナルのエスニック鍋。

 

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リンクのようにFOODはヘルシー路線でメニューを構成しているのですが、今回のリニューアルに合わせてアルコールドリンクについても見直してみました。その核となるが「ウィスティー」。

 

「ウィスティー」というのは「ウィスキー×お茶(主に紅茶)」のこと。

 

かれこれ10年以上前にサントリーさんの「角」のCMがきっかけにハイボールが大流行、糖質ゼロ、カロリーオフという点が健康志向の高まりとも相まって、以来、ハイボールは居酒屋のマストアイテムになったわけだけども、個人的にはそんなに好きじゃなくて(ほんとに個人的な話だけども)、串揚げとかアジフライだとか、揚げ物系に合わせる時にしか飲まないんです(炭酸がしんどい)。

 
けれども、糖質だとかカロリーとかというのは一応僕も気にしておりまして(僕が言っても全然説得力ないのだけど)、日々お酒を楽しむにはそれなりに工夫しなきゃなーと思っていたところに生まれたのが「ウィスキーを無糖の紅茶で割る」という飲み方。これまた個人的にけっこう刺さり(美味しくて、かつ、少量でいい具合に酔える)、以降、ビールの次はウィスキー×無糖紅茶で定番化したのです。

 

今回、LCCコースを出すのにあたって、FOODだけじゃなくてDRINKも糖質オフ、カロリーオフにこだわろうと思い、「ウィスキー×お茶」のバリエーションを広げ、「ウィスティー」というオリジナルの商品群を以って、LCCフードと掛け合わせて展開してみることにしました。

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もともと「紅茶系」は相性いいだろうと思っていたけれど、せっかくだからということでいろんな「お茶」と合わせてみました。

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とまあ、こういう感じで、意外と合うものがあったり、やはり全然合わなかったり、期待外れがあったりと色々だったのですが、総じて言うと、やはり「紅茶系がよかろう」ということと「そのお茶自体が美味しくないといけん」ということで、次回の試作は紅茶好きのスタッフゆかさんに実際に煮出してもらい、改めて色々試してみようということになりました。DRINK編②に続きます。

 
LCCコースは糖質オフ、カロリーオフをコンセプトとしており、生ビールは飲み放題の対象外となります。生ビールをご希望の方は別途単品注文いただくか、+400円で飲み放題に変更をお願い致します。

 

太らせない飲み放題-LCCコース(ローコスト&カロリー)/2H飲み放題3600円-FOOD編

10月からの諸々の変更に伴い、

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2号店BOXにおいてはメニュー等々、わりとリニューアルをかけた。本店が貸切だったりすると2号店を案内・紹介することになるのだけど、その際「メニューは本店と同じですか?」と尋ねられることが多い。オープンの際は本店と差別化したいいほうがいいだろうと思っていたけれど(価格を本店よりも抑えて、もっとカジュアルなバル感覚に)、それよりも本店と同じであることを望む傾向が強い。だから今回のリニューアルに合わせて、本店と同じメニューの比率を増やした。


そしてもう一つの変更点は1.5H飲み放題2,980円のコースをメニューから外したこと。この2,980円コースは去年始めた施策で、上記同様、BOXをよりカジュアルにご利用いただきたいという想いに基づいているが、本店含めて今の状況を総合的に考えて、バランスが悪いと判断した。

 

代わりに新しく始めたのがLCCコース。「ロー・コスト・キャリア」ではなく「ロー・コスト&カロリー」のLCC。今までの2時間飲み放題が4,000円〜、だったのに対して、このLCCコースは3,600円。本店店内ランチの値上げをはじめ、どうしても値上げのイメージが先行してしまうので、その中で反対の要素を少しでも打ち出したかった。

 

文字の通り、カロリーオフ、糖質オフのコースで、FOOD全般、全てそうしたメニューで構成している。

①前菜3種盛り合わせ

→枝豆や冷奴や生ハム/サラミ、玉こんにゃくなどのいかにもカロリーが低いものを取り揃える。

 

②サラダチキンサラダ

→カロリーオフでありながら高タンパクで今やダイエットフードの代表格をサラダ仕立てに。

 

③J×Jオリジナルのエスニック鍋

→J×Jとしては初の試みとなる鍋料理。ナンプラーベースの出汁で、しゃぶしゃぶ仕立てにさっぱりと召し上がっていただく。具材も勿論、野菜中心のヘルシーに(と言ってもそれだけじゃさすがに物足りないので豚肉も用意)。

 

といった具合で健康志向に徹するのだけど、やはり品数は少ないし、何より面白みにかけるので、③の鍋を工夫してバラエティーと楽しさを出していきたい。

 

スタンダードはこうで、

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そして、トッピングで味変を楽しむ。

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けれどもメインイベントはこちら。山本の父が家庭菜園で育てたハバネロを投入し、激辛をエンジョイ!

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激辛料理はカプサイシン効果でデトックスにも最適。というわけで、このLCCコースとの親和性も抜群なワケです!!

 

でもこれだけでは終わりません、LCCコースは飲み放題ドリンクにも趣向を凝らしております!

 

 

 

 

令和元年10月1日よりの営業体系の変更及び価格改定について

もともとはこのお知らせを書かなくてはとブログを書き始めたのだけど、勝手にあらぬ方向に盛り上がってしまって、路地裏経済論としてくどくどとあれこれ書いてしまった。

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というわけで、消費税増税及び諸般の事情により、10月1日から営業体系の変更及び価格改定を行ってまいります。お客様にはご理解賜り、今後とも変わらぬご愛顧の程何卒よろしくお願い申し上げます。お店としてもなお一層の努力を以って、日々の営業に励んでまいります。

営業時間の変更

 本店、2号店ともに23時クローズとさせていただきます。

(FOODのラストオーダーは22時、DRINKは22時半となります)

 

*なお貸切終了後やゲストがいらっしゃらない場合、早めに閉店することもございますので遅めのご来店の際はお電話にてご確認いただけますと幸いです。

価格の改定 

◆本店ランチタイム

・店内でのランチメニューは850円となります。

・大盛は900円のまま据え置きとなります。


◆本店お弁当販売

・一部商品除き、500円のまま据え置きとさせていただきます。

*Japan弁当のみ550円となります。

・現行800円の2種盛りのお弁当は750円に値下げ致します。


◆本店ディナータイム

・2H飲み放題の世界半周エコノミーコース/4000円は2号店のみの取り扱いとなります。本店においては2.5H飲み放題スタンダードコース/4500円、または3H飲み放題プレミアムコース/5,000円からお選びいただきます。

 

◆2号店ランチタイム

・現行のまま変更ございません。

 

◆2号店お弁当販売

・上記、本店と同様になります。

 

◆2号店ディナータイム

・1.5H飲み放題2980円のコースがなくなり、代わりに2H飲み放題3,600円の新コースが始まります。


メニューの改定

 ◆本店ディナータイム

・海外ビールの品揃え及び価格に一部変更がある以外は変更ございません。


◆2号店ディナータイム

・グランドメニューをリニューアル致します。またタップマルシェは販売中止、代わりにウィスティーという新ジャンルの販売が始まります。

 

10月1日よりの変更内容の概要は以上となります。一部につきましてはまた別記事で詳細をご紹介させていただきたいと思っております。何卒よろしくお願い致します。

 

 

 

「ヤマモトさん、あなた、今日死ぬかもしれないの」物語vol3

一刻も早く痛みを和らげるために病院に駆け込んだわけだが、結果的に8時40分から11時まで何らの処置もされないまま、ただただ時間だけを浪費することになった。こんなことになるなら初めからドラッグストアでロキソニンだけ買えばよかったじゃないかと思ったが、この期に及んでその場しのぎもなかろう、まずは何はともあれ市販では太刀打ちできない正しくかつ強力な薬を飲むべきだ。と思いながら、医師から渡された処方箋を見ると「ロキソニン」と堂々と書いてあった。よくもまあこの期に及んだな、よくもまあその場でしのんだな、と思った。かつての戦場で死んでいった喉ぬーるスプレーやハレナースに思いを馳せた。

とは言え、他の薬も出ていたので気を取り直して薬局に向かったが、薬局は薬局で絶望的な列をなしていた。20人は座れるであろうベンチシートに20人がきっちりびっしり座っていた。この場所にいることと、この時間を過ごしていることが最も不健康だと結論づけた。薬は諦めて、行きつけの耳鼻科(と言っても1年に一度行くかどうか程度で、いかにも古びたいかにもレトロな耳鼻科でまるで人気はない)がある秋葉原に向かうことにした。現在の時刻は11時10分、診療時間はあと50分。さすがに自転車はしんどい、おとなしくタクシーを拾うことにした。


接客は至極丁寧な初老のタクシードライバーだったが、運転が荒かった。走行開始早々、並行して走るバイクと接触しそうになった。その大型バイクを運転しているのはギラギラしたお兄さんで、そのお兄さんの前にカンガルーのように子供が座り、ゲームをして遊んでいる。お兄さんはあからさまに戦闘モードで、威嚇的にオラオラし、挑発的にチラチラしている。今にも絡んできそうな勢いだが、タクシードライバーは見て見ぬふり、子供はその局面においてなおゲームに夢中だ。


もしここで煽られようなら、タクシーを停車させられるようなことがあったらいよいよK点突破だなと覚悟した。万策が尽き、万事が休し、絶対に絶命だ。時間はないのだ。12時を過ぎれば、セカンドオピニオンももらえないし、強力な薬を処されることもないままま、僕は破れかぶれのロキソニンを飲んで、痰がつまって窒息することを想像しながら、恐怖の一日を過ごすことになるだろう。その状況そのものにもはや呼吸困難だ。ところでドライブレコーダーにはどう映るだろうか。日本全土に悪名を轟かせた「ガラケーおばさん」の姿が脳裏に浮かぶ。僕らはなんと命名されるだろう、「ゲームボーイ」に「扁桃腺おじさん」だろうか。「痰メン」、いやいや、「痰痰」、いやいや、でもシャンシャンみたいでかわいいじゃないか。そんな虚ろなことを虚ろに思い描いていると、バイクは何事もなく左折していった。

 

程なくして目的地の耳鼻科に到着。またさっきの病院みたいに混んでたらどうしようと恐る恐るドアを開けると、待合スペースには一人いるだけ。よかった、これだよこれ、と多いに安堵して受付へ。保険証を渡し、「ではおかけになってお待ちください」と言われ、腰を掛けようとすると奥から「ヤマモトさーん、どうぞー」と呼ばれた。先にいた一人はすでに会計待ちのステータスだったのだろう。ということで待ち時間0秒で診察室に呼ばれた。「ここがヤブだったとしてももう別にかまわない」という支離滅裂な境地に達するほど僕は消耗していて、錯乱していた。

 

「あー、扁桃腺が腫れてますねー」と医師は言った。ああ、そのとおりだ、と僕は思った。僕は恋の病を患ってこの寂れた耳鼻科を訪れたわけではないのだ。ご存知のとおり、地球はまわっていて、海は広く、空は高く、そして、僕の扁桃腺は腫れている。「じゃ、お薬だしとくねー」と言って診察は終わった。多分ドアを開けてから診察が終了するまで260秒くらいだ(4分は経過しているが、5分はかかっていない、そんな感じだ)。生死を彷徨ったあの2時間20分の攻防戦は一体何だったのだろうか。「せ、せんせい、さっき別の病院に行ったんですけど、これを見せろと言われて…」と慌てて写真を差し出した。「入院の必要があると言われたんですけど…」と恐る恐る尋ねる。

 

「したかったらしてもいいけど…」と医者は言った。立派なセカンドオピニオンだ。したかったらしてもいい、したくなかったらしなくてもいい。死を示唆されたことも言おうと思ったがやめた。痰はつまるかもしれないし、つまらないかもしれない。死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。これほど武装されたオピニオンが他にあるだろうか。


結局、今日のところは死なない方にベットした。多分、今日は死なない。

 

薬を飲んで仮眠をとった。起きると、腫れは引いていた。拍子抜けした。


けれど、少なからず「ああ、よかった、死んでない」と思ったのは事実だし、そんなことを思ったのも生まれて初めてのことだ。 


 

地球はまわっていて、海は広く、空は高く、そして僕は生きている。

 

 

っていう、「風邪をひいた」、って話。

 

 

っていう、「風邪には気をつけようね」、って話。

 

 

 

 

「ヤマモトさん、あなた、今日死ぬかもしれないの」物語vol2

アベンジャーズ-エイジ・オブ・ウルトロン-』を鑑賞し終えると他に気を紛らわすものはなくなってしまった。朝6時。寝れればそれに越したことなかったけれど、おそらくは無理だろう。規格外の痛みだ。であれば、とにもかくにも最速で病院に行くのが賢明だろう。幸い土曜日、午前中の診察は大体どこも行っている。

グーグルで検索するといくつかクリニックが表示された。僕はその中でできるだけ評価が低い、患者が少なそうなところを選んだ。僕が望んでいるのはこの扁桃腺の痛みを少しでも緩和することその一点のみで、あとは何も求めない。先生の診察が雑、受付が不愛想、そんなレビューどうだっていい。受付の愛想の良し悪しが僕の扁桃腺に何か関係するだろうか。おそらくこのレビューを書いたレビュアーの体調にも全く関係がない。けれどこうした評価をあたかも正義を振りかざすかのように書く人がいる。ジョン・レノンがそんなこと書くだろうか。イチローはどうか、ブラッド・ピットはどうか。ストレス社会が生んだストレスフルな人のストレスフルな評価なんてまず評価できない。

診察開始は9時にも関わらず、いてもたってもいられず8時40分には目星をつけていたクリニックに到着した。が、その時点で15人ほどの患者が待機していた。マジかよ、と愕然とした。9時前に並んでもいいなら並んでもいいよ、って書いてよ。けれど、ここから他のクリニックに移動する気力はない。もう痛すぎて自然な呼吸もままならないし、水を飲むにも勇気と深呼吸を要する、声を発することもできない。ここでじっと並びながら、耐え忍ぶしかないのだ。そもそも、それだけ悪いレビューを書かれるっていうのはある意味人気の裏返しでもあるのだ。分母が大きいから単純に、相対的にそうしたネガティブなレビューを書かれる。ほんとに患者がいない不人気なクリニックであれば、ネガティブなレビューすら出てこない。

 

ようやく自分の順番になった。ここまでに1時間要している。

 

「ヤマモトさん、これ、もう入院かもね」と女医は言った。女医に雑な感じは受けない、むしろ聡明でクレバーな印象の方が強い。けれど「入院」というワードには驚いた。なんなら僕はロキソニンをもらいに来ただけ、ぐらいの心持ちだったのだ。「ごはんもろくに食べられないんでしょ?栄養とらないと治るもんも治らないからさ、点滴入院しなきゃだよ」

 

しまった、と思った。「全然食事もできなくて」なんて言わなきゃよかった。

 
「喉もちゃんと見てみるねー」と言い、SF映画に出てくるような得体のしれない器具を鼻の穴からするすると忍ばせた。

 

「あー、思った以上に厄介だね。写真撮るね。ヤマモトさん、これ、ちょっと危険だよ。場合によっては気管、開けなきゃかも。つまり手術かも」。

 

といった具合に状況はどんどんエスカレートしていって、最終的には、

 

「はっきり言うと、思っている以上に危険な状況よ。ヤマモトさん、あなた、今日死ぬかもしれないの。この写真に写ってる痰がね、もし喉をつまらせちゃったらきっちり呼吸困難になる、つまり窒息」。


人生で初めて聞くワードを一文でどれだけ盛り込むんだ、と思った。危険な状況、呼吸困難、窒息、「死ぬかもしれない」。三連休の初日の暖かい土曜日、鳥のさえずりが先ほど始まったばかりの穏やかな時間、僕は生まれて初めて死を示唆された。耳鼻咽喉科にて。

 

耳鼻咽喉科にて‼

 

…。

 

けして耳鼻咽喉科を軽んじるわけではないのだけど、「死」というパワーワードが繰り出されたことによって僕はちょっと笑ってしまった。緊張感の張りつめた心臓外科でもないし、生と死が隣り合わせの救急病棟でもない、待合スペースでは子供たちがキャッキャしている極めて温かで、穏やかな耳鼻咽喉科なのだ。テレビは散歩番組を放送している。今日は小田原だ。

 

「入院を受け入れてくれる病院があるかどうか確認してみるからちょっと待っててねー」と言って、女医は段取りよく、事を進めていった。こういう場合、入院を拒否できる選択権が自分にあるかどうかも判然としないくらい意識は朦朧としていた。

 

いや、あるだろう。僕がここで入院しなかったとしても、パンデミックが起こるわけででもないし、アウトブレイクを誘発するわけでもない。ただただ扁桃腺が腫れてるだけなのだ。

 

 「いや、今から入院って言われてもさすがに困るんですけど…」

 

「でも医者としてはこの喉と痰を見て、そのまま帰すってわけにはいかないんだよね。診た責任があるし、診た以上何かあったら大変だからさ」

 

確かにつらいが、ほんとうに死を示唆されるほどなのだろうか?たかが痰、されど痰、この痰があらゆる痰の中でどれほどクリティカルな座標にいるかはわからないけれど、さりとてそんなことを言い始めたら、痰を抱えた全ての人類が死を示唆されることになるまいか。

 

しかしながら、女医が進める段取りに抗うほどの気力はあらず、とりあえず流れに身を任せることにした。この時点で1時間半経過。繰り返すが、僕が望んでいるのはこの扁桃腺の痛みを少しでも緩和することその一点のみ、なのだ。僕が抱えている痰という爆弾の行方でもなく、その爆弾を解除できる大病院を探しているわけでもない。

 

待てども待てども動きはなく、膠着状態が続いている。扁桃腺の痛みは続いたままだが、意識の輪郭は取り戻しつつあった。僕は看護師さんを呼んで精一杯の力を振り絞って「ちょっとやっぱり今から入院っていうのは困るんで、普段通っている行きつけの耳鼻科に行って診察を受けてみたいと思います。そこでセカンドオピニオンをとって判断させください」と自分の意思を告げた。看護師は「やれやれ」といった表情で、僕の意思を先生に伝えにいった。やれやれ、「やれやれ」は俺の方だ。セカンドオピニオンなんて初めて口にしたわ。オピニオンもなにも「痰」だぞ。


再び診察室に呼ばれた。今度はまた違う医師が座っている。

 

「院長の〇〇です」と医師は名乗った。心の底からの「やれやれ」だと思った。このデッドレースは一体どこまで続くんだ?もはや逆説的に扁桃腺なんてどうでもよくなってきた。


改めて院長先生からの口からも「死」というワードが放たれた。「痰が絡んで呼吸困難で窒息死」というのはそれほどメジャーな死なのだろうか。僕がニュースを見ていないだけだろうか。それにしても同じ窒息死でも餅に偏重しすぎてはないだろうか?このまま僕がそんなような死に方をしたら、それはどのように報道されるのだろう?あるいはまったく報道されぬまま、よくある死として処理されるのだろうか。

 

結局、最後の力を振り絞って入院は拒否した。

 

「そしたらこれからいく耳鼻科の先生にこの写真を見せなさい。多分、その先生も同じ判断を下すと思うわ」と語気強めに吐き捨てられた。怒らなくてもいいじゃないか。

 


その写真には僕の喉につまる僕の痰が映されていた。溜息をついても喉が痛む。

 

 

 

 

「ヤマモトさん、あなた、今日死ぬかもしれないの」物語vol1

その夜はとてもいい夜だった。

 

美味しいものを食べたあと、暑くもなく寒くもない夜を散歩し、もうこれ以上にないと思えるほど寸分違わぬ良き心地を乗せた夜風にあたりながら、ビールを飲んだ。散歩を終えると今度はアイリッシュバーに入り、やはりビールを飲む。オリーブのあとに、アイリッシュソーセージ&チップスが運ばれ、これがまた劇的に絶妙で、終電まであとわずかということも知りながらも、何らの罪悪感も良心の呵責もなく、それどころか勢いというのも特に持ち合わせぬまま、慣性に寄り添うかのようにただただ静かにこれを乗り過ごした。

 

そして、そのまま朝を迎えた。その朝もまたとてもいい朝だった。

 

この時はまだ、4日後の朝に死を通告されるとは思わなかった。

 

朝まで遊んでいたと言ってもそんなに飲んでもいないし、前日にたっぷり寝たことからそれほど疲れてもいなかった。早朝、家に戻り2時間眠ると自分でもびっくりするぐらいスッキリしていた。お店に出勤し、ランチ営業をこなし、ディナーまでの間はまた眠り、夜の営業が始まる。予約も入ってなかったので落ち着いた夜で、ある程度仕込みが進んだところで引き継ぎ、夜20時からの採用面接に臨んだ。面接と言っても内定の旨は通知していて、残すは細かい確認と擦り合わせ、それも早く切り上げ、あとは雑談。


「学生の頃、新聞配達をしてまして。夜の2時半に起きて5時から7時まで配達、そのあと学校に行って、学校から戻って夕刊をまた配達します。それを2年」

 

「マジで?すごくない?そんなのできたらあとはなんだってできるじゃん」

みたいな話をしている最中に、自分の身体に異変を感じた。あれ、ちょっと熱っぽいな。

面接を終え、本店の営業も終わり、まかないを食べる際に僕は強いお酒をぐいっと飲んであとはゆっくり寝ようと思って、焼酎を注いだが、どうにも進まない。やばい、これ、多分もっと悪くなるやつだと思って、まかないの途中に先に帰ることにした。4年半営業しているがまかないの途中で帰るというのはこれが初めてのことだった。

 

家に帰ると案の定、激しい悪寒が全身を駆け巡り、全身がガタガタと震えだし、布団から出られなくなった。体調を崩した時特有のちょっとした悪夢みたいなものにうなされて、寝れてるのか寝れてないのかよくわからない曖昧な時間を過ごした。3時をまわったところでこのままじゃダメだ、何か手を打とうと震い立ち、部屋の暖房を30℃に設定し、ギリギリのラインの熱湯をシャワーで浴び、風呂上がりに「蒙古タンメンの北極」のカップラーメンを食べた。するとさっきまであれだけ寒かったのに全身から汗が噴き出した。オーケー、これでいい、正しいのかどうか定かではないが、今はとにかく全身から汗を絞りだそう。

この甲斐あってか少しスッキリした。そして、そのまままた曖昧な眠りについた。


翌朝起きると熱は引いていたが、今度は空前絶後の倦怠感とだるさを身に纏っていた。人生史に刻まれるほどのだるさで、何とか出勤はしたが、ランチのスタンバイにあくせく動くスタッフを横目に「ごめん、10分だけ横になっていいかな」と言って横にならせてもらった。これもまた初めてのことだ。どれだけヘビー級の2日酔いになったとしてもこれはない。けれど座ってることもままならないほどのだるさだったのだ。

 

その日を何とか乗り切ると気だるさは多少和らいだものの、今度は喉の痛みが台頭し始めた。やれやれ、だった。症状が刻々と一日単位で変わっていく。火曜の夜に感じた異変(微熱)は木曜日には喉の激痛へと変貌していた。そうとは言っても喉が痛いだけなので名刀「のどぬーるスプレー」(小林製薬)で対処していた。僕はこの名刀に絶大な信頼を寄せているのだが、いつもと違ってどうも効き目が弱い。というよりも、吹きかけた時の痛みが尋常じゃなく、呼吸を見失うほど。もはや自ら患部に毒を吹きかけているようにしか思えなかった。

そう疑心を持ち始めた時、今度は奥底からヤツが蠢動をはじめた。これはまさか世に言う扁桃腺か…。扁桃腺が異常に膨れ上がってるのに気づき、今度は対扁桃腺用に組織された特殊部隊「ハレナース」(小林製薬)を投入。これで引導を渡せると思った。

 

金曜の営業を終え、いったん安堵した。症状がよくならなかったとしても明日はゆっくり眠れるし、病院にも行ける、と。ハレナースの効力あってか、痛みも幾分引いていたし、多少気を緩めていた。が、いざ寝てみるとどうにもこうにも痛い。どうにかこうにか寝ようと試みるが、どうにもこうにも扁桃腺が膨張している。爆発寸前のセルみたいだ。

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どうにも寝付けないので、気を紛らわせるために借りていた『アベンジャーズ-エイジ・オブ・ウルトロン-』を観る。クライマックスのシーンでヒーローのキャプテン・アメリカが味方を鼓舞するために「倒れるまで戦おう、そして、死んだら立ち上がれ」というパワーハラスメントの極致のようなことをとても堂々と、とても勇ましく、声高に叫んでいる。

 

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朦朧とした意識の中で「死んだら立ち上がれ」という言葉が繰り返される。

 

…。

 

 

…。

 

 

結局、そのまま眠ることなく、病院に向かった。

 

医者が僕に言ったのは「ヤマモトさん、あなた、今日死ぬかもしれないの」ということだった。

 

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死んだら立ち上がれ

 

TOKYO都台東区アキバ系路地裏経済論④Fin

もともとは消費税についての話だったのだけど、こういうことをこうやって書くこともなかなかないので、いい機会だと思って、特にまとまりを考えることなく、話を大きく迂回旋回しながら思いのまま書いてみた。


J×Jの運営のことだけ考えれば、景気が後退しようとも、パワフルな外国人労働力がどれだけはいってこようとも、世の中から歓送迎会と打ち上げとオフ会と忘年会がなくならないかぎり、それなりには運営していけるだろう。けれど、たまに意識を意識的にオーバーに広げてみるのも悪くない。いくら路地裏の小さな店の経営者と言えど、経営者であるならば、目の前のことだけではなくちょっと遠くまで目をすぼめなければならないし、視野だけでなく、視点も、視座も、ポジショニングをうまく変えながら、色々な角度を試していかなければならない。


例えば「消費税10%」というワードを単一角度でフォーカスするならば「ああ、税金がまた増えるなあ…」になってしまうのだけど、いくつかのポジションからいくつかのフォーカスで眺めると、そのワードはもっと立体的になり、他の側面が浮かび上がる。そうした周辺状況や周辺情報をひっくるめて、課題にアプローチした方が遠回りに見えて、案外解決の糸口が広がっていたりする。

 

重複になるが、僕はこの増税をわりと重く捉えていて、結果、10月1日からいくつかの改定に踏み切る。うまくいけばいいけども、うまくいかないかもしれない。仮にうまくいかなかったとしても、どうにかするしかないのでどうにかするのだけど、僕が今この路地裏で思うことは「日本を運営している皆様、みんな負担が増えるんだから、その分今よりもちょっとだけいい世の中にしてくださいよ、頼みますよ」ということで、およそ「経済論」とは呼べない、平民のただただ単純な「祈り」だ。

 
でも結局、つまるところそこに尽きる。2%分、世の中が少しでも充実、もしくは好転するならば納税する側も納税冥利につきるというもので、ここがあやふやにされてしまうとただやさぐれるだけだ。

 

以上、TOKYO都台東区アキバ系路地裏経済論、消費税編。

 

 

 

TOKYO都台東区アキバ系路地裏経済論③

自店は中小でもないし、スタートアップですらない。ただのイチ飲食店だ。そうした最弱の存在に救いの手はないかと言うとあながちそうでもない。税金は事業主にとって確かに荒々しいものではあるのだけど、一方で時に筋道を示す。

例えば、助成金補助金

これは挙げだしたらキリがないのだけど、この4年間で僕が実際に申請し、実際に受理されたもので言えば、

【小規模事業者持続化補助金

これは商工会議所管轄で、ごく簡単に言えば、店舗運営のために設備などを導入した場合にその3分の2を補助しますよ、というもの。上限70万。なので70万で内装をリニューアルした場合、その3分の2相当の46万を補助してくれる。すなわち通常であれば70万かかる買い物が24万で済むということになる。*これについては別途ブログで詳細を書く予定

 

【キャリアアップ助成金


厚生労働省管轄。キャリアアップ助成金というのは総称なので一言で表すことはできないのだけど、厚生労働省のHPに記載された概要には、

有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(以下、「有期契約労働者等」という。)の企業内でのキャリアアップを促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成をするものです。


と書かれている。

これらは税金や雇用保険料をベースに予算が組まれているもので、こうした補助金助成金の要件を満たし、申請することはある意味、自分が納めている税金の有効活用するという側面も持つ。だから税金に嘆くばかりではなく、逆にそれを活用するためにはどうしたらいいかも事業主は模索すべきだと思う。例えば50万の助成金が支給された場合、飲食の損益計算書上10%の純利益を目安とするなれば、50万というのは500万の売上相当となる。500万という売上が高いのか低いのかは勿論店舗によってそれぞれだが、10〜20坪の店からすれば繁盛店であれ不振店であれ、それなりの金額ではあると思う。

僕自身はまだ取り組んだことはないのだけど、インバウンド/外国人/外国人留学生が要件になっている補助金助成金に興味を持っている。これまたかなりの数があるし、ややこしいものも多いのだけど、例えば英語表記のメニューブックを作成したり、外国語表記のHPを用意したりした場合に補助されるものもあれば、外国人を雇用した場合に発生する助成金もある。人手不足が深刻な飲食業界もチェーンだけでなく、個人店ももう少し目を向けてみてもいいんじゃないかと思っている。


数年前、コンビニに外国人スタッフが入るようになった時、大丈夫なのかなと心配したけれど(勿論うまくいかないケースも多々あるかとは思うが)、コンビニにおける外国人労働者の数は飛躍的に上昇し、都内においてその光景は日常と化している。飲食においてもこの傾向は今後より加速していくだろう。

 

社内に中国人の営業やインド人のSEがいるなんていうのはけして珍しくないはずだが、浸透度で言えばグローバルに展開する大企業の方が高いと思える。中小の外国人雇用へのアプローチはまだ甘く、つまり現在日本で働く外国人は極端に2極化している。エリートの方々は大企業で働き、留学生を中心とした若年層はコンビニや飲食店で働く。建築現場でも外国人労働者を多く見かけるようになった。


けれど、この2極化もやがて徐々に解体されていくだろう。もっと普通に、もっと日常的に外国人雇用が至るところで発生していくことになると思う。グローバル化とは日本人が海外に出やすくなることではなく、海外から日本に人材が入ってくることを指し、良くも悪くも切実だ。J×Jの内装事業において解体をモンゴル人の業者にお願いしているのだが、内装のハヤカワは「彼ら、めちゃくちゃ働きますよ。仕事、全部彼らにとられちゃうんじゃないですかね?」と言う。また最近、担当する飲食店のオーナーが中国人が多いことも懸念している。この夏、ハヤカワが関わった2件の店舗は2件とも中国人がオーナーだ。「そのうち中国人だらけになりそうですよね、彼ら、資金力とマンパワーがあるから若い個人事業主なんて太刀打ちできないですよ」。

 

そもそも少子化で日本人の労働人口が少なくなってきている中、海外から労働力を招致するのはもっともな話だ。けれど、お金が日本国内でまわらなければ景気的にはあまり意味がないように思えるし、そもそも若い外国人労働者のパワーと野心が本気で押し寄せれば、一部の貧弱な日本人はひとたまりもないのではないだろうか。近い将来、「甘ったれた日本人よりもハングリーな外国人の方が働き者だぜ」と言って、外国人の採用を優先する経営者が多くなってきたとしても不自然ではない気がする。

 

これに加え、国から補助金助成金が出るのであれば(そう長くは続かないと思うが)外国人採用も先行して積極的になるべきではないかと考える。AIは確かに世の中の多くの仕事を人間から剥奪するだろう、けれども同時にAIと対極に位置するシンプルかつハングリーなマンパワーも単純に脅威だ。働き方改革コンプライアンスもライフワークバランスもあくまで仕事と働き口があっての話であって、仕事そのものがなければ改革もバランスもない。日本国内において右へ倣えの挙国一致で「ゆとり」を謳歌したとしても、国際社会は競争をやめないし、情報化はよりシャープに、よりドライに労働そのものを、労働者そのものを合理的に仕分けしていくのだと思う。

 

そう考えればこの手の話は「ゆとり教育」の功罪を問う議論に似ている部分があると思う。大義を掲げて教育の改善に取り組んだが、国際学力テストで順位を落としたことで学力低下が指摘され、結果的には「脱ゆとり」へと方向転換した。「あれ、気づいたら他の国に抜かされてました、てへへ」というのが国家規模で起こってしまったとしたら、それは「やっぱり円周率は3.14にしましょ」では済まされないような気がする。

授業時間も労働時間も削減そのものが目的ではなく、円周率が3であれば「ゆとり」が生まれ、残業がなければ「バランス」が生まれるというものではないはずだ。重要なのは効率化によってもたられた時間をどう使うかであり、ゆとりによって何を生むか、何が生まれるかであるのにも関わらず、この部分に関しては誰も何も追わない。逆に考えれば、そうした趨勢であるからこそ逆張りは有効であるかもしれないし、抜きんでる人は抜きんでる。結局のところ、何がどうあれ、やるやつはやるし、やらないやつはやらないという原理主義だけが静かに佇む。

 

 

TOKYO都台東区アキバ系路地裏経済論②

飲食のつながりの中でも楽観的な経営者と悲観的な経営者とに別れる。


もともと税抜き表示をしている店にとっては「×0.08を×0.1にするだけだからさー」と言う。そう言ってしまえばそうなのだけど、軽減税率の絡みがあるのでそう安直にもなれない。

今まで税抜き100円のものを仕入れたとき8円の消費税を払い、税抜き200円で売った場合、16円の消費税をゲストから預かることになる。この差額、16円-8円の「8円」を事業主が税務署に納めなければならないのだが、軽減税率が適用されることによって、仕入れは8%のまま、けれど納税は10%になるので、このケースで行くと20円-8円となり、納税は12円となる(実際には仕入れだけではなくその他の経費も絡んでくるので一概には言えないが)。

それにしたって、事実上売上があがるんだからいいじゃん、となるのだけど、それはあくまで増税後も来客数と客単価に変化がない場合だ。これに加え、売るものが弁当やケータリングの場合、8%で販売することになる。この場合、従来のままで変わりないように思えるが、実際には包材や各備品、各経費に関しては実質値上がりすることになるので、提供価格を変えなければ単純に利幅は狭まる。


このように増税の影響度はケースバイケースではあるが、自店に限って言えば、僕は増税の煽りをモロに受けるのではないかと思っている。その煽りをどうすれば抑えられるか、どんな工夫が必要なのかを考え、対策を講じていかなければならない。

というのを前々から考えていて、10月以降、諸々の変更を施していくのだけど、それについてはまた別途別記事で紹介していくとして、この消費税10%をもうちょっと深堀していきたい。

消費税10%とともに令和元年10月より変わるもの、「最低賃金」。最低賃金はわりと頻繁に改訂されてるし、消費税が上がるタイミングに合わせて最低賃金が上がるのも自然と言えば自然。でもこれはあくまでボトムの話であって、消費者全体に恩恵のある話ではない。

これとは別に毎年、春季労使交渉(春闘)がある。春闘とは毎年2月頃に賃金のベースアップ(ベア)や労働条件の改善を労働組合側が経営陣に交渉する労働運動のこと。安部政権は2013年以降、消費税増税を見据え、法人税の減税と同時に毎年のように賃上げ請求を経済界に訴えている。去年においては「3%」という具体的な数字まで提示したが(実際は2.54%だった)、本来、労使に委ねられる賃上げ交渉を政府が介入・牽引することは「官製春闘」との批判がある。今年に関しては数値目標の設定は避けたが、賃上げ請求への期待に変わりはなく、結果的には2.46%に着地。例年2%未満というのがほとんどだっただけに、去年は下回るにせよ、悪くない数字なのだろう。

 

要は、「社長さん、法人税を下げますよ」→「そのかわり、従業員さんの給料に反映させてね」→「従業員の皆さんはこのベアをもとに消費税10%に備えて」、という話で、目標値には届いてないにせよ、流れとしてはそうなっているし、数字的にも動いている。そもそもそうでないと消費者は単純に2%の負荷を単純に背負うことになる。

けどまあ、これもまた大企業の話で路地裏の飲食店にはあまり関係のない話だ(もっともこうした循環の一部に「じゃあ今度の打ち上げはJ×Jにするか」という話が少しでも紛れればそれは幸いなことなのだけど)。安倍政権の経済政策を批評する際、よく大企業優遇が取りざたされ、もっと中小やスタートアップにウェイトを寄せないと日本はよくならない、と言うし、「そうだそうだ!」とも思うけれど、僕個人が前提として思うのは「仮にどうであれ、よりしなやかにたくましい事業体(店)になるしかい」、でしかない。店がどんな窮地に陥ろうとも、安倍政権も経団連もましてや税務署は助けてくれない。当たり前だ。むしろ税金の取りっぱぐれを少しでもなくそうと首を絞められているような気がしてならない。

 

もっと言えば、自店は中小でもないし、スタートアップですらない。ただのイチ飲食店だ。そうした最弱の存在に救いの手はないかと言うと、実はあながちそうでもない。税金は事業主にとって確かに荒々しいものではあるのだけど、一方で時に筋道を示す。次はそうしたところに触れていきたい。

 

 

TOKYO都台東区アキバ系路地裏経済論①

10月1日より消費税が10%となる。ニュースやネット記事で見かける世論調査を眺めながら思うのはこれがどう影響を及ぼしていくことになるのか結局よくわからないな、ということ。あまり気にしていないような人もいるし、過剰反応を示す方もいる。けれど、2014年の時のような駆け込み需要はなさそうで、それは日本が増税に対して賢く冷静になったのか、あるいは感覚的にただ単純に鈍くなったのか、それも判然としない。僕個人がそんなこと知る由もない。駆け込みがないということは増税後に反動的な冷え込みもないだろう、という希望的な観測もできる。仮に反動があったとしても、迫る東京オリンピックに向けて劇的な落ち込みはまぶされたまま、なんとなく推移していくようにも思える。

僕は経済のことはさっぱりわからないけれど、オリンピックを一年後に控え、メディアをはじめ各業界がこぞってこれを打ち出しているわりにはポジティブな景況感はあまり感じない。正直に言って「こんなもんかー」という肩透かしの感が強い。実際に帝国データバンクが発表している景気動向調査は「国内景気は8か月連続で悪化」とし、日経平均も今年一年大きく上下することなく20,000〜22,000で推移している。安定していると言えば安定しているのかもしれないけど、これだけオリンピックで沸き立ち、街はインバウンドで溢れ、オフィスビルとマンションとホテルがラッシュで建設され続けているのにも関わらず、経済的な盛り上がりは欠けているようにも見える、そして実際的な数字は実際的に特にもたらされていない(勿論、ダイレクトな恩恵を受けているところも多々あるが)。

 

前回の東京オリンピックは1964年。終戦からわずか19年しか経っていないのだ。東京大空襲を受けて焼け野原になった街に次々と近代的なビルが建ち並び、スタイリッシュな高速道路が立体的に首都を張り巡らし、空を突き刺すような真っ赤なタワーが聳え、見たこともない外国人と文化とコミュニケーションが完全なるオフラインで行き交う。ほとんど全てが既視感のない未体験領域だったはずで、そう考えればその時の東京の、国全体の高揚感たるやすさまじいものがあったのではないかと思う。そして、その熱狂を携えたまま高度経済成長はより熱を帯びて加速していくことになる。

 

何から何まで新鮮であったろう1964年と、ほとんど全てが既視感の洗練と更新である2019年ではやはり関心も消費活動も経済動向も同じにならないのは当然だ。というより、スポーツというのは本質的に時代や情勢を超越したものであり、文化や言語を凌駕したものであるから、尊く、夢があり、とりわけオリンピックはそうしたものの集合であり、だらからこそ世界一の祭典なのだ。本来的にはそれだけでいい。スポーツを楽しもう、というシンプル。だがそのまわりにホテルが建つから、そのシンプルは別のシンプルを伴う(東京都の試算では「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」は全国で32兆円にのぼるとしている)。


長々と書いてきたけれど、話を戻すとその中での「増税」なのだ。

 

今回も「延期」について検討されたのだろうけど、この機を逃したらいつ上げられるんだ、という話になる。僕がそれを決定する人だったとしたら、多分、何が何でもこのタイミングで施行すると思う。飲食店の僕としてはほんとに憂鬱なことだけども、まあ仕方ない、もう仕方ない。

 

まあ仕方なく、もう仕方ないという状況の中であれこれ考えたことを「TOKYO都台東区台東アキバ系路地裏経済論」と題して、つらつらと綴っていこうと思う。繰り返すが僕は経済のことはさっぱりわからない。信号待ちの時にスマートニュースの経済欄を流し読みするくらいだ。路地裏の飲食店でビールを飲みながら日本経済をよくわからないまま憂えているに過ぎない。

だから、路地裏経済論。